「   ビタミン不足は、怖いのだ  」

 ビタミンミネラルは、体の調子を整えるために必要なものだと、
重々承知しているつもりだったが、
このたび、それを、本当に痛感することになった。

 6年ほど前に、怪我もしていないのに手首が猛烈に痛くなり、
整形外科を受診したのだが、湿布と痛みどめの薬を出され、
手当をしていたのだが、一向に良くならなかった。

 違う整形外科を受診して、もう一度診てもらうと、
医者になりたての若い若いお嬢さんが、
「ビタミン不足かもしれません」
と、ビタミン剤を処方してくれた。

 「んなバカな」と、
若いお嬢さんの未熟さを小馬鹿にしていたが、
これが、効いた。

 みるみる治る、というほどの即効性は無かったが、
日に日に痛みが和らぎ、
いつの間にか気にならなくなっていた。

 当時、4人の男子の保護者をやりながら、
40代で授乳していたので、貧血でふらふらだった。

 だから、鉄分に関しては、充分注意していたのだが、
ビタミン、特にビタミンBに関しては、あまり意識していなかった。

 処方されたビタミンBを毎日飲むうちに、
手首の痛みだけでなく、なんとなく疲れにくくなっているような気がした。

 それだけでなく、40年間苦しめられてきたひどい口内炎も、
あまりできなくなっているのだった。

 そこで、医者の処方されたビタミンBを飲み終わったあとも、
ドラッグストアでビタミンBのサプリメントを買い、
毎日飲むようにした。

 確実にわかったことは、
これは、すぐに物凄く強烈に効く、ということはないが、
いつの間にか知らないうちに調子がよくなっている、ということだ。

 まず、前ほど疲れなくなったし、
疲れても、数日で完全に元気になれた。

 口内炎もできにくいし、できても治りやすい。

 傷も、今まで治りにくかったのに、前より治りやすくなった。
 皮膚の吹き出物も、ほぼ無くなってしまった。

 時間を掛けて、ゆっくりと、
今まで悩まされてきた全身症状が治癒していっていたのだ。

 ああ、ビタミンすげえや。
 私の今までの不定愁訴は、
ほとんどビタミンB群で解決できているじゃないか。

 子供のころから、私は、ビタミンBが不足しがちな体質だったのだろう。

 このことがもっと早くわかっていれば、
いつも口内炎に悩んでいたバアチャンに、
生きているうちに教えてあげられたのに。

 昔勤めていたヤクルトで、
予防医学の大切さについて研修を受けていたが、
本当にそうだ。

 病気になってから慌てて治療するんじゃなくて、
病気にならないように、普段から調子を整えておくこと、
病気にかかっても、軽く済んで、早く治ることが大切で、
それは、毎日の食べ物にかかっているんだ。

 それから、私は、ビタミンBのほかに、
免疫力を上げる善玉菌の腸内細菌を増やそうと、
毎日ビオフェルミンを飲み、ヨーグルトを摂った。

 ヤクルトに勤めているとき、
売れ残った商品を飲んでいるうちに、
いつの間にか頑固な便秘が治り、風邪もひきにくくなっていたので、
自転車でのお届け業務が運動になっているからだと思っていたが、
効いていたのだ、善玉菌も。

 こうして、ここ5〜6年、
ビタミンBの錠剤とビフィズス菌で体調を整えてきたが、
4月の中旬ごろ、おなじみの錠剤を買う時、
急に色気を出して、
「どうせならマルチビタミンを飲めばもっといいじゃん!」
と思い、いつものビタミンBをやめて、マルチビタミンの錠剤を買い、
飲み始めた。

 しばらくは、今まで通りだったのだが、
5月に入り、子供から風邪をうつされてから、
全然風邪が治らなくなった。
 それどころか、どんどん風邪をこじらせて、
咽頭炎を起こし、ものが飲み込めなくなってきた。

 そうしているうちに、
どんどん体がだるくなってきて、
体を起き上がらせることがつらくなってきた。

 しかし、仕事が自転車での配達で、
毎日午前中いっぱい肉体労働なので、
寝込むわけにはいかない。

 無理矢理気力を振り絞って外に出るのだが、
仕事の途中で集中が切れて、
もう何もかも放り投げて帰りたくなってしまうことがたびたびあった。

 それでも、毎日頑張って仕事を終えると、
もう、気力も尽き果てて、
夕方まで意識を失うように茶の間に倒れていた。

 毎日、そんな状態で、
夕方近くに、小学校から帰宅した長女の鳴らす玄関チャイムで
やっと意識を取り戻すのだった。

 それから、いろいろ強力な栄養剤を飲んでも、
高額な精力剤を飲んでも、
全然体のだるさが抜けなかった。

 日に日に気力も出なくなってきて、
精神的にも浮かない状態が続いた。


 ある晩、たまたまテレビで健康番組が流れていて、
うつ状態について説明していた。

 うつは、心の風邪、ともいうが、
実は、脳内ホルモンのバランスが崩れて起こることもある、
と言っていた。

 人をウキウキワクワクさせる脳内ホルモンは、日々消耗するもので、
それを充電させるためには、
【タンパク質】と【ビタミンB】と【鉄分】を摂り、
夜は、しっかり寝ること、ということだった。

 【ビタミンB】?!

 これだっ!!!

 と、思い当った。

 私は、ビタミンBが特に不足しやすい体質だったじゃないか?!
 欲張って、すべての栄養を楽して一気に摂ろうとして、
ビタミンBを多めに摂ることを怠っていたじゃないか。

 ビタミンB特化でしょう?!
 私の体には、さあ!

 私は、あらためて、だるくて動かない自分の体を、
体の各部の感覚を研ぎ澄ませて、ゆっくり動かしてみた。

 すると、体のどこも、痛くも無ければ、重くも無い。

 つまり、こんなにだるいのに、
体自体は、全然具合悪くないのだ。

 え? じゃあ、これって、気持ちが沈んでいるから、
体が動かなくなってるってことなの?!

 心療内科的なことだったのか?!

 それから私は、はじけるように飛び上がって、
急いでいつものビタミン剤を買いに行った。

 朝晩飲んで、様子を見た。

 サプリメントだけでなく
、肉の赤身とか、卵とか、カツオとか、
タンパク質とビタミンBと鉄分のすべてを含んだ食べ物を
選んで食べるようにしてみた。

 急には元気にならなかったが、
3日後くらいから体が起き上がりやすくなり、
1週間ほどすると、だるさが抜けてきていた。

 そして、また、1週間たつと、
いつも通りの気力が戻ってきたのだった。

 ビタミン、怖ぇ〜〜〜・・・・・・


 摂ると、毎日、知らないうちにいい感じ。

 摂らないと、いつの間にか、
身も心も、死に近づいてゆく・・・・・・


 これって・・・・・・

 まるで【女房】じゃんか!

 ビタミンBは、まるで、女房みたいな存在じゃん!

 いつも当たり前のように一緒に住んで、
いつの間にかダンナの命を守ってる。
 でも、居なくなると、ダンナは、知らないうちに、
身も心もクタクタになって、やがて死んじゃう・・・・・・

 どこをどう生かしてくれているか、というよりも、
居なくなると、あらゆることが立ちゆかなくなる。

 居なくなって初めて、その存在の偉大さに気付く。

 だから、たゆまずビタミンBを飲もうじゃないか。
 たゆまず女房を可愛がろうじゃないか。

 じゃないと、ダンナは、
知らないうちにあちこちの調子が悪くなって、
しまいにゃあ、死ぬね!

 その証拠に、
未亡人は、どんどん元気になるのに、
妻に先立たれた夫は、すぐに死んじゃうじゃないか。



 ・・・・・・あれから、ひと月。

 【タンパク質】【ビタミンB】【鉄分】を多めに摂って、
どんどん元気になってきた。

 同じ事が起きても、
ダルダルの時には、酷く落ち込んでしまったのに、
今じゃ、「そんなの何とかなるわい」と、笑い飛ばせる。

 もちろん、肉体的精神的ストレスは、相変わらず山盛りだけど、
食べるものでそれが払しょくできるなんて、
簡単で、楽しくて、最高じゃないか!


 【女房】に優しく、ビタミンを忘れず。
 これは、体調不良に人生を撹乱されないための重要な鍵のひとつ。

 「ドラゴンボール」の「玉」の一個。
「南総里見八犬伝」の「数珠の玉」の一個だよね?

 一個ゲットなんだよね!
 よっしゃ!


 あ、でも・・・・・・ということは、
あと6〜7個【玉】見つけなくちゃなのね・・・・・・


 ん〜〜〜! 道は、遠い!!! 



 (了)

(話の駄菓子屋)2013.5.28.あかじそ作