子だくさん 「心配しても、しなくても」
 
 
 子だくさんの母ちゃんは、全員、
「肝っ玉母ちゃん」なのか?
 
 細かいことを気にしない、おおらかな人柄なのか?
 
 答えは、否!
 
 子供の数と親の性格は、無関係なのだ。
 
 あたりまえじゃないか。
 
 子供の友だちの親には、よくこう言われる。
 
 「避妊しないで、考えなしにどんどんできちゃったんでしょ?」
 「子供がたくさんいれば、おおざっぱな生活しているんでしょ?」
 「子供服のお下がり、あげるよ。大助かりでしょ?」
 「子供が多いと大変でしょ? 塾も行かせられないよね?」
 「食器は、みんな、百円ショップのプラスチックでしょ?」
 「スーパーに家族みんなで行って、おひとり様一個までの特売品を、何個も何個も買い占めるんでしょ?」
 「大家族ならではの、節約料理を教えてくださいよ」
 「子供は、みんな、中卒? 高校くらいは、行かせてあげるの?」
 「虐待とか、せっかんとか、いまだに顕在でしょ? 軽く育児放棄的な?」
 
 って・・・・・・
 
 もう、慣れた~~~!
 
 こんな差別。
 
 何人子供がいようと、いまいと、親の性格とは、関係なし。
 
 私は、心配性で気の小さい母親でございます。
 母の愛は、5人の子供に5分割などできません。
 愛情も、心配も、5倍なんだから!!
 
 
 
 幼稚園の頃から、新学期ごとに登園拒否登校拒否を起こしかけるような、
メンタルの弱い長男についての心配が、今も続く。
 
 一級建築士になるために、今年、ハウスメーカーに就職し、
ひょろ長い体つきで現場監督の修行をしているのだが、
連日の飲み会、接待、職人さんたちからの厳しい洗礼で、
ズタボロに疲れ果て、笑顔を忘れてしまっている。
 
 連日、「ツライキツイ辞めたい逃げたい」と洩らしながら、
必死な形相で出社する姿に、こっちの神経もヒリヒリしているのだ。
 
 このまま心を病んでしまうくらいなら、
「辞めちゃいな」と言ってやりたいところだが、
ここは、あいつが大人の男になるための登竜門だと思って、
厳しく優しく励まし続けた方がいいのか?
 
 でも、それで長男を追い詰めて、自殺とかされたら、どうするんだ?
 
 気が気じゃない。
 
 
 次男は次男で、いまだに就職先が決まらず、
うつろな表情で就活続行中。
 
 デザイン関係の仕事など、やはり、そうそうあるわけではないので、
本人も半ば自棄になり、
工業製品の作業員の派遣会社とか、
社名に「デザイン」と入った会社の居酒屋とかの内定を取ったものの、
「まったく畑違いの仕事じゃないか」と、周囲に反対されて断る毎日。
 
 専門学校の先生に言わせると、
デザイン関係の採用は、これからが最盛期だとかで、
気を取り直してスーツ姿で出かけていくが、
空振りばかりの毎日だ。
 
 図画工作なら誰にも負けないのだが、
それを求める企業に、なかなかたどり着けないし、
求めてもらえない。
 
 寒くなってきたのに、
いまだに夏の薄手のスーツで出かける次男が切ない。
 
 親が心配しても仕方ないのだけれど、心配せずには、いられない。
 
 
 工業高校を卒業し、工務店に就職した三男。
 
 長男が大きな会社で苦労しているのに対し、
この小さな工務店は、家庭的で、家族のような集まりだった。
 
 少ない給料ながらも、通勤のための新車を購入し、
今朝、土砂降りの中を初めての運転で出勤して行ったが、
無事、何事もなくたどり着けたのか?
 
 これから、眠い早朝の運転や、仕事の後の疲れた夜間の運転で、
事故など起こさないだろうか?
 
 毎日、毎日、私は、
未成年者の車通勤を案じ続けなければならない。
 
 
 小学1年生の頃に、転んで頭を強打して、危ないところだった四男。
 
 それなのに、年に一度は、激しく転んで頭を打ち、
入院したり、検査したりを繰り返している。
 
 小4でインフルエンザに掛かった時、
タミフルを服用中、幻覚を見て大暴れした後、
熱を出すたび、悪夢を見て、大騒ぎしている。
 
 脳の検査を受けると、異常無しと言われるし、
精神の病かと思えば、そうでも無く。
 
 そもそも頭を打ち過ぎるし、
高校生になってからの激しい寝ぼけは、正直、怖い。
 
 普段は、穏やかで明るい青年なのに、
高熱を出すと、本当にヤバい。
 
 もっと大きな病院で精密検査をすべきか、悩む。
 
 
 四人の男子の後に生まれてきた唯一の女子、長女。
 
 生まれたばかりと思っていたら、もう小4になった。
 
 私に性格の似たこの娘は、
明るく、ひょうきん、働き者で、真面目なのだが、
最近は、クラスメイトのトラブルメーカーの子に振り回されて、
「学校に行きたくない」と、たびたびごねるようになってきた。
 
 なんとか言いくるめて送りだしているが、
帰ってくると、ケロッとしている。
 
 しかし、ちょっとした時に洩らす言葉は、
「今、学校、地獄だよ。女子って怖い。疲れる」なのだ。
 
 私たちの時代と違って、ネットでのいじめもある時代だ。
 
 女子の怖い世界と無縁で育ってほしいが、
よほど要領を押さえないと、うまく生き抜けないだろう。
 
 健康的な人間関係に恵まれますように!
 
 自分の周りを、自分の力で、明るく健全に照らしますように!!
 
 心配が絶えない。
 
 
 五人五様の子の心配。
 
 これを、夫婦で手を携えて乗り切っていきたいところだが、
夫は、はなから家族に意識が向いておらず、
我が道を行く、超人的マイペース男だ。
 
 私の心配をいやすどころか、
経済的な心配事の元凶だし、
昨日は、運転中に人の車をこすって、事故ってやがる。
 
 心配を減らすどころか、増やす一方だ。
 
 
 ああ、私が、心配しても、しなくても、
すべての事情は、何も変わらないのなら、
こんなしんどい心配は、今すぐやめたいところだが、
心配するのが癖なのだから、なかなか止められない。
 
 人の心配ばかりしている場合じゃない。
 
 自分の足指の骨折も完治していないのに。
 
 も~~~、イヤイヤイヤイヤ!
 
 50歳手前で、思春期の娘のようにナーバスよ!!!
 
 
 
  (了)
 
 
 (子だくさん)2015.11.3.あかじそ作