「 そしてデブになる 」



 食後、すぐに高3の三男が言う。

 「なんか甘いもの食べたい」

 たらふく夕飯を平らげた直後である。

 「マジで?! 今、食べたばっかりじゃん!」

 とはいえ、自分自身も、デザートが食べたいので、
「そうお〜?」などと渋りながらも、
あらかじめ買っておいたチョコレート系のお菓子を出す。

 すると、子供たちが、サッと食卓に集まる。
「ひとり何個?」
「25個入り」
「6人で割って」
「4あまり1」
「よし! ひとり4個、残り一個は、じゃんけん!」
「は〜い、さ〜いしょ〜は、グー! じゃ〜んけん、ぽい!」
「イエス!」「うわ〜!」「あ〜〜!」

 と、ここまで10秒。

 こういうわけで、うちの子たちは、
5の段(子供の数)と6の段(子供+母)と7の段(家族全員の数)の割り算だけは、
超速攻で計算できるのだった。

 「餃子100個。 7人で食べるよ!」

と、私が声を掛けると、

「はい、100割る7!」
と、兄の声が掛かり、
「んっと〜〜〜、んっと〜〜〜」
と、小3の長女が宙をにらんでいる。

 「まず、100から70引いて!」
と、中3の四男が言うと、
「なんで70引くの?」
と長女が聞き、
「7人だから、7の倍数の70引いて、ひとり10個は確約でしょ?」
と言うと、
「え? なんで〜?」
と、長女は、まだピンと来ていない。

 「じゃいいよ。じゃあ、100引く70は?」
と、三男が長女に聞くと、
「30」
と答える。

 「じゃあ、30割る7は?」
 そこで、我関せずでテレビを観ている二十歳の次男に急に聞いてみる。

 「え? え? え? 何何何?!」
次男は、とぼける。
 聞こえていたはずである。

 「30÷7だよ! おい!」

 「いやいやいやいや、急に振られても聞こえてねえし!」
 次男は、そう言いながら、頭の中で
(しちいちがしち、しちにじゅうし、しちさんにじゅういち・・・・・・)
と、必死で唱えている。

 次男は、凄まじく算数がダメなのだ。

 「4あまり2でしょ! ねえ!!」
と、小3の長女にド突かれ、
「知ってるよ! 知ってるにきまってるでしょ! 今言おうとしてたの!」
と叫ぶ次男を、みんなでニヤニヤして見ている。

 「で、餃子、ひとり何個づつなの?」
と聞くと、
「4個でしょ?」
と次男が得意げに答えるのを、
「14個でしょうが〜〜〜!!」
と、みんなで囲んで叫ぶ。

 「先に70個引いておいたでしょ〜〜〜?!」
 「70割る7で、ひとり10個、さっき先に引いてあったでしょ〜?!」

 と、みんなで言うと、

「知らねえし! 聞いてねえし!!」

と、次男は、もう、キレてごまかすしかない。

 そうやって、餃子ライスをひとり餃子14個で食べた後に、
チョコレートをひとり4粒食べ、
そのうち、誰かが、
「な〜〜〜か、甘いもの食べたら、辛いもの食べたくない?」
と誰かが言い、
「そうお〜?」
と、言いながらスナック菓子を出す。

 「辛いもの食べたら、今度は、お口が甘いもの欲してな〜い?」

 「しょうがないわねえ、ほれ!」

 「わ〜〜〜〜い!!!」

 って、・・・・・・エンドレス!!!


 この食べて食べて食べまくる、
食事と、甘いものと、辛い物と、割り算の飛び交う食卓!

 これじゃあ、デブになるってば!
 計算の速いデブ量産じゃないかい!

 とはいえ、子供に突っ込みながらも、
自分も一緒になって食べてる私。

 今は、仕事で毎日運動してるけど、
仕事やめたら、もう、やばいって〜!!!


  (了)

(話の駄菓子屋)2015.。2.10.あかじそ作