子だくさん 「カーチャン再起動」
 

 子供たちが小さい頃は、
チビたちがアレルギー体質だったこともあり、
朝から晩まで除去食の料理をしたり、掃除しまくったりして、
忙しく家事に立ち働いていた。
 
 その合い間合い間に、
おっぱいをあげて、幼稚園の送り迎えをして、
アカンボを抱っこして寝かせ、
自分は、5分と座っていられなかった。
 
 あれから、20年近く経ち、
男の子4人は、就職したり、バイトをしながら学生をしていたりして、
すっかり手を離れた。
 
 末っ子の小4の長女も、
全然手のかからない子で、
座る間もなく家事に走り回ることもなくなった。
 
 すると、どうだ。
 
 いつの間にか、知らないうちに、
私は、楽することばかりを求めていた。
 
 食材と日用品の買い物と夕飯作り、
夫の干した大量の洗濯物を、夕方取りこんでたたんでしまい、
ガソリンスタンドに灯油を買いに行き、
銀行の振り替えや学校行事の参加、
子供がらみの世話などを、
思いっきりやっつけ仕事でこなしている毎日だ。
 
 もちろん、配達の仕事がきつくて、
体力的にいつもクタクタだから、という理由もあるが、
ともかく、家事に対する気力というものが減退してしまっていた。
 
 家事に対して、「省エネモード」に入ってしまっている状態なのだ。
 
 
 ところが、この春高校を卒業して、
工務店に就職し、内装大工をしている三男が、
自ら運転する車で通勤することになり、
毎朝5時起きで弁当を作ってあげなければならなくなった。
 
 しかも、今までは、冷凍食品でも文句を言わなかったのに、
現場仕事では、それじゃ力が出ないとかで、
手作りのガッツリ肉弁当を要求してくるので、
そりゃあ、もう大変だ。
 
 夫は、料理がほとんどできないので、
私が作るしかない。
 
 朝が苦手で、半端じゃなく低血圧なのに、
毎朝5時起きして、
何種類もの「ガッツリおかず」を大量に作る。
 
 最初は、いやいやだったが、
三男が「ツライ力仕事で、弁当だけが励み」と言うので、
そうなると、頑張るしかない。
 
 仕事が終わると、すぐに明日の弁当の副菜を数種類作り、
夕飯の下準備をするようになった。
 
 いつもなら、撮りためたビデオを観たり、
パズルをして、まったりと過ごしている時間帯にだ。
 
 夕方、夕飯を仕上げ、時間差で帰宅する子供たちに
何度も何度も配膳し、
夕飯後、明日の弁当のメインディッシュの仕込みと、
翌朝の朝食のおかずを作っておく。
 
 朝、頭が全然働かないため、
前もって準備万端にしておく必要があるのだ。
 
 こうなると、どんどん本来のカーチャンぢからがよみがえってきて、
座る間もなく立ち働くライフスタイルが戻ってきた。
 
 しかし、子供たちが小さい頃のように、
泣く泣く立ち働いていたつらさはなく、
親離れしていく子供たちのために、
再び母としての仕事が与えられた喜びで、
嬉々として台所を行き気してしまうのであった。
 
 カーチャン再起動。
 
 求められると、力を得る。
 
 これが、カーチャンてもんである。
 
 
 (了)
 
 
 (子だくさん)2015.12.8.あかじそ作