序章・・プロローグ

そこは、静寂に包まれていた。草が生い茂り、無機質な廃墟をすっぽり覆い尽くしていた。
かつて人々が住まい、そして偽りだが繁栄があった場所とはにわかに信じがたいくらいに。
もう、誰一人ここに住む者はいない。悪夢の始まりであったこの場所に。
ここは、ミッドガル..メテオ来襲より2年が経っていた..

そんなミッドガルの中を一人の男がさまよっていた。
男の名は「ゲイル」。追っ手から逃れるうちにここに流れ着いていた。
『生き延びてやる..復讐するまでは』
彼の罪状は殺人..爆弾による無差別テロだった。

ゲイルは少数民族の生き残りだった。
彼らは遙か山の奥でひっそりと何代にも渡って独自の生活様式で生きてきた。
彼らは豊かな魔胱の恵みによって厳しい自然環境の中で生きてきた。
険しい山々は自然の城壁としてそびえ立ち、誰も彼らの存在に気づく者はいないはずだった。
しかし7年前、ここに神羅カンパニーが突然訪れる。
彼らの目的はむろん魔胱炉の建設だった。ここでは高純度の魔胱が採取できたためだった。
歓迎せぬ来訪者に彼らはもちろん抵抗したが、圧倒的な武力に屈しせざる得なかった。
そして、魔胱炉が建設されると、彼らの生活は一変した。
神羅カンパニーは全ての魔胱を独占し、彼らが生きていくのに必要なわずかな魔胱の恵みすらも与えなかった。
当然の結果として反乱が起こる。だが、勝てるわけはなかった..
神羅カンパニーは反乱者を捕らえても殺すことはしなかった。
その代わり、彼らを魔胱の中に閉じこめた。そう、モンスターにしたのだ。
セフィロスが見たあのモンスターにされた人間と同じように。
最終的には彼らはモンスターにされるか、厳しい自然環境に倒れるかのいづれかだった。
やがて彼らは人知れず全て死に絶えた..はずだった。

しかし、ゲイルはただ一人生き残った。ゲイルは小さな村の生活に飽きたらず、村を出ていったのだ。
神羅カンパニーが訪れる半年前だった。
その後、彼は何の因果かミッドガルのスラムに流れ着いていた。
そして、2年前のメテオ来襲。彼は居場所を失い、村に帰った。
そこで彼が見たものは、廃墟と化し、誰もいない村の姿。そしてそびえ立つ魔胱炉...
彼の復讐は始まった..既に神羅カンパニーは消滅していたが、彼は神羅に関わる全ての人々に復讐しようとしていた。
彼の罪状は無差別テロだが、彼にとっては標的はその中の一人、神羅カンパニーの元幹部だった。
ほどなく犯人がゲイルであることが判明、そしてゲイルは逃走、ミッドガルに流れ着く...。

ゲイルにとって、ミッドガルでの生活は悪くはなかった。
かつてここに住んでいたため、生活に必要な道具は探せばいくらでもあったし、
生い茂る草は彼の存在を隠してくれた。
そして神羅カンパニーが残していった大量の武器弾薬も手に入れた。
このまま逃亡者として逃げ延びられる可能性は充分にあった。
だが、ゲイルは復讐を止める気は無かった。
そんな彼がどうしても手に入れたいものがあった。それは召還マテリア..
2年前、偶然彼はクラウド達の戦いを見ていた。そこで彼を驚かせたのが召還獣の圧倒的な強さだった。
あの頃はただ単に強さへの憧れだけであったが、今や復讐が生きる糧である彼にとって
それは目的のためには絶対手に入れなければならないものだった...