「 名脇役に徹する 」


 自意識過剰のため、いつもいつも、
「私が」「私が」と出しゃばってしまい、
相手の言葉をさえぎり、自分の意見を押し通す。

 家庭の中での私は、いつもこうだ。

 外づらがいいので、
おもてでは、ニコニコと感じのいい人を演じているが、
家の中では、女王様気取りだ。

 これが、私のダメなところだ。

 しかし、子供たちは、
こんな親でも、親は親なので、
好きでいてくれる。

 我慢できずに反抗して言い返すと、
「なんだこらっ」と、自分が勝つまで暴れる母親に、
「めんどくせえなあ」と思いながら付き合ってくれる。

 自分は間違っていない、という確信があるから、
自信満々で家庭を支配しているのだが、
時々、「あれ、あたし、間違ってるかも・・・・・・」と、
気付くときもある。

 そういう時は、恥ずかしげもなく、
「なんかお母さん、間違ってたかも! わりぃわりぃ!」
と、手刀を切りながら言う。

 子供も、高校生ともなると、
こういう母親に順応してくれるので、
「母親とは、こうあるべし」
という考えのもと反抗する、という行動パターンが消え、
また、
「僕のこと、守ってよ! 親なんでしょう?!」
という依存も消えて、
私を一個のキャラとして認めてくれるようになった。

 それは、何というか、「寺内貫太郎キャラ」的な、
(もちろん、子供たちは、寺内貫太郎を知らない)
「あばれはっちゃくキャラ」的な、
(これも知らないだろう!)
そんな、
「僕を愛してくれる、愛すべきめんどくさいヤツ」
というキャラ付けだったりする。

 要は、アカンボのときは、
一生懸命に必死で育てているけど、大まぬけ。

 幼児の時は、暴れる幼児に対し、本気で怒り、
ひーひー言いながら振り回される未熟ママ。

 思春期には、言うことを聞かない息子相手に
メジャーリーグの審判よろしく、
顔面をひっつけてきて「ノーノーノーノー」と叫ぶハイテンションカーチャン。

 いつも子供と正面衝突。
 時には、突貫小僧のような突っ張り合い、
時には、がっぷり四つに組んで、戦っている。

 目の前の子供は、敵で、
敵に勝つことが目的かと思いきや、
実は、「この子と良い取組をしたい」という想いだけで、
日々、しこを踏んでいる気がする。

 ハッキリ言って、疲れる。 
 この子育てのやり方は、疲弊がひどい。

 しかし、私には、このやり方しかわからない。

 自分が両親からこのやり方で育てられたから。
 親方(両親)には、一切甘えられなかったけれど、
従順な弟子として、今までついてきた。

 もう、いい歳なんだから、
自ら裸になって、連日連夜、
新弟子たちに胸を貸してやることもないのだろうが、
上手に、ほめておだてて伸ばしてやる、みたいな、
シュッとした育児を知らなかった。

 今となっては、
もっと楽に育てられる方法もあるのに、
と思うし、
なんであんなに肩に力を入れていたんだろう、
もっと子供を可愛がってやればよかった、
と、後悔することもあるが、
もう過ぎてしまったことは仕方ない。

 「ごめん、あの時は」
と、素直に謝って、今から仲よくするしかない。

 子供にとって、親は、脇役だ。
 おそらく、どっちかと言えば、ウザキャラなのだ。

 子供の人生の主役は子どもで、
その真ん中の美味しいところを親が奪い取ってはいけない。

 「お前は、この仕事に就け」
とか、
「お前は、この学校に行け」
とか、
「こんな人間に育てた覚えは無い」
とか、
そういう無粋なことを言っちゃあ、いけない。

 関係ないんだ。
 全然、関係ないんだ。
 親なんて。

 親なんて、子供の人生にとって、
ぜ〜〜〜〜〜〜〜〜んぜん、エラくも何ともないのだ。

 生んだ人。
 育てた人。
 そばで生きてる、ちょっと先輩。

 それでいいじゃないか。


 だから、威張っちゃいけない。
 支配しちゃいけない。
 この道を行け、などと命令するなんて、下衆(げす)も下衆。

 せめて、
「この道を行けば、いい感じだろうなあ〜」
と、子供の横で、大声でひとりごとを言う、
その程度で留めておくべきだ。

 選択肢は、子供にある。
 子供の人生なんだから。

 当たり前のようでいて、
これがなかなかみんな分からない。


 不器用でもいい。
 子供を愛していることを伝えよう。

 悪いことをしたら、バッキャロ〜と怒鳴り、
良いことをしたら、照れずにほめよう。

 接し方がわからなかったら、
とりあえず、ハグしておこう。

 スキンシップは、七難隠す。


 親が自分でダメだと思うところは、
「あたしゃあ、ここがダメなんだよ」と、素直に認めよう。

 カーチャンは、完璧な人間じゃないけど、
一生懸命あんたを育てようと頑張ってマスッ、
と、もう、自分で言っちゃおう。

 人間対人間として、子供と向き合おう。

 親失格だったら、親友でもいいや。

 肩書きなんかどうでもいい。

 子供を愛している。
 その本筋から逸れないようにしよう。

 甘やかさない。
 突き放さない。

 常に一定の距離を保って、見守ろう。

 犯人を尾行する中年刑事みたいに、
電柱の陰から、アンパンかじりながら、
子供の人生、そっと見てよう。

 私も、渋い名脇役になれるかなあ。

 

(子だくさん)2012.11.27.あかじそ作