カウントダウン初産  テーマ★ スリー・ツー・ワン・ゼロ・どかぁ〜ん


  1トンのうんちが、1秒で出そうな圧力が、肛門付近を襲っていた。
出るっ!出る出る出る出るっ!!
でるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる〜っ!!

初産。お腹の痛いのよりも、いきみのがしの方がつらい。

  「まだまだ、あと5センチ!」
  助産婦は、私の股間にジャンケンのチョキをつっこんで、子宮口の開き具合を調べてから言った。
10センチ開かないと、いきんじゃいけないのである。

「出るんですってば!今!すぐに!」
「まだ、出さないでねっ!」

  なんつう、なんつう冷たい言葉!
1トンのうんちが、1点集中ですよっ!!
映画館の火事の、非常口みたいになっちゃってるんですよっ!!
マジでマジでマジで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!

  夫立ち会い分娩である。
もちろん、ただ立ち会うだけのわけがない。

「肛門、押さえてて!手離さないでよっ!!」

  3時間も、いきみのがしは続いた。
夫が、ふと、私のそばを離れた。

「おいっ!!  どこ行くコラッ!!」
「ちょっとゴミを捨てに・・・・・・」
「んなもな〜その辺置いとけコラッ!!  だあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「また来たかっ?」
「出る・・・・・。今度こそ出るっ!!絶対出るっ!!うんぐあ〜〜〜っ!!」
「助産婦さん呼んで来る」
「ちょい待てコラ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!! この波が行ってからにしてくれ〜〜〜〜〜っ!」

  助産婦が、何かが出そうになってる、まさにそこに、チョキを入れる。
本当に噴出しそうになる。
「・・・・・・はい、全開。分娩室行きますよ」
「はい〜〜〜〜〜っ!!」

  私は、飛び起きて、目にも止まらぬ速さで分娩台へとダッシュした。

「ちょっとね、おしもの毛、剃りますからね。ぜっっっっったいに動かないでよっ!!」

  おうっ!   剃るなり、リボン結ぶなり、何でも好きにしてくれいっ!
とにかく一刻も早く、あたしゃ、いきみたいのさっ!!

「うっ!!!」
  来たぜっ!!
今回は本物だっ!!
・・・・・・あっ!
・・・・・・えっ?!
  うそうそうそうそうそうそうそうそうそ!
うっそだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
出るって!!
大腸も子宮も出るって!!
何か、物凄くたくさんの内臓が出てしまいそうなんだってば!!

「先生っ!!!!!!!  何か出ますっ!」
「はい、出ますよ〜」
「いえ、違うんですっ!  出ちゃいけない物まで出ちゃいそうなんですっ!!」
「出ていいんですよ〜」
「内臓ですよっ!!!!!」
「内臓は出ません」
「いやいやいやいや、出ちゃうから!絶対!」
「出ないって」
「いえっ!  出るっ! 出るんです!」
「そこまで言うなら、内臓も出していいですよ。後で入れといてあげるから」
「し・・・死にませんか?  内臓出して!」
「上手に、しまっときますよ」
「だあ〜〜〜〜〜〜〜っ!! 出る!出る出る!だ、出しますよっ!出していいんですよね?! 」
「何でも出してください」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜むむむむむむむむむむむむむむむっ!!!」

  ぶりぶりぶり〜〜〜〜〜〜〜ん。

  けたましい赤ん坊の声!

「おめでとうございま〜す。男の子で〜す」
「は、はい・・・・・・内臓は・・・・・・」
「まだ言ってるんですか、あなた・・・・・・」


  その時の子が、今、風呂のお湯張りを終え、四男の服を脱がせている。

  初めての事って、わけわかんないっす。


                                                             (おわり)