「 チ 」の巻 


 1歳の四男に、「お出かけする?」と言うと、
「ラッチ―♪」
と言い、
「お菓子だよ〜」
と言うと、
「オタチ・ラッチ―♪」
と言う。

アニキたち3人も、これには、面白がって、
「ねえ、オタチ食べる?」
「ねえ、ラッチ―?」

と、四男を囲んで、しつこく聞く。

四男も、喜んで
「ラッチ―」「ラッチ―」「ラッチ―」
と、連発しているうちに、何だかわからなくなってき
て、
「アッチ―」とか、
「アッキー」とか、
言い出した。
そのうち、ひょっ、と、
「ラッキー♪」
と言ってしまった。

「あ〜あ・・・・・・」
 たちまちアニキたちは興ざめ、
母も、一抹の淋しさを感じてしまった。

 みんなのがっかりする顔を見回して、
四男は、悲しげに、ゆっくりとまばたきをした。
そして、小さな声で、

「ら・・・ら・・・き・・・ち・・・ち・・・」

と、つぶやき、そして、そっとうなづき、

「ラッチ―♪」

と、ニッコリ、可愛らしいポーズをとった。
 アニキたちは、再び、拍手喝采だった。

 末っ子も大変だ。

             (おわり)
2001.09.21 作:あかじそ