「 快適かつ合理的な家を作る 」


 普段、散らかった部屋に暮らしていて、
そのストレスに耐えきれず、
ドワ〜ッ、と一気に大掃除、大々的な片づけ、
しまいには模様替えまでやってしまい、
その後、また数か月放置される、
という、3年寝太郎のような私の片づけ方は、
片付いた直後以外は、ずっとストレスのかかった生活だ。

 この歳になると、
こういう、うっすらとした日々のストレスの積み重ねにより、
「がん」「高血圧」「精神疾患」など、
各種の病気が発症するのは、必須である。

 散らかった部屋、いや、散らかったままの心で暮らすのは、
中高年にとっては、もはや、命取りとも言える。

 かといって、
子供にかかる各種の費用を稼ぐため、
日々、身を削って働いている老体に無理をさせ、
寝ないで片づけに追いまくられて、
結果、突然死してしまうこと、これもダメ。

 だからいっそ、
今回の大改装で、根本的に変革しようと思う。

 あらたまった片づけとか、大掃除とか、
そういうことをしなくても、
日々の生活の中でのついでの動きで、
「ちょちょちょ」と掃除管理できる部屋にしよう。


 対策@

 埃を積もらせない。

 埃は、地面と平行する面に積もる。
 だから、埃の積もる面を極力無くす。

 照明は、吊り下げ式から天井張り付け型に変える。

 まっすぐ床から垂直にそびえる収納にする。
 できれば、壁と一体化したような物が好ましい。
 その際、収納は、扉の付いたものにし、
中は、目的別、費目別に仕分けできるようにする。

 発生した埃は、すべて床に積もるようにし、
床の掃除をすれば、ほとんどの埃が取れるようにする。

 テレビは、テレビをすっぽりはめ込むタイプのテレビ台に入れる。

 テレビやビデオは、静電気で埃を集めやすい。
 だから、直接ゴーゴー埃を集めないように、
空間にドン、と置かない。

 箱の中にしまってしまう。

 扇風機や、エアコンも、
ガンガン埃を集める。

 そのくせ、その埃は、構造上、なかなか掃除しにくい。

 だから、あらかじめ、集塵する箇所にフィルターを付ける。

 電話や、プリンター、パソコン類には、
昭和のお母さんがよくやっていた「手作りのフキン」とか「レース」などを掛ける。

 昭和のお母さんたちも、埃取りに苦労していたが、
ドアノブや電話の受話器にカバーを掛け、
さらに、炊飯器やお茶道具にも手ぬぐいを掛けたりして、
工夫して家事を省力化し、部屋を飾っていた。

 子供のころは、「生活臭、半端無いなあ」と思っていたが、
今思うと、意外とシャレオツじゃねえか、と思うのだ。


 対策A

 気分が上がる道具を多用し、各種、使う場所に置く。

 たとえば、板の間には、
クラシカルな室内ホウキを壁から下げる。

 飾りにもなり、また、ゴミを見つけたら、速攻で掃ける。

 そのオシャレなホウキを使うことにより、
何だかカントリーな気分になり、ついでに埃も片付く。


 コロコロや、ハンディ掃除機、卓上ホウキ&チリトリ、
クイックルワイパー的な物や、百円均一で売っているような刷毛など、
掃除用品は、よく使う場所ごとに、配置。

 たくさん配置。

 その際、道具は、安いからとりあえず、とかで選ばず、
装飾品としても存在し得る、オシャレなデザインのものにする。

 基本的に、物自体は見せない。
 「見せる収納」は、埃管理が至難の業だとよくわかった。

 が、一方、掃除グッズは、オシャレなものを揃えて、
すぐ手に取れるところに、見えるように【飾る】。

 「掃除しなくちゃ」の意識無し。
 「ママのオシャレなライフのスタイルの一環」として、
行為自体が気持ちいい埃取りにする。

 「マメな掃除」ではなく、
「常に気持ちいいライフスタイルをキープ」という意識。


 対策B

 子供たち一人一人に、テリトリーを作る。

 4人の男子共同の子供部屋は、
みんなのベッド、みんなの衣装ケース、、みんなの机が並んでいて、
各自、自分の場所は、それなりに片づけている。

 好きな漫画を並べたり、好きなフィギュアを飾ったり、
自分のテリトリーだけは、きちっと自分の世界を作っている。

 しかし、共有部分、
つまり、床の上や共用の棚などは、
めっちゃくちゃなのだ。

 自分に責任が無い場所には、
無秩序にカバンや上着や雑誌などが放り投げられる。

 そういう場所を作ることで、
「ここは、とりあえずぶち込んでいい場所」
という、保留スタイルを作ってしまっているのだ。

 だから、いっそ、子供部屋のすべての部分に、
テリトリーを割り当てる。

 どんなに小さくてもいいから、各自にちゃんとテリトリーを作ってやる。

 と、いうことで、
子供部屋には、学校みたいにロッカーを作ることした。

 それぞれの場所に、それぞれの服やバッグなどの私物を置く。
 自分の場所に置ききれなくなったら、
自分で要る物を吟味して、何か処理するなりして、
各自で管理してもらう。

 おそらく、「これちょっと置いておいて」と、
居間や人の場所に置いちゃうヤツもいるだろうが、
「そういう時は、無許可で捨てちゃうぞ」と言っておく。


 対策C

 上着、カバン、制服、学校用品は、
指定の場所を決めておく。

 茶の間に散らかるものの大半は、
上着や、制服や、カバンなど、子供たちが帰ってきて
「あ〜、疲れた〜!」
と言いながら放り投げるものだ。

 だから、それらを茶の間に持ち込む前にシャットアウトだ。

 上着や、制服や、学校用品は、
玄関から茶の間に向かう間の指定した場所に収納させる。

 カバンを下ろして、しまう。
 上着や制服を脱いで、掛ける。

 それから初めて、茶の間にイン、だ。

 これなら花粉も居間に持ち込まれないし、
動線に沿っている。

 それから、靴!

 子供がどんどん大きくなってくると、
当たり前だが、靴もどんどん大きくなる。

 そして、色気づいて自分で次々新しい靴を買ってくる。

 バカでかい27センチ前後のスニーカーや革靴、
何色ものクロックスやブーツやら長靴やらが、
左右バラバラでめっちゃくちゃになって、
玄関のたたきに折り重なって山になっている。

 出かけるたびに、まるでトランプの神経衰弱みたいに
自分の靴を発掘しながら左右揃えるのが、またイラつく。

 とにかく、大量のバカでかい靴たちを収納する、
バカでかい下駄箱を置く。

 これは、もう、急務。

 置き薬屋さんが、玄関先で在庫チェックできないほどになり、
少し前から、外の自転車置き場で応対している始末だ。

 通学用の靴。
 部活用の靴。
 お出かけ用の靴。
 夏の靴。
 冬の靴。
 雨の日の靴。
 仕事用の靴。
 おしゃれ靴。

 各自それぞれ持っているものだから、
7人家族でどれだけの数になるか、
推して知るべし。

 もう、玄関、靴地獄。

 しまいたい。
 靴を全部しまって、玄関のたたきの色を見たい。

 一家7人、全員靴好きで、
玄関のたたきが幅90センチの激狭なんて、
シャレにならないんだから!



 以上のポイントを念頭に、
最終的な目標は、「ガランとした部屋」とする。

 明日死んでも大丈夫なように、
極端に言えば、カバン一つで暮らせるくらいに。

 24年前の4月、
真っ赤なミッキーマウスのスポーツバッグひとつ持って、
夫と暮らすアパートに入った時に帰ろう。


 自分で自分の生き方を選んだあの時に帰って、
物に支配され、物に押しやられ、
物に病気にさせられそうになっている今の自分を卒業するんだ。

 生活の場=居るだけで気持ち良くなる空間

 これが、いっちばん、贅沢な暮らしだよな〜!


 (了)


(しその草いきれ)2013.4.9.あかじそ作