「本能老人」の巻 とある駅の駅前喫茶に入り、気分良くうまいコーヒーを飲み、気分良く店を出ると、 店先のベンチにお年寄のカップルが座っていた。 日曜日の気持ち良い朝だ、年寄りにはいいひなたぼっこ日和だなあ、と、そのまま通 り過ぎようとしてぎょっとした。 おじいさんの方が、ふんがふんがふんがふんがしながら、おばあさんの着物の襟元 に腕を突っ込んで、その乳をもみしだいているではないか。おじいさんは、ときにお ばあさんにのしかかるようにし、ときに中腰で揺れ、上下左右に激しく波打っていた。 一方、おばあさんの方は、年寄りの顔色とは思えないくらい、マッカッカに顔を上 気させていた。恥らうように微妙に抵抗するそぶりをしているが、本気で嫌がってい る風でもなく、かすかに艶っぽい表情で何か声を発しているようであった。 (これってレイプか? それとも両者同意のもとに? おばあさんを助けるべきか、 見てみぬフリするべきか?) 私は迷いに迷ったが、とりあえずおじいさんの方を睨み付けてみて、その反応を 見て、事件性があるかどうかを確認することにした。 (ジロッ) おじいさんは全然こちらの視線に気づかぬどころか、更にヒートアップしておばあ さんの着物の裾へと手を伸ばし、白昼堂々、まさぐり始めちゃったのである。 おばあさんは...こちらの視線に気づいて、すこーし体をこわばらせたものの、 もうもう、 まっかっかでうっふーん状態になってしまっている。 (Have a nice day.) 年寄りの性について、最近はオープンに語られ始めているものの、こうマノアタリにすると、若者の性よりよっぽど生々しい感じがした。 私は決して否定はしない。いや、むしろ、うらやましい老後の楽しみだ、とも思う。 でも。でもね。 朝っぱらから駅前のベンチでヤルなって。 |