「 まだくるか 」


 長男の就職活動が続いているが、
地方の学生の負担がいかに重いものか、
つくづく感じる。

 北関東の大学に通う長男は、
寮から東京の会社の説明会や面接に通うたび、
交通費だけでも数千円かかると言う。

 就職活動解禁の年末から始まり、
内定をもらうまでの数か月間、
毎日、あるいは、数日おきに東京の各地に出向くため、
交通費がかさむだけではなく、
アルバイトをする暇がないので、
生活費にも困るようになる。

 長男自身がアルバイトをするのを前提に、
月に三万円しか仕送りをしていないので、
彼は、とたんに金に困り、
少しでも交通費を減らすために、
年明けから埼玉の実家にしょっちゅう帰省している。

 それでもまだ金欠なので、
ウチからも交通費を出してあげているが、
それでもまだ足りず、
4月の仕送り分を前借りさせてほしい、と懇願してきた。

 子供に金の苦労をさせたくはないので、
「足りない分は、親が出してやるからね」
と言いたいところだが、
経済的に独立した人間に育ってほしので、あえて
「じゃあ、前借りね」
と言って、渡している。

 「内定したら、バリバリバイトするから、
仕送りしなくてもいいようにするからね」
と長男は言うが、
「学業を一番考えなさい。最低限のお金は用意してあるからね」
と、言っている。

 うちに金が無いのを知っていて、
空気を読んで公立の学校を選んだ長男なので、
「卒業したら、毎月親に学費を返済する」と言っている。

 しかし、まあ、それは期待しないでおくことにしよう。

 努力の甲斐もあり、2月現在、
数社で書類審査が通ったというが、
どうなることやら。

 ところで、
寮では、節約のためにカップ麺ばかり食べている長男。

 本来、小食だったはずだが、
実家に戻り、家庭料理に感激して、
恐ろしいほどの食欲を見せているので、
毎月30キロで済んでいる米が、今月は、50キロだ。

 食費が3割増しで、交通費も追加交付。

 今にも社会に飛び立とうとしている我が家の皇太子を、
力いっぱい後押ししたい気持ちと、
(正直、経済的にキツイっす〜っ!)という本音もある。

 だが、働いて、働いて、
やりくりしてやりくりして、
今、この最大の経済危機をしのぐぞ!


 頭を抱えながら、家計簿を何時間も睨んでいる中、
午後から学校だと言う次男が昼ごろ起きてきて、
寝ぼけながら茶の間にやってきた。

 「お母さん、そろそろ僕、教習所に通いたいんだけど」


 なぬ!!


 まだくるか!


 奨学金でデザイン専門学校に通う次男よ。

 教習所へは、自分でローンを組んで通え!

 母親の私は、そうやって免許を取り、
月一万円づつ返済したぞ。

 ローンローンで返済が大変かもしれないが、
高校時代から続けているホームセンターのバイトを頑張れ!

 卒業後も、デザインの仕事には就けないかもしれないけれど、
何かしら働いて、ローンを滞りなく返済するのじゃ!

 次男は、自力で学費を工面し、
長男は、卒業後、親に返済すると言っているし、
何とかなるっしょ! 何とかね!!

 毎日、ドロドロに疲れるまで働き、
必死に稼いでも稼いでも、
子供がらみのことで、瞬時に蒸発してしまう給料。

 不安じゃないと言ったら嘘になる。

 でも、何とかなると思っていなけりゃあ、
やってられないや!

 
 あ〜〜〜〜〜〜〜あ、
 笑っちゃうよ!
 笑うしかないよ!

 あ〜〜〜っはっは〜!

 だあ〜〜〜〜〜〜っ、はっはっはっは〜〜〜っだ!!

 (はい壊れた!)



 (了)


(子だくさん)2014.2.18.あかじそ作