「それが言いたかった」の巻 


 四男は、1歳半を過ぎてから、
いろいろな「音」をしゃべってみている。

「アッター」
「アッター」

が、お気に入りで、かなり長い期間言っていたが、
最近は、

「アッタ・カッター」
「アッタ・カッター」

だった。
 
「かっこいいじゃん! アッタ・カッターって」

と、母親の私が笑うと、いつも少し、不本意な顔をし た。
なんでだろう、と思っていたが、そのうち、

「アイタ・カッタ・カイ!」
「アイタ・カッタ・カイ!」

と言い出した。

「そりゃあ、会いたかったよ」

と、私が四男の頬を両手で包むと、
両手の隙間から、くりくりの目だけのぞかせて、

「アイタ・カッテン・・・」

と、言った。

お腹の中で長い間、順番を待っていたのだろう。
ずっとそれが言いたくて、練習していたのかもしれない。


         (おわり)
2001.09.22 あかじそ作