話の駄菓子屋 「徹底的にプレーンを目指す」
 
 
 今年の正月、
全部屋、ひっちゃかめっちゃかの家の中で、
私は、誓った。
 
 来年の正月は、すっきりと片付いた家で、
澄みきった心で、新しい年を迎える、と。
 
 子供たちがそれぞれ買い集めた物や服があふれ、
人の居場所が無くなっている。
 
 正月の花を飾るにも、飾る棚などない。
 
 今ある棚という棚の上には、
子供たちの私物が山積みされ、
スマホが3〜4個、コンセントにつながって、置かれている。
 
 物置に住んでいるような毎日の中で、
自然と夢や希望は、しぼんで消えて、
毎日、ただただ生きているのみ。
 
 もはや私というものは、
物置の中に転がる、「物」の一個になり下がっているのだ。
 
 
 かつて、私にも、生活スタイルというものがあった。
 
 子供が生まれ、
両家の親から「趣味の合わない物」を山ほど頂きまくり、
いつの間にか、色も素材もガチャガチャな部屋になった。
 
 子供が増えに増えて、
経済的にも厳しくなってくると、
好みのインテリアとか何とかも言っていられなくなり、
安物買いの銭失い的な、プラスチックや化粧合板の家具が増え、
心がツルッツルになってきた。
 
 木や鉄や紙などの自然素材に囲まれていたいのに、
見るところ、触るところ、全部、
人工的なツルッツル素材ばかり。
 
 生活スタイルもクソもない。
 
 生き方がどうこうとか、もう、とっくに考えないことにしていた。
 
 しかし、だ。
 
 スマホを持って、常にインターネットで世界とつながっていても、
心は、世界から乖離している。
 
 孤立している。
 
 
 ああ、飾りは、もう、要らない。
 
 若いころのように、
「人からどう思われるか」だけを気にすることもなくなった。
 
 【自分が自分の生き方をどうしたいのか?】
 
 その一点が大事だと考えるようになった。
 
 
 私は、昭和の生活をしたいのだ。
 
 少ない物を大事に使い、
ひとつひとつを手作りし、
そのときそのときを、丁寧に生きる。
 
 朝目覚め、食事を作り、子供を育て、
体を動かして働き、汗をかき、
掃除して、料理して、食事して、
寝床を作って、静かに眠る。
 
 そんな、何でもない暮らしそのものを、愛す。
 
 暮らしの手仕事を愛し、仕事の汗を愛す。
 
 白雪姫の中で、小人たちが歌ってる。
 
 ♪ハイホ〜、ハイホ〜、仕事が好き〜♪
 
 私も、そんな風に暮らしたい。
 
 そんな人生を生きたい。
 
 暮らしそのものを、愛でながら生きたい。
 
 余分なお金や地位や名誉など要らない。
 
 暮らしを愛せれば、それ以上の幸せは無い。
 
 
 だから、私は、今持っている余計な物や情報を、
少しづつ捨てていこうと思っている。
 
 来年の正月をすっきりと迎えるために、
徹底的にプレーンな暮らしを目指す。
 
 
 とりあえず、今年に入って、
台所の「使っていないもの」を全部捨てた。
 
 避けてきた水周りの、トイレ洗面所風呂場を、
這いつくばってゴッシゴシ磨いた。
 
 這いつくばる。
 
 かがむ。
 
 腕を動かす。
 
 手を動かす。
 
 
 スーパープレーンな暮らしを手に入れるためには、
座ってちゃダメだ。
 
 動かなきゃ!
 
 原始的な手仕事の連続が、洗練された暮らしを作って行くんだ!
 
 
 頑張るぞ!
 
 今度こそ!
 
 今年こそ!
 
 
 
  (了)
 
 
 (話の駄菓子屋)2016.2.4.あかじそ作