「 3人の卒業 」


 長男が大学を、三男が高校を、四男が中学を、
今年、卒業だ。

 長男は、地元の中堅ハウスメーカーに就職する。
 おととし、二級建築士の資格を取り、
この春からハウスメーカーで施工管理の現場経験を積み、
一級建築士の資格取得を目指す。

 しかし、この資格は、独学での取得が難しいらしく、
就職した後も、働きながら毎週日曜日に学校に通い、
勉強し続けなければならない。

 就職が決まったとはいえ、まだまだ、先は長い。

 三男は、工業高校の建築科を卒業し、
地元工務店に就職して、内装大工の修行に入る。

 入社後、半年ほど、
大手ハウスメーカーが運営している全寮制の職業訓練校に入り、
徹底的に専門技術の基礎を学ぶことになっている。

 彼もまた、職業人としての勉強を一から始めるのだ。

 さて、四男だが、先日、無事中学を卒業し、
次男の卒業した県立高校に入学が決まった。

 四男は、将来、自分が卒園した幼稚園の先生になることを目指し、
遅まきながらピアノを習い始めることになっている。

 工作が好きで得意、歌が好きで得意、子供が好きで扱いが上手。

 でも、ピアノが弾けなければ、幼稚園教諭になれないので、
小さい子に混じって、一から学び始めるのだ。
5人の子供のうち、3人が卒業し、
そのうちのふたりは、経済的に独立していこうとしている。

 長男と三男は、自動車免許も取得したし、
どんな車を買おうかと、しょっちゅう相談し合っている。

 息子の運転する車に乗っているとき、
危なっかしくて、生きた心地がしないが、
しかし、確実に彼らが私の懐から飛び立っていくのを感じる。


 来年は、次男がデザイン専門学校を卒業し、
無事、クリエイターの端くれとか見習いとかになるかもしれない。

 何かしらの職に就いて、彼もまた、社会人として、
来年には、独立していくだろう。


 さて、残る学生は、
四男と長女、ふたりのみ。

 長かったなあ・・・・・・、
いや、まだ終わっちゃいないけど、
いろいろあったなあ、【保護者】生活。

 柄じゃないんだ、本当は。
 誰かの保護をするなんて。

 ぼんやりと、ひとりで空を見たり、
本を読んだりしているのが好きなんだよなあ。

 人と人との押し合いへしあい、
コミュニケーションの縦糸横糸、
本当に、苦手。

 本当は、じっとしていたいけれど、今は、ひたすら、
【保護者】をやっている。
 子供に飯を食わせるために、
希望の学校に行かせるために、
【労働者】をやっている。

 人の世話をしている。
 保護に終始している。

 柄にないことを無理矢理やって、
私たちは、大人になっていくんだろう。

 やらされているうちに、やれるようになるのだろう。

 大人になっているのだろうか?

 私は。

 親として、成り立っているのだろうか?

 子供たちにとって。


 ・・・・・・とか言いながら、
保護者道は、あと、13年くらい続く。

 ああっ! なげぇっ!!



   (了)

(子だくさん)2015.3.17.あかじそ作