「 4月から変わる! 」

 ここ5〜6年、配達の仕事に精一杯で、
毎日へとへとに疲れ果て、
生活面に全然神経が回らなかった。

 台所のテーブルには、
息子たちがそれぞれ持ち込んだ学校のカバンをはじめ、
学生服、上着、マンガ、雑誌、教科書、携帯ゲーム機の充電機などが、
どさどさ積まれている。

 自分の部屋に置け、各自私物を片づけろ、
と、毎日口が酸っぱくなるほど言っているのに、
全然片づけてくれない。

 そのうち、言うのもめんどくさくなり、
そのまま山積みになってしまっている。

 また、長女の服や本や細かな雑貨が、
6畳の茶の間の一角を占め、
「キラキラ女子のピンクコーナー」ができているので、
家族がゆっくりくつろげるスペースがほとんど無い。

 もう、こうなると、あっちもこっちも物だらけで、
片付けも掃除も物凄くおっくうになり、
床や窓のさんに埃がたまっていても、
見て見ぬふりをしてしまう。

 そんなわけで、
仕事の疲れにかこつけて、
好きな炊事以外は、ほとんど目をつぶって過ごしてきた。


 ところが、先日、
ひどい風邪で寝込んだ後、
体調が回復してきたときに、
急に目隠しが外れたかのように、
何もかもが見えてきてしまった。

 部屋の隅々の埃。

 伸び放題で10メートルを越えた庭の松の木。
 強風が吹くと隣の家の屋根にビシビシ当たり、
翌朝は、近所じゅうに松ぼっくりや松の葉をぶちまけている。

 それから、自分の髪も、1年以上伸ばしっぱなし。
 髪を結っていないと原始人みたいだ。

 処理保留の書類一式、
読みかけの本、学校からのプリントも、
部屋の隅に山積みされたまま忘れられている。


 ああ、ずっとずっと、
見て見ぬふりしていたが、もう限界!!!

 引っ越してきてから溜まり続けた
我が家の生活の贅肉を、
ここで一掃しなければ、
私の心の中のもやもやも一掃できない!


 思い切って数万円を費やし、松の木を低く剪定。

 それとともに、私の髪もさっぱりショートカットに。

 雑誌は捨てる。
 過去の書類は、全捨て。
 読んだ本は、売るか捨てる。

 新しい年度、そう、4月からは、
肉体的に結構キツイ配達の仕事の他に、
町内会の班長の仕事と、中学の役員を兼任するが、
それを憂鬱に思うのは、もうやめる。

 かと言って頑張り過ぎて躁状態になることもなく、
淡々と、「うすら前向き」に取り組む。

 何事も張り切り過ぎて疲れ果て、
その後しばらくうつ状態なる、といった、
今までの悪循環は、もう卒業。

 社会的には、「うすら前向き」で、
プライベートでは、「保留を全部処理」。

 そうして、ここ数十年、
私の心にモヤをかけてきた保留地獄から脱する。

 そうなのだ。

 「疲れ」が「保留」を生むのではなく、
実は、「保留」が「疲れ」を生んでいたのだ。


 この4月からは、晴れた心で暮らしていく!

 執着を捨てて、ガランとした部屋でカラリと生きて行く!

 4月から、人生を変えるぞ!!



  (了)


(話の駄菓子屋)2014.3.25.あかじそ作