「 あれから3年 」

 東日本大震災から3年。

 しばらくは、繰り返す余震で、半裸で風呂から飛び出したり、
計画停電で、家族全員、
石油ストーブにあたりながら、ろうそくの火を囲んでラジオに耳を傾けたり、
不足する水や電池や懐中電灯を探して、店をはしごしまくったりした。

 しかし、たっぷり買いためた備蓄品も、
数年経つうちに、納戸の奥でことごとく賞味期限が過ぎていた。

 水もアウト。
 インスタントラーメンも、カップ麺も、餅も、レトルトご飯も、
ほとんどが賞味期限が切れていた。

 ともあれ、全員でちょっと味の落ちたそれらを連日食し、
備蓄品がほとんど無くなってしまったが、買い足すこともしていなかった。

 3年目と言うことで、テレビでたくさんの震災の情報番組をやっていて、
あらためて気持ちを引き締めないと、と思った。


 当初、「3日分の備蓄を」と言われていたが、
実際、首都直下地震が起きたら、道路も鉄道も、
ひと月くらいは不通になるだろう、ということで、
物流が止まることは間違いない。

 したがって、その間、最低でも7日間は、
何も買えない状態を覚悟しなけれないけないらしい。

 現に、今年は、2月に大雪で物流に酷い支障が起き、
店に物が少ない状態になった。

 一日雪が降っただけでこの始末だ。

 本当に首都に大きな地震が来たら、
店に物が補充されるのは、7日じゃ無理かもしれない。

 私も配達業務の一端を担っているが、
この大雪で5日くらいの遅れが出たものもあり、
何度もお客さんからお叱りを受けた。

 これは、やばい。

 早急に、7人分の7日分を備蓄せねば。

 2リットル入りのペットボトルの水が6本入った箱を、
少なくとも7〜8箱。

 カップ麺に、缶詰に、インスタントスープ、
カロリーの高いキャラメルやチョコなどのお菓子など、
食料品をいろいろ買いながら、ふと思った。

 水道も、電気も、ガスも止まるなら、
カセットコンロの確認もしなくちゃ!

 確か、コンロはふたつあるはず。
 カセットボンベも、9缶位あるはずだけど、
食料品が賞味期限が切れたように、
コンロやボンベも使えなくなっているんじゃないか?

 そう思って、夫に、
「コンロやボンベって、どこに置いたっけ?」
と聞いたが、全然覚えていない上、
探しても見つからない、と言う。

 「おい!」

 これじゃあ、いくら食べ物を買いだめしても、料理できないじゃないか!

 買い直しだ!
 急いで買い直し!!

 地震が起きてから買いに行ったって、売り切れているに決まってる!

 ホームセンターに急いで行かなくちゃ!

 それから、アウトドア用品店で、
ランタンとか、寝袋人数分とか買わないと!

 そうそう、東京の学校に通学している次男が、
帰宅困難になった時の用意もしないと。

 携帯用の小さいライトとか、非常食とか、
小さく折りたためる防寒具とか、買って持たせなきゃ。

 古い我が家が地震で潰れた時に、
中から物を持ちだすのは難しいだろう。

 外の物置に、密閉した状態で、
衣料品や最低限の食品や水も置かないと。

 歯磨きに水も使えないぞ。
お口クチュクチュモンダミンとか要るな。

 皿洗いもできないから、紙コップとか紙皿とか、
ラップとか、ビニールとか、
45リットルのゴミ袋は、
いざとなったら、穴を開けて着ることもできるぞ。
 多めに買っとこう!

 脱水状態になるかもな。
 水だけで無くて、スポーツドリンクも買おう。

 育ち盛りの子供たちに、たんぱく質も要るだろう。
 粉ミルクとか、プロテイン的な物もいいかも。


 ああ、それからそれから、

あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

 あれもこれも買わなくちゃ!

 それと、あれと、えっとえっと〜〜〜!!

 あ〜〜〜〜〜!!!

 あらゆる可能性を想定すればするほど、
全然準備ができていないことに焦ってしまう〜〜〜!!!

 電気も水もガスも食べ物も、
当たり前に手に入る便利すぎる世の中で、
いつの間にか初心を忘れまくっちゃって、
動物的感覚がバカになっちゃってる自分が嫌だよ〜〜〜!!!



  (了)


(しその草いきれ)2014.3.18.あかじそ作