「 ふたご座流星群を観る 」





 築36年の木造おんぼろ一軒家の我が家だが、
唯一、自慢できるところがある。

 ベランダの広さが4畳分ほどあるのだ。

 家族7人分の布団と、7人分の洗濯物が同時に干せる。

 このベランダの良さが一番生かせるのが、天体観測だ。

 ベランダに布団を3〜4組敷き詰め、
家族みんなでくっついて横になり、
ほかほかの布団を掛けて寝ながら星を観られる。

 長男が4歳の時、しし座流星群を寝ながら観たのに味をしめ、
何度か流星群を家族で観てきたが、
今回のふたご座流星群もずいぶん楽しめた。

 初めて「寝ながら観測」に参加した小3の長女は、
南の空に流れるいくつもの流星に興奮していた。

 中でも、オリオン座周辺に
かなり明るく尾の長い流れ星を観た時は、
子供たちもみんな大きな声で叫んで喜んだ。

 夜11時を過ぎると、
ピークが過ぎたようで、なかなか星が流れず、
今までキャアキャアはしゃいでいた子供たちも静かになった。

 気付くと、私の隣にいる長女がすやすや寝息を立てているし、
こちらも眠くなってきた。

 おしゃべりな私が、ずっと無言だったので、
高3の三男と中3の四男が心配して、
「お母さんも寝ちゃったの?」
と、聞いてきた。

 物凄く寒い晩だ。

 「ふと見たらお母さんが凍死してたら面白いだろうな?」

と、言うと、

「ああ、起きてる起きてる」

と、ふたりは冷静に言った。

 「生きてる生きてる、だろ?」

と、言うと、「はいはい」と、また軽くあしらわれた。


 それにしても、
年頃の息子たちや娘と川の字になり、
いや、大勢いるので「州の字」か・・・・・・、
ともかく、いっしょに布団をかぶって、
静かな夜空の下、神秘的な天体ショーを観賞するのは、
「いとをかし」だ。

 貧しさも、忙しさも、何も関係ない。
 星空の下では、みな等しく、ちっぽけだ。


 子供たちも感動していたようで、
「うちのベランダ広くてよかった!」
と、口々に言うので、
「それを言うなら『うちに生まれてよかった』でしょ?」
と言うと、
「はい、お母さん、生存中」
と、またもや冷静に受け流されたのだった。


 お前たちがみんなひとり立ちするまでは、
カーチャンは、まだまだ、しぶとく
うざくうざく生存しちゃうからね! おい!



  (了)

(子だくさん)2014.12.16.あかじそ作