「 おかあさんたち 」


 金沢に住む夫の母親に電話をしたとき、
「おかあさん、体調いかがですか?」
と聞くと、毎回、
「もう・・・・・・ダメや・・・・・・」
と、泣きながら言う。

 で、夏休みに家族で帰省すると、
義母は、特に寝込んでいるわけでもなく、
会っている間じゅう、
同居している夫の弟の嫁さんの悪口を言っている。

 義父が生きているときは、
一日中義父の悪口を言っていた。

 「どこか体の具合が悪いところは無いですか?」
と聞くと、
「もう、だめなんや・・・・・・」
と言うが、どこかがどう悪い、ということも無いらしい。

 つまり、彼女は、
いつもいつも、精神的に満たされず、
周囲の人間への恨みつらみを訴えながら生きているのだ。

 「『元気出して!』なんて言わないけど、
でも、明るい気持ちで暮らせば、いくらか体調もよくなりますよ」
と、言ってみるものの、
「な〜〜ん」
と言い、
(嫁のあんたに偉そうに言われたくないんや!)
という顔をしている。

 【努力する者は、希望を語り、怠ける者は、不満を語る】

という言葉を聞いたことがある。

 そういう意味では、義母は、怠け者だ。

 悪い人ではないけれど、
いつでもどこでも、
「誰か私を幸せにしなさいよ!」
と、怒っている。

 それは、まぎれも無く「依存心」であり、
それを抱いて生きているうちは、
一生、その不満は解消されることは無んですよ、
それは、「自分の幸福は、自分で作る」という努力を怠る、
怠け者の思考ですよ、

・・・・・・とは、とても言えない。

 聞く耳を持たぬ頑固な人なのだ。

 私は、彼女に意地悪もされたが、世話にもなっている。

 憎からず思っているからこそ、
人生の最晩年になった今からでも、
心の持ちようを入れ替えて、
「自らの人生を自力で作る人」になって欲しいと思う。

 そして、他への不満から解き放たれ、
本当の幸福を感じて欲しいと願うのだが、
その気持ち、まるで通じず。

 彼女は、自分が依存心のかたまりで、
大怠け者だという自覚が全然無いのだから、
改めようもないのだった。



 一方、徒歩5分のところに住む実の母に、
「最近、体調どう?」
と聞くと、
「全然平気よ!」
と、大声で言われるが、
父に聞くと、2週間も前から血圧が200を超え、
食欲も無く、寝たり起きたりしているのだと言う。

 「具合悪いなら言ってよ〜! おかずとか持っていくから!」
と言うと、
「要らない要らない! ご飯なんてどうにかなるんだよ!」
「あんたは、自分の事心配してな!」
と、逆に叱られるのだ。

 いやいやいやいやいやいやいや!

 具合悪いなら、ちゃんと言って!

 ムリしないで!

 ぶっ倒れて死ぬまで元気なふりするの、やめてよ〜!

 体調悪い時は、それなりに助けるのに〜!

 江戸っ子で、見栄っ張りで、
弱いところを人に見せたくないのはわかるけど、
意地張らない、張らない!

 タバコパカパカ、酒がぶがぶ、夜更かしグイグイしている母に、
生活改善を訴える父すらも、
母にしてみりゃあ、「うるせえ小姑野郎」とのこと。

 そう。
 母は、元スケバン。
 70過ぎたスケバンなのだ。
 何が何でも、絶対に、
【御意見無用】【喧嘩上等】なのだ。

 人の言うことなんて、聞くわきゃあない。
 今さら優等生になる気なんて、さらさら無いのだ。


 あのさ〜〜〜〜〜〜!!!


 寝込んでるのに「全然大丈夫!!」と言う母。

 寝込んでないのに「もう死ぬ」と泣く義母。

 ねえ、ご両人!
 正確な情報が欲しいんだよ、こっちは。

 心配してんの。
 何か助けてあげられないかな、って、
損得勘定でなく、純粋に思っているのに、
甘えすぎる義母と、甘えられない母。

 体調が絶好調の時が10なら、今、7くらいよ、とか、
そういう客観的な情報ちょうだい!

 変な感情抜きで。

 目盛りというものが無いのか?

 いつも0か100なのかい?

 それじゃあ、全然わかんないよ!
 そのくせ、「みんな私をほったらかしにして!」と思ってる。

 勘弁して〜!




 ああ、おかあさんたちよ!

 今さら直らないとは思うけど、何とかしよう!

 その性格!!!

 あなたのすべての不幸は、
あなたの、その、
【性格】から来てますよ〜〜〜〜〜っだ!!!

   

 (了)


(しその草いきれ 2014.2.25.あかじそ作)