「 各人、足元を耕せ 」
――― 明日を咲かせるために ―――




 仕事を持つ者は、
その仕事に必要な地味な下準備と後片付け。

 家庭を切り盛りする者は、
炊事洗濯掃除子育て。

 芸事をする者は、
ライトを浴びる一瞬のための猛特訓。

 社会を回している者は、
生活者の声を直接聞いて歩き回る作業。


 みんな、それぞれ、
立つ場所は違っても、
各人、その足元の地べたを耕せ。


 何もない場所や、
プラスティックの上には、
花は咲かない。

 無機質な世界に、明日は、来ない。


 基本の基本に立ち返り、
各人、その足元の地べたを耕せ。


 柔らかな土壌を、
地べたを這いつくばって、
汗水垂らして、
自分の手足で作り出せ。

 柔らかな土の上に、
新しい種を撒けば、
やばて、新芽が芽吹き、
根が張りめぐらされる。


 会社のデスクに肘をついて、窓の外を眺めていたって、
リビングのテーブルでオシャレなハーブティーをいくら飲んだって、
第一線で輝くスターを、遠くから羨んでいたって、
他人の上げ足を取って、声高に自らの正当性を叫んだって、


 何も変わらない。

 その足元の地面は、固いまま、
冷たく、平たく、そこにあるだけだ。


 誰にでも、必ず、
やらなければならない仕事がある。

 気付いていないだけで、
全員に、役割が与えられている。

 自分に何の使命が与えられているのかわからなくても、
今居るところの地べたを耕せば、
やがて、その意義が見えてくる。


 まずは、しのごの言わずに、
とにかく、その足元を耕せ。

 地味で大量に山積みされた、その雑事を、
丁寧に、手を抜かずに、
ひとつひとつ、一生懸命に、達成していこう。


 その労働は、決して無駄には、ならない。

 必ず、その汗は、明日を咲かせる。

 その汗こそが、
自分や、家族や、地域や、社会や、世界じゅうに、
大輪を咲かせる根っこの、
大もとの力になるのだから。



  (了)



(話の駄菓子屋)2012.9.10.あかじそ作