「 違うバージョンの自分始めます 」


 ここのところの自分は、やばかった。

 仕事がハードすぎて、
家事がだいぶおろそかになっていた。

 連日、いつもより1.5倍の仕事量をこなした上で、
最優先にしていたのは、子供の学校がらみの手続き。

 学費を振り込んだり、
書類を市役所に取りに行ったり、
学校に書類を持参したり、
そういう絶対ミスしたらいけないことが、何をおいても最優先。

 次に必ずしていたことは、
【兵糧】の確保と調理。

 つまり、育ち盛りの子供たちの食事の支度だ。

 買い物は、多めにしておいても、必ず不足する。
 やつら、こっちが思った以上に食いやがる。

 だから、一回の買い物で、最低でも、
牛乳3パック、肉2キロ、魚3パック、米5キロ、
野菜5〜6種類、食パン3個、
お菓子甘いの2種類辛いの3種類、
調味料(業務用)2〜3種類、
麺類2〜3種類、お弁当用冷凍食品5種類等を買わねばならない。

 「買い物」と言うより、
「買い付け」とか、「買い出し」とか言った方が似つかわしい量。

 通常、大きいレジ袋で6袋ほどある。
片手に3袋づつ、各指に約5キロづつの負担を抱えながら、
これを車に「ていやっ!」と、積み込む。

 それを、週2回以上。

 この買い出しを、仕事の合い間に行い、
仕事終わりの夕方、しんどい体を転がしながら、調理をする。

 肉体労働後の、学校の手続きと、買い出しと、調理。

 これでもう、私の体力も気力も尽きてしまう。
 知らないうちに横たわってしまい、意識を失っている。

 起きていられれば、皿を洗うが、
起きていられなかったときは、夫が帰宅後、洗っている。

 ん?

 掃除は?
 部屋の片づけは?

 そう。

 できていないのだ。
 週一日の休日は、各種手続きや銀行回り、
大きな買い物に奔走し、すぐに終わってしまう。

 今度の休みこそ、大々的に大掃除しようと思っていても、
すぐに休日は終わってしまい、疲れ果てたまま、また、
仕事が始まってしまうのだ。

 おかげで、部屋は、とっ散らかっている。

 子供たちの本やゲームや服やカバンが、居間にあふれ、
片づけさせても、すぐにまた散らかる。

 花粉や春の雨のおかげで、
ただでさえキャパ満杯の6畳の居間に、
所狭しと洗濯物が干され、
埃の積もり方も倍増している。

 しかし、本当に、もう、前々から思っていたのだが、
【埃】って何なんだ、一体。

 埃を取る作業がこの世から無くなったら、
どれだけたくさんの人にたくさんの時間が生まれるだろう?

 それだけ、この、【埃を取り除く】という作業に、
人類は掛かりきりになってきたのだ。

 今は、機械が勝手にクルクル床の上を動いて掃除してくれるようになったが、
ほとんどの家で、まだ、人力で【埃取り】が行われている。

 いや、この【埃取り】・・・・・・掃除全般が、無駄な時間とは言わない。

 掃除をすると、気持ちがすっきりして、
精神的にも大掃除できるので、
精神衛生上に有効な行為ではあるけれど、
しかし、もっとどうにか
効率的に、合理的に、ならないものなのか。


 うちは、どんどん子供が増えているにも関わらず、
押し入れなどの収納が極端に少なく、
また、素敵な箪笥を買う予算も無いので、
間に合わせで「とりあえずとりあえず」と、
安っぽいプラスチックケースやカラーボックスを買い足していったため、
もう、物が入りきらないばかりか、物が丸見えで、
一個一個違うガチャガチャした色や形が一度に目に入ってきて、
イライラしてしまうのだ。

 私のここ数年のイライラは、
更年期のせいばかりとは言えないと思う。

 この、ガチャガチャした物の氾濫が、
視覚を混乱させ、脳に大量の細かい認識作業をさせているし、
物のでこぼこが、気の流れをガッチャガチャにして、
部屋の気が乱れきっているのだと思うのだ。


 もともとインテリア好きだったのに、
今や、インテリアどころか、
ゴミ屋敷寸前のところで暮らしているじゃないか!


 ダメだ!
 このままじゃ、私の人生までもが、ゴミになってしまう!!!

 よしっ!
 大々的に、この家を変えるぞ!

 いや、この人生を変える!

 この、日々の雑事に追いまくられるだけの人生を変更!

 違うバージョンの自分を始めよう!


 まず、「もったいない」「まだ使える」は、やめる!
 捨てる!

 捨てて捨てて、捨てまくる!

 物を減らして、最低限の、お気に入りだけを残す!

 お気に入りの家具と、お気に入りの道具だけしか置かない。

 居るだけで、気持ちよく、
居るだけで心が洗われるような、
リゾートの小部屋みたいな部屋にするぞ!

 そのために、今の今すべきことは・・・・・・、
「コツコツ手で片づける」という、超アナログな作業だ!!!

 いきなり、一気に、事は動かない。

 一気に事を動かすための、
地道な、人力による、汗水垂らした手作業だ!

 やるぞ!

 「片づけ」とか「掃除」とか言うと、
何だか、私の苦手なメンテナンス作業だけに終始するような気がしてしまうが、
これは、いわば、自分自身をメンテナンスする大事業なのだ。

 別のバージョンの人生を生きるための
超前向きな未来的な作業なのだ。

 どんなに疲れて帰ってきても、
必ず毎日どこか一か所を、整理する。

 毎日ゴミ袋2個分、物を捨てる。

 これを生活習慣にすれば、
きっと、今度の正月には、
ひなびた旅館の一室くらいのスカスカ感になっているはずだ。

 よし!
 私は、やる!

 朝起きて、仕事して、ご飯作ってご飯食べて、
毎日お風呂に入るように、
当たり前の日々の行為として、
部屋の整理をする。

 心が散らかると、部屋も散らかる。
 だから、部屋を片付けて、心を片づけよう!

 来年の今頃は、
きっと、希望しかない私になっているだろう。


 死ぬ寸前まで前向き!
 死んだら、次の人生に、また、前向き!
 これが私のモットーなのだっ!!!



 (了)

(しその草いきれ)2013.4.2.あかじそ作