子だくさん 「さよなら子供たち」
 
 

 大学4年の長男は、就職活動を済ませ、
とっととハウスメーカーへの内定を決めてきた。
 
 専門学校2年の次男は、私が紹介した近所のバイト先をやめて、
時給の高い東京の飲食店に移り、海外研修の費用を稼いでいる。
 
 高校3年の三男は、今日、
就職予定の小さな工務店に見学に行っている。
 
 
 出かけようとする息子たちの後を追いかけ回しながら、
「水筒持ってけ」とか、「シャツの第一ボタンとめろ」とか、
あれこれ差し出がましい事を口うるさく言ってしまう自分に、
自分が一番うんざりしている。
 
 ああ、そうなのだ。
 
 息子たちが一気に巣立とうとしているのだ。
 
 少しづつ手放していこうと心がけてはいるけれど、
私にとっては、彼らは、まだまだ全然見ちゃいられないほど子供で、
みすみす失敗するのを見過ごせない、と、
こまごまと注意してばかりいる。
 
 しかし、息子たちは、見えないところで徐々に大人になっていたようで、
そんな揺れる母心に逆らうこともなく、
「はいはい、お母さん、大丈夫だからね」
と、ニコニコしながら出かけて行く。
 
 
 いつまでも、ママにべったりの男になんてなって欲しくない。
 
 親の年金に頼るニートになんてさせない。
 
 「お母さんの老後を世話してちょうだい!」なんて、死んでも言わない。
 
 
 だから、あえて言おう。
 
 さようなら、子供たち、と。
 
 
 自分で歩き、自分でつまずき、自分で立ちあがって、自分で生きろ。
 
 困ったら、いつでも手伝うけど、
代わりにあんたたちの荷を背負うことはできないのだ。
 
 
 さようなら、子供たち。
 
 頑張って生きろ!
 
 そして、母の背を見て、勇気出せ!
 
 生きているよ!
 苦しくても、這いつくばっても、もがきながらも、
あきらめないで、生きているよ!
 
 どんなに苦しくても、
泣きながら、笑いながら、生きているから。
 
 
 そんな生きざまを、私は、遺言とする。
 
 
 
  (了)
 
 
 (子だくさん)2014.7.29.あかじそ作