「 ナチュラルガーデニングに はまる 」



 我が家は、旗状敷地の突き当たりにある。

 玄関は、正面にではなく、
敷地に入ってから、横に曲がった奥の角にあるので、
通りから見ると、自転車置き場と細い南側の縁側とが丸見えだ。

 つまり、顔となる玄関が、脇の方にあり、
正面にプライベートエリアがむき出しになっているのだ。

 ピンポンと呼び鈴が鳴ると、
「は〜い」とわざわざ奥の玄関まで走り、
玄関から外に出ると、門のところまで、
今度は外の細い細い日陰のエントランスを走って、
やっと門まで出られる。

 狭い敷地なのに、
応対に出るのに家の中と外とを、
バタバタ走りまわり、
シチめんどくさいったらありゃあしない。

 最近は、「ピンポン」と呼び鈴が鳴ると、
茶の間の掃き出し窓から飛び出して、
直で門まで出るようになってしまった。

 しかも、家が築30年超の古家なので、
お金を掛けて大々的にリフォームするくらいなら、
新築に建て替えた方が手っ取り早いくらい、
あちこち腐ったり傷んだりしているのだ。

 「しょうがねえな、この家は」
と、壁に珪藻土を塗ったり、自分で床を張り替えたり、と、
しぶしぶ修繕しながら住んでいたが、
趣味であるフレンチカントリーの本を読んでいるうちに、
あることに気がついた。

 古いことを「風情」にしちまえばいいんだ!

 それに、今、その流行が来ているじゃないか!

 ホームセンターに行けば、
木でざっくり建てられた小屋や板塀に、
あえてサビさせたブリキのバケツや缶や三輪車を飾ったり、
古ぼけたアイアンの家具や柵に植物をからませたりして、
味わいのあるナチュラルガーデンを作るのが流行っている。

 「これだよ! これこれ!!」

 中3の四男も、小3の長女も、
私が持ちかけたわけでもないのに、
同じ趣味であるらしく、
私が提案した手作りの庭の設計に、どんどん乗ってきて、
「ぼくは、木の窓枠を作るよ!」
「私は、錆びた針金細工を並べたい!」
と、話が盛り上がる盛り上がる!

 「よしっ!  今日も材木を見に行くぞ!」

 と、愛車バモスで大型ホームセンターに通い詰め、
「次は、あの電動工具が買いたい」
とか、
「杭打ち用の、でっかいトンカチ欲しいね、5000円するけど」
などと、どんどんテンションが上がってきた。

 近々、壊れた木製の門を取り外し、
自転車置き場と一体化させた「小屋」を建てて、
子供部屋の窓を開けると、小屋の中に出られるようにする。

 小屋には、地植えのツル性植物がからんでいたり、
長く伸びたグリーンネックレス(植物の一種)などをハンギングして、
自転車や、バケツや、シャベルなどの生活用品と同居させ、
全てが、その、ほったて小屋と一体化した
「生活感のある庭」を作る。

 古くて、生活感が満載で、風情がある庭を、
低予算で、少しづつ、自分たちの手でコツコツ作る。

 「見られちゃうプライベートエリア」
ではなく、
「見せる、いや魅せるナチュラルガーデン」
を、我が家の正面に配置なのだ!!

 あ〜〜〜、面白くなってきた!

 生活に追われる毎日から脱出し、
やっと、生活自体を楽しめそうだ。

 「生活」というものから死ぬまで逃げられないのなら、
ヤツを無理矢理こっちのペースに連れ込んで、
「生活」それ自体をシャレオツな趣味にしちまえばいいんだわ!

 よし!

 いいぞ!

 イイ感じ!!




  (了)

(しその草いきれ)2014.9.16.あかじそ作