妊娠中は、宝くじなどの「くじ」に当たりやすいらしい。
現に、私は、第一子妊娠中に、なかなか当たらないという
公団居住者募集の抽選に、一発で当たった。
そもそも、第一子の妊娠も、大当たりだったのだ。
ずっと、「コドモ嫌い」だった私が、突然、
「コドモ欲しい!」
と、思ったとたんにできた。
第三子が生まれる2日前に買ったグリーンジャンボ宝くじは、
ぴったり200番違いで、惜しくも外れた。
あれが、産気づいてから、産院に向かう途中にでも買っていたら、
ドンピシャ200万円当たっていただろう。
そもそも、妊娠自体が、くじに当たるようなものなのだから、
そういう運気が盛り上がっているときは、くじでもなんでも当たりやすいのだろう。
「当たる」といえば、しょっ中車に当たって怪我をしている私は、
生まれる前から当たっていたらしい。
母が私を身ごもって7ヶ月目、
友だち妊婦とふたりで並んで道を歩いていて、
どうしてそうなったのか知らないが、母は、バイクに腹を轢かれた。
通行人が、
「妊婦が轢かれた」
と通報し、救急車が来たが、友達妊婦の方が青い顔をしていて、
母がケロッ、としていたから、間違えて友達の方が担架に乗せられたという。
幸い、母子共に、恥ずかしいほど無傷だったのだが、
胎児の私には、まだまだ試練が続いた。
事故の、そのすぐ後に、母は、盲腸になり、
デカッ腹を切って、盲腸摘出手術をしたという。
子宮の中ですやすや眠る私のすぐ横を、
キラキラ光るメスがつらつらつら〜、と、かすめていったのだ。
その話を夫の母に話していたら、彼女は、
「きえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
と、絶叫して私の手をとった。
なんと、夫の母も、夫を妊娠中(しかも同じく7ヶ月のころ)、
盲腸の手術をしたのだというのだ。
全然楽しくない共通点だ。
・・・・・・話はそれたが、ともかく、妊娠中は、
いろんなものがよく当たる、ということなのだ。
それにしても、配偶者が「アタリ」かどうか、結婚前に予測するのは、
結構難しいものだ。
あんなに「この人しかいない」と確信してたのに、
結婚したら、大抵、すこ〜〜〜しづつ、
「んんんっ?」
「あり〜〜〜?」
と、相手に対して感じはじめ、
「なんだよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
と、なって、
「キ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
と、なって、
「ハズレた〜〜〜〜〜〜〜っ!」
と、なる。
そのことを、勤め先の、同僚のおばちゃんに言うと、
「結婚は、宝くじじゃあないんだよ、あんた!」
と、言われた。
私が、
「うちの夫はハズレだ」
だの、
「姑に返品だ」
だのと、いつも愚痴を言っていると、
「それならあんたは、アタリの二ョーボなのかい?」
と、おばちゃんは、私に自分の顔面を寄せて言う。
「いつもニコニコ、良妻賢母、昼間は可憐で、夜は【時には娼婦のように】かい?」
わたしは、言葉もなく、黙って首を横に振った。
「あんたのやってることは、宝くじ売り場の前で、
『アタリと取り替えろ、コノヤロー』と店員にからんだり、
ハズレくじに向かって『当たれよ、バカヤロー』と怒鳴っているのと
同じことだよ」
と、おばちゃんは、言う。
ハズレはハズレなんだから、即刻あきらめろ、と言うのだ。
「大体、あんたの言う【アタリの夫】ってなんだい」
おばちゃんは、鼻息を私に吹きかけながら言う。
「家事育児を手伝う、とか、いっぱい金持って帰ってくる、とか、
奥さんに優しく愛をささやく、とか、そういうのをアタリだと思っているなら、
それこそ宝くじより当たらないよ」
と言う。
「ああ、ハズレた!」
と、あきらめて、「次」を買うなり、
「ああ、ハズレた!」
と、あきらめて、ハズレくじを、本のしおりにするとか
なんとかの有効利用を考えろってんだよ、
と言う。
ハズレはハズレなんだから、まずともかく何でもいいからあきらめろ、と。
ハズレのカミッペラに怒鳴ったってスネて見せたって意味なし!
・・・・・・ということらしい。
つまり、ハズレをアタリに変えるのは物理的に無理!
そんなこと、クールに考えりゃ、すぐわかるっぺ!
・・・・・・ということらしい。
私は、「なるへそ〜〜〜〜〜〜〜!」と、素直に思い、
あきらめることの前向きさを、初めて知った。
できれば、何でも当たって欲しい。
しかし、大抵当たらない。
そんなときは、当たらないことを恨んで、
いつまでもドロドロしていないこと。
とっととあきらめて、その善後策を考える。
それが、いつか、何かしらが当たる為の近道なのだ。
「当たれ!」(欲望)
「うっ、ハズレた!」(挫折)
「では、こうでどうだ!」(覚悟。そして、考察)
「よっしゃ!」(実現)
ってなものなのだ。
それからずっと後、
そのおばちゃんから、ひとこと、有り難いお言葉をいただいた。
「夫婦の関係は、くじじゃない。どんなダメな相手でも、
一緒にやっていこうって気持ちがあるうちは、アタリなんだよ。
誰かに当ててもらおうとしているうちは当たるもんか。
自力で当ててやるくらいじゃないと、一生当たらないね」
そうなのだ!
くじは当たるものじゃなく、当てるものだったのだ!
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