「 足の指を骨折する 」 |
3日前の夜、右足の薬指を骨折した。 トイレに掛け込もうとしたら、ドアの幅を間違えて、 入口の右側の柱を凄まじい勢いで蹴ってしまったのだ。 まるでポッキーとかプリッツとかをかじった時のような、 「ポキッ」という高い音がして、 思いっきりボッキリ折れた。 応急手当で、隣の中指を添え木代わりにしてテーピングをして、 その上から湿布をし、包帯でぐるぐる巻きにした。 その状態で翌朝の配達に出た。 右足が包帯ででっかくなっていたので、普通の靴が入らない。 たまたまその日は、雨だったので、 男物の長靴を履いて、足を引きずりながら配達した。 自転車は、折れていない左足で漕ぐので、あまり影響がなかったが、 やはり、自転車を降りてポストや店の中に歩いて持って行くのは、 非常にきつかった。 右足が地面に着くと激痛が走るため、基本、右足は、かかとで歩く。 したがって、物凄く激しいチャップリン式の歩き方になる。 仕事の後、かかりつけの整形外科に行こうと思うのだが、 右足のつま先が折れていると、車のペダルが踏めないので、運転できない。 外は、土砂降り。 仕方なく、近所に住む父に頼んで、車で医者に連れていってもらった。 指にこびりついたテーピングを剥がすのは、恐ろしく痛く、 仕方ないのではさみで切った。 レントゲンを撮ると、やっぱり折れていて、 しかも先っちょが曲がってしまっているので、 先生が手で「ムギュッ」とまっすぐに直すことになった。 「ごめんね、ちょっと痛いよ〜」 と、言うや否や、先生は、両手で指を大きく折り曲げた。 「いい〜〜〜〜〜!!!」 歯を食いしばって耐えたが、電気的で鋭角的な痛みが走った。 近年忘れていた「生きている実感」が襲ってきた。 形状記憶の固いネットをお湯で温め、柔らかくしてから、 患部に合わせて折り曲げ、簡易ギブスを作ってもらった。 私の足の甲の外側を上下から挟むように包む固いネットが出来上がり、 それに汗取り用のサポーターを巻いて、 折れた指と足の甲を固定した。 歩くのは多少楽になったが、包帯でぐるぐる巻きにしたので、 また右足だけでかくなった。 ちなみに、明日も、あさっても、しあさっても、配達の仕事がある。 無理を言って休ませてもらうこともできただろうが、 1週間腫れ続けて、痛みが和らぐのは3週間かかると言われたので、 休まないことに決めた。 時間は、掛かるが、男物の長靴を履いて、 足を引きずりながら、ゆっくりゆっくり配達しよう。 つい最近、自宅周辺が大雨で冠水したとき、 急に休ませもらって、迷惑をかけたばかりだ。 休めない! 正月にインフルエンザに掛かった時も、2日しか休まなかったし、 今回も根性でやってやらあ! というか、出来高制のこの仕事じゃあ、 休んだら、食いっぱぐれてしまうじゃないか! ・・・・・・と、いうわけで、 ここ数日、晴れていても長靴で、足を引きずって配達している。 必死で気合いを入れているから、仕事は、できているが、 仕事が終わると、痛みがぶり返し、 立っているのも痛い。 料理も、掃除も、洗濯も、 ひーひー言いながらやっているが、 思うようにできない。 お風呂に入る時は、包帯の上からスーパーの袋を巻いて、 足を上げて洗っている。 温まると激痛が走るので、 湯船には、入れない。 不便だ! 細い細い足の指一本折れただけで、 こんなにも日常生活に支障が生じるものなのか? いつも怪我をした子供の世話をする側なのに、 今度は、家族に世話になりっぱなしだ。 年をとって、自分が介護されるようになると、 こんな感じなのかしら? 「お世話になりっぱなし」! ちょっとしたことも人に頼まなければならないし、 気が引けるやら、後ろめたいやら、 遠慮していろいろ我慢しないといけないやら。 ああ、こんなことなら、世話をしている側の方が、 よっぽど気が楽!! はい、ここで一句。 【足の指、折って教わる、行く末のわれ】 切ねえな〜〜〜、おい。 (了) |
(しその草いきれ)2015.9.29.あかじそ作 |