「桃栗3年、夜泣かれ10年」の巻 


 最近、夜泣きする赤ん坊を殺してしまう親が多い。
「最近の若い親はけしからーん!!」
と言うのは簡単だ。
 しかし、連日眠れないというのは、本当につらいものだ。少しづつ、理性が働かなくなってくる。
 
 赤ん坊は、お腹がすくと泣く。おしりが濡れると泣く。
痛いと泣く。痒いと泣く。暑くても泣くし、寂しくても泣く。
 
 問題は、昼夜を問わず、
「何で泣いてるのかわからないけど泣く」ということなのだ。

 昼間は、おっぱいやったし、オムツも換えたし、何でよ、何でよ、と、
泣き止まない赤ん坊をひたすら抱きつづけたりする。
 ずっと抱いてると重い。つらい。
 赤ん坊が泣きつづけていると、ものすっごくイライラする。

 それが、夜中に起こると・・・・・・。

 凶暴な気持ちになってくる。
泣き狂う赤ん坊が、自分の命を脅かす外敵に感じてしまう。
 だから、やっつけてしまう人も出てきてしまうのだ。

 でも、やっつけちゃいかんのである。
赤ん坊は赤ん坊だから、大人がやっつけたら死んじゃうのだ。
 それが、寝不足だとわからなくなってしまう。

 思えば、私も夜泣かれ歴10年。
10年間、毎晩、誰かが泣き叫んでいる。
 4人中、3人が、アトピー性皮膚炎だ。
睡眠中、物凄く痒がる。ひっかいて血だらけだ。

 また、原因ははっきりしていないらしいが、アレルギーの関係で、
夜中、足の関節を物凄く痛がることがある。
もう、のたうちまわって痛がる。

 昨晩から今朝にかけては、三男が足痛い、と一晩中泣き狂い、
四男が首のアトピーを掻きむしって泣き続けた。
 私は、一晩中、両脇で夜泣かれていたわけだ。(眠いっ!!!)

 長男は、割と神経質で、3、4歳くらいまで夜驚症だった。
「キャー!!!」
といきなり夜中に跳ね起き、部屋中を駆けずり回る。
親はびっくりして、追い掛け回し、抱いたりさすったりしてみるが、
のけぞって暴れる。
 または、突然起き上がって、布団の上で、ドド―ッ、と、下痢便を噴出させる。
 それが収まったと思えば、今度は喘息になってしまって、
朝方、激しいせきで呼吸困難になり、
救急病院に駆け込むことになる。(赤ん坊連れて)

 次男は、昼間、ずっと、私が、右肩に縦抱きにしていないと、泣き狂う赤ん坊だった。
やっと夕方、寝付いたと思えば、ちょっとのオシッコちびりでも目を覚まし、
さらさらオムツに換えてくれるまで狂っている。
 紙オムツではもったいなくて、夜も布だった。

 三男のアトピーは重症で、目、鼻、口意外、顔の皮膚は全部ずるむけだった。
体も全体的にかゆかゆで、眠ると体中、虫が這いまわるようにかゆいらしい。
 今でこそ、関節や耳たぶの湿疹ぐらいに軽症化したが、4歳まで、毎晩、
血まみれで泣き狂い、親も、ほとんど横になれなかった。
 そして、現在は、喘息だ。

 昨年、四男誕生。
また、アトピーッ子だった。

 もう、私たち夫婦は驚かない。
「夜泣き」だあ?
 あったりめえよぉ!
 夜泣きしねえ赤ん坊なんているのかい?
おっと、ミルクタイムや、オムツ濡れで泣くのは「夜泣き」たぁ呼ばねえぜぇ。
 昼間興奮して、夜中、泣き狂う?
おう!上等、上等! いい発達してんじゃねえかい。
 
 ミルクやって、オムツ換えて、抱いてやっても、まだ泣き狂ってたら、
その夜は「寝るのをやめた!」と、覚悟して、「おっはー」と、おきあがるのさっ。
ちっとばかし、朝が早くきたと思いなぁ。
 太陽が裏側にあるだけよっ。裏じゃ、みんな起きてらぁ。

 電気がコウコウとついた部屋で、赤ん坊を完全に起こしちまいな。
我に返ったら、もう、夜泣き終了よぉ。
 それでもまだ泣いてやがったら、上着はおってコンビニよぉ。
夜中に甘いデザート買って食べるも良し、ビール買ってヤケ酒もまた良し。
 とにかく、外でりゃ、
「おぅ? お出かけかい?」てなもんで、赤ん坊もノリノリでい。


  といった具合だ。
ほとんど、無理矢理ハイテンション<江戸っ子バージョン>である。

「夜泣き」?

殺しちゃだめだめ。楽しまなくっちゃ。
イベント、イベント。お祭りだよっ!

 この境地まで、私は10年かかった。
・・・・・・遅い方だと思う。