「 明るいニュース 」


 七転び八起き。

 人生で一度も挫折無く生きる人なんて、
そうそういないと思うけれど、 
【大失敗、深い落ち込み、時間の掛かる立ち直り】を7回も繰り返すと、
もう、何もかもをあきらめてしまいそうになる。

 あと1回起きれば、ささやかな幸福が待っているかもしれないのに、
「どうせ必死に起き上がっても、また転ぶんだ」
と、立ちあがるのをやめてしまうかもしれない。

 いまや人生80年。
 その間に転ぶのは、7回どころじゃないだろう。

 でも、転んだ回数の、もう1回分多く立ち上がれば、
視界が開ける。遠くの景色が見える。歩こうという気持ちになれる。

 そう考えると、
生きてゆくには、しぶとさこそが大事なんだ、と思えてくる。

 カッコ悪さとの共存なのだ、と。


 一足飛びにハッピーになんてなれない。

 一歩づつ歩く。

 何度も転ぶ。

 転んだら、立ちあがる。

 そしてまた、しつこく歩き続ける。


 もうダメだ!
 もう、今度こそ、絶対ダメだ、という、
哀しみ、絶望、怒り、苦痛の中でこそ、
もう一度、立ち上がれ。

 もう一回。

 もう一回だ。


 子供たちが大人になる時に、
そして、大人になってから、
さらに、この世を去るまでの間に、
この言葉を、母からの遺言として思い出してほしい。

 もう一回!
 もう一回起きなさい。


 私にも時々、体の内側から、
そういう声が聞こえてくることがある。

 私を見守る、今は亡きたくさんの命から、
私に未来を託す、かつての父や母たちの声が。


 (了)

(子だくさん)2013.12.17.あかじそ作