「ふしぎなつうがくろ」 テーマ:つうがくろ



 さきちゃんは、小学3年生です。
だれにも言っていないけれど、
つうがくろを歩いていると、
時々、ふしぎなことがあります。

 お母さんにおこられた朝、
しょんぼりしながら、つうがくろを歩いていると、
6年生くらいのお姉さんが、
さきちゃんに、話しかけてくるのです。

「元気出してね、さきちゃん」

 その女の子は、前からさきちゃんのことをよく知っているみたいでした。

 お友だちとけんかをして、
なきながら、つうがくろをあるいていると、
やっぱり、そのお姉さんが、いつのまにかそばにいて、

「あしたは、きっと、なかなおりできるよ」

と、なぐさめてくれるのでした。

 さきちゃんは、ある日、そのお姉さんに、
ゆうきを出して聞いてみました。

「あなたは、だれなの? どうしていつも、わたしのことを、よく知っているの?」

 すると、そのお姉さんは、にっこりとわらって、

「わたしのこと、みおぼえない?」

と、ぎゃくに聞いてきました。

 そういわれてみれば、何だか見たことのある顔です。
声も、聞いたことがあるような気がしてきました。
 とっても、とっても、よく知っているような気がするのですが、
やっぱり、どうしても思い出せません。

 お姉さんは、

「いつでも、こまったことがあったら、まもってあげるからね」

と、わらいながら、いつのまにか、どこかへ行ってしまいました。

 さきちゃんは、首をかしげながら家に帰ると、

「お帰り」

と、お母さんがにこにこわらって立っていました。
 
 そのえがおは、さっきのお姉さんそっくりでした。

「もしかして、お母さん?」

 さきちゃんが、びっくりしてお母さんの顔を見ていると、

「え? なんのことかな?」

と、お母さんは、とぼけて言いました。
 
 その夜、お母さんの子どものころのアルバムを見せてもらったら、
あの、ふしぎなお姉さんが、写真に写っていました。
 にこにことわらって、さきちゃんに、ほほえんでいるように見えました。


            (おわり)