「   便乗成長  」


 5年後、どんなふうになっているのかな?

 と、ふと考えた。

 じゃあ、5年前は、どうだったのかな、と思い起こしてみた。

 長男、16歳、高校2年生。バイト三昧だった。
 次男、14歳、中学3年生。受験生。吹奏楽部で最後の大会で練習に励んでいた。
 三男、12歳。中学1年生。運動部の悪い仲間とつるみ始めて、毎日暴力を受けていた。
 四男、8歳。小学4年生。ニコニコとマイペースで、友だちと仲よく遊んでいた。
 長女、2歳。生意気に家族に指図を出す一方、まだおっぱいを吸っていた。

 夫、45歳。相変わらずのマイペース。ほとんど家に居ず。

 そして、私、41歳。
 バイトを頑張る長男を見て、自分も配達の仕事を始めた。
 長女を産む前後、長く専業主婦だったため、
久しぶりの仕事で、毎日、緊張しながら必死に慣れない肉体労働をしていた。

 子供は、5人いるけれど、
5人全員に1対1で向き合って、
それぞれに100%ガップリよつに組んでいた。

 大変な時期の子供もいれば、かわいい盛りの子もいた。

 嬉しいニュースもあれば、激しいショックを受けるトラブルも続いた。

 たくさん子供がいれば、20%×5人=100%で行けばいいものを、
100%×5人でやるものだから、自分ひとりで500%の力を出していたため、
毎日、必死必死の超多忙。
 余裕が無く、目に見えて疲弊していった。

 よく人に「もっと楽に生きりゃあいいじゃん」と言われるし、
自分でも「もっと人生を楽しもうよ」と思うが、
子供ひとりひとりにとって、カーチャンは、私ひとりきりで、
この子は、私の一人っ子なんだ、というのを、5人分やってきたので、
そりゃあ、いつもクタクタだった。

 でも、私には、このやり方しかできない、というか、
近年、ずっと「ガムシャラキャラ」なので、
「肩の力を抜いて……」をするのは、逆に難しかった。

 というか、子育て第2章の最高潮期であった。
(第1章が乳幼児期だとしたら)


 でも、振り返れば、いいこともあった。

 バイトを頑張る長男に触発されて、再就職する勇気が出たし、
吹奏楽部の次男につられて、久しぶりに楽器を買って吹き始めたし、
運動部の三男につられて、筋トレみたいなことも始めた。
 マイペースな四男につられて、「自分らしさって大事だな」と思い始めたし、
女子力の強い長女につられて、またスカートをはくようにもなった。

 子育ての中で、
親の自分が子供に影響を与えていると同時に、
子供の中に自分に無いものを見つけ、
親も知らず知らずのうちにそれを吸収している。

 それが子育て第2章の醍醐味!

 子供の成長に便乗して、親も成長できちゃうのかもしれない。

 大人になってからも、新しいことにも挑戦しやすい。
 すぐそばで、自分の子供が新しいことに挑戦しているため、
影響されやすい私は、いつの間にか、「真似っこ」してしまう。

 自分一人では、絶対始められなかったことを、
子供につられて始めてしまう。

 こんな風に今までも、いろいろできたこともたくさんあるのだ。

 子供が無邪気に大人の重い腰を持ち上げてくれる。


 子育て第1章では、
ペーパードライバーで、後部座席専門だった私を、
「毎日ハンドルを握る女」にした。

 重いバッグも持てない虚弱体質だった私を、
アカンボを背負いながら肩に大きなバッグを提げ、
両手に幼児を抱いて、駅の階段をさっさと駆けのぼる怪力女にもした。

 子供を育てていれば、
いつも彼らは、親をぐいぐい持ち上げてくれる。
 見たこともない景色を見せてくれる。


 そして、今。

 長男、21歳。大学で1級建築士を目指し、毎日図面を引いている。
 次男、18歳。デザイン専門学校に入って、雑貨デザインの勉強を始めた。
 三男、16歳。工業高校の建築科2年。テニスに燃える。この間、アーク溶接の資格を取った。
 四男、13歳。理科と数学大好きで、図工大好き。マイペースに今日も飾り棚を製作中。
 長女、7歳。毎夕、黙々と宿題に励み、夜は、明日の服選びに超真剣。

 5年で育ってる。
 大人がテレテレしてる間に、だいぶ先に行っている。

 親の知らなかった分野に進学し、
果たせなかったもうひとつの夢を見せてくれる。

 ああ、ありがてえぞ!
 子供よ!

 そして、今日の私は、昨日の私よりも前進している。
 明日の私は、今日の私の前を歩いているだろう。

 つられてる〜!
 子供の育ちにつられて、勝手に私も育ってる〜!

 合唱コンクールでは、他のパートにつられて音を外し、
街の交差点では、隣の人につられて迷子になっていたけれど、
こんどの「つられ」は、いい感じだ!

 子供がグレても一緒にグレさえしなきゃ、もうサイコー。



 5年後、どんなふうになっているのかな?

と、また考えた。

 長男、26歳。設計の仕事に就けているのかな?
 次男、24歳。デザインの仕事は、難しくても、大好きなディズニーランドのキャストになってるかも。
 三男、22歳。大工してるか? 日に焼けて、マッチョになって、家建てているのかい?
 四男、18歳。大学で工業デザインでも勉強してるのかな? やっぱりマイペースで。
 長女、12歳。小6か。通学班の班長だね。ますます女子力全開だろうな。

 夫55歳。まだ生きているのか? 生きてたら、やっぱりマイペースでしょ。

 そして、私、51歳。
 ほうれい線がこれ以上深くならないでほしい。
 まだ仕事を続けていたらいいな。
 同じ仕事をしても、今より楽しく、ナイスな働きをしていてほしい。

 さらに、もっとDIYを本格的に勉強して、
このボロ家を自力でカントリーシック調に改装だ。

 そして何より、詩を書いていたい。
 もっともっとハイテンションで、
日常の「バカっぱなし」を散文で詠(うた)い倒したる!

 ああ、5年後が、待ち遠しいねえ!

 そりゃ思い通りにゃあ、なりゃしないだろうけど、
それはそれで、いいネタじゃないか。

 これまた詠って笑い倒したらあ!


 (了)

(子だくさん)2013.5.14.あかじそ作