「 天井に珪藻土を塗る 」 |
築16年。長く空き家になっていて、ボロッボロ。 とてもじゃないけど、 人の住める状態じゃなかった古家を買って16年。 (つまり、現在、築32年) ペンキを塗ったり、木部の修繕を繰り返して今に至る。 カビだらけの砂壁のせいで、 子供たちはみんな喘息になり、 アトピーは、悪化した。 そこで、吸湿性に富み、 空気清浄効果に期待ができるという珪藻土を 10年くらい前から少しづつ塗ってきた。 茶の間の壁に塗ったのは10年くらい前で、 その後、長女が生まれた6年前に茶の間の天井を塗った。 生まれたばかりのアカンボが眠ったのを見計らっては、塗り、 乳をやっては、塗って、を繰り返して、数日。 何とか塗り終えたが、 乳児子育て中の疲れと、慣れない作業で、 あまりうまく塗れなかった。 雰囲気を出すために、あえてデコボコに塗ったのだが、 それにしても、デコボコ過ぎて、 その後、埃が溜まりやすく、ちょっと後悔していたのだった。 5年前くらいに、「ビニール壁紙の上から塗れる」という珪藻土を見つけ、 台所の壁も塗り始めたが、 台所の天井は、手つかずになっていた。 それというのも、 台所の天井は、湿気がこもりがちで、 かつてペンキを何度か塗ったが、 数か月で剥がれ落ちてしまい、 ここ10年、おぞましいビリビリ状態のまま放置していたのだった。 先日、大掃除した際、 天井用に買っておいた珪藻土が出てきて、 「塗るか?!」 という気持ちには、なってきた。 しかし、連日の猛暑の中での配達の仕事は、 この中年の私の体力と気力を奪いまくり、 しばらくは、脚立に乗る気にもなれなかった。 しかし、部活が連休に入った中1の四男が、 「お母さん、塗ろうよ!」 と、やる気いっぱいで声を掛けてくれたおかげで、 何とか重い腰が上がった。 粉状の珪藻土に水を少しづつ混ぜ、よく練り、 丁度いい粘りが出たら、30分ほどねかせ、 そして、左官作業に入る。 もちろん、その前に 塗りたくない個所にマスキングテープを貼ってカバーするのだが、 それも、四男が私の指示にそってやってくれた。 最初、私が見本として、天井の角を小さいコテを使って塗ると、 「僕もやる!」 と、すぐに四男がやりたがった。 しかし、重い腰が上がった状態の私は、エンジン全開なので、 「ちょっと待て。お母さんが見本を見せるから!」 と言って、ひとつしか無いコテを決して手放さず、 「こうやって、こう!」 と、気持ちよく土を天井に塗りつけていった。 「僕もやる! 僕にやらせてよ!」 と、何度も四男が言うので、仕方なく、 私が隅とビリビリの部分を埋めるように先に土を塗った後、 四男に塗らせた。 ちなみに、ビリビリに破れてぶら下がっていたペンキのカスは、 事前に四男がスクレイパーできれいに剥がしておいてくれていた。 四男は、見よう見まねで珪藻土を塗り始めたが、 すぐに上手になり、分厚く大胆に塗った私の塗り後が、 毛羽立ったりムラになったりした部分を、 きれいにならして平らにしてくれたのだった。 時間は掛かるが、非常に仕事が丁寧だった。 昼過ぎから始めて、 私と四男が順番に塗っていき、 一袋分(2畳分)を塗り終わったのは、 午後5時半だった。 はっきり言って、疲れた!!! エアコンを「強」で入れて、 サーキュレーターも回していたのだが、 天井付近は、非常に暑く、 また、手を上げて高いところに土を塗りつける、 という普段しない動きをし続けたので、 腕や首や背中の筋肉がつりそうだった。 また、二人とも夢中で塗っていたので、 水分もあまり採っておらず、 若干、脱水気味になり、少し気持ち悪くなってしまったのだ。 そして、二日目。 朝、私が配達に行っている間に、 四男と長女は、宿題をやり、 私が帰宅次第、すぐに昼食を食べ、 作業にかかった。 私は、最初、端を塗った後、 「じゃあ、次、よろしく」 と四男に順番を代わり、 茶の間の床にごろっと横になって作業を見ていたら、 いつの間にか眠ってしまった。 目が覚めると、いつの間にか数時間が経っていて、 天井の3分の2が塗り終っていた。 「ごめんごめん! 休憩して!」 と、四男に声をかけると、 「いいのいいの。お母さんは、疲れているんだから、寝てて」 と言って、ずっと作業を続けていた。 私は、新しい袋を開け、 最後の珪藻土を水に溶き始めた。 先ほど、気が急いて水を一気に入れてしまったので、 たくさんダマができてしまい、 返ってダマをつぶすのに時間がかかってしまったこともあり、 今回は、慎重に、ゆっくりと水を入れ、 子供たちがビニール手袋をはめた手で、 丁寧に混ぜ、練っていった。 私がビリビリ部分を塗りつぶし、端を塗り、 また次を塗ろうといていると、 「お母さん、休んでて!」 と、四男に言われた。 「疲れちゃうから、かわりばんこでいいよ」 と言ったのだが、 「僕、最後までやりたいんだよ」 と言い、実際、夢中になって塗り続けて、 何時間もかけて全部塗り終えてしまった。 長女も、自分が赤ちゃんの時に落書きした壁の部分に、 スポンジで珪藻土を上塗りし、 きれいに直した。 さて、数年越しで、やっと、珪藻土ルーム完成。 空気が澄んでる! ヨーロッパの田舎の家みたいじゃないか! いいね、いいね! 古い家を自分の手で、好きなようにリフォームしていく面白さ。 新築では決してできない荒業も、失敗を恐れずバンバンできる。 汚さないように住むビクビク感は、無い。 壊れた部分を、どう自分流に改造していくか考える楽しみがある。 古家、サイコー! これからも、どんどん自分でやっちゃうぞ! 10m×10mレベルの、どでかい図画工作! エグイくらいに趣味性バリバリのオリジナルハウスを、 一生かけて作り続けていくぜぃ! ・・・・・・それにしても、四男。 成長したなあ・・・・・・ すっかり図画工作と家庭科と技術科の好きな少年になったよ・・・・・・ 長男、三男は、建築関係の学校に進んだし、 次男は、デザイン関係の専門学校に行くらしいし、 四男も雑貨デザインを勉強したい、と言っている。 (長女は、看護師さんになりたいと言っているが) いつの間にか、みんな、 私の好きなことを好きになっているし、 私の進めなかった道に進んで行こうとしている。 この世知辛い時代に、 この種の仕事は、たいして儲からないかもしれない。 親として、若干責任も感じるが、 好きなことを見つけて、それをやり続ければ、きっと、 苦労も苦労と感じないかもしれない。 ああ、子供たちがみな、就きたい仕事に就いて、 それぞれ温かい家族を持ち、 この手作りハウスでみんな揃って宴会ができればいいなあ。 「ここは、僕が塗った」 「このドアは、俺が付けた」 などと話して、盛りあがろうじゃないか。 (了) |
(しその草いきれ)2012.8.7.あかじそ作 |