「 笑いながら死にたい! 」





 昼間、どんなに嫌なことがあっても、
寝る前に面白いテレビ番組を観て大笑いしてから寝れば、
3秒で寝られたし、寝ざめもよい。

 しかし、最近は、
肉体的に配達の仕事がきついので、
小3の娘と一緒に9時や10時に寝ている。

 すると、「大笑い」という「心の掃除」をせずに床に入るため、
徐々に精神的に脆くなってきた。

 心の縫い目がほつれて、
必死に閉じ込めてきた哀しみや切なさや淋しさなどが
端からホロホロホロホロとこぼれてきてしまう。

 ああ、やっぱり、心も体も元気を保ちたければ、
寝る前に大笑いしなくちゃダメなんだ!

 そう思って、夜中までテレビを観ていると、
翌日の仕事がしんどい。

 ああ、笑ってから寝たい。
 でも、夜中まで起きていられない。


 そこで、夕飯を食べた後、少し仮眠をとって、
そのあと、夜中に起き出して、
満を持して深夜のテレビを観てみたが、
なにか違う。

 そんな、きっちり時間調整をしてまでして観ると、
まるで面白く感じない。

 一回寝て、また起きてくるので、恐ろしくテンションが沈んでいて、
何を観ても面白くもなんともない。

 やはり、一日気を張りっぱなしで疲れ果てた脳で、
ダラダラしながら観るから、面白いのだ。


 一回寝てからテレビを観て笑えなかったその夜、
私は、その、お気に入りの番組を最後まで観ないで寝た。

 最後まで観てしまうと、
まだこちらの心が収拾できていないのに、
先に「おわり」を告げられてしまうから、
凄まじく淋しい。

 心が置いてけぼりをくらってしまう。

 笑って、笑って、
何だかわけがわからなくなって、
わけがわからないまま寝つきたい。

 そうじゃないと、
秋の夜長の、寒い部屋の中でひとり、
妙に冷静にすべてが見えてしまって、
淋しいし、哀しいし、切ない!!

 ひとりで、最後に、
こたつを消して、ストーブの火を落として、
テレビを消して、電気を消して、
真っ暗な中で階段をのぼって寝床に入るのは、
絶対やらなきゃいけないことだけど、
絶対、淋しい!


 ああ、笑いながら寝たい。

 もっと言ったら、
笑いながら、死にたい!


(しその草いきれ)2014.11.18.あかじそ作