私がベンチャーズに興味を持ったのは割と浅くて１９９９年の夏でした。ビートルズ以前に一世を風靡したバンドが未だに活動を継続してるという事に興味を持ち一回観に行ってみようと思ったのが始まりです。

　それまでの私のベンチャーズへの知識と言えば、イトーヨーカドーで流れるインストバンドか寺内タケシに代表される三味線の音色のようなインストバンド位しか無く、実際に過去のベスト盤に入っている曲を聴く限りでも、その延長線上にある音楽という感じで理解していたと記憶してます。

　で、実際に観てみますと、それらの事は大きな間違いだという事に演奏開始直後に気付きました。演奏が上手いのは当然ですが、ドラムの音が濁らない割にはズンズン響いてきますし、サイドギターはまるでパンクバンドのようにゴリゴリと弾きまくります。そしてアコースティック音楽があったり、ボーカル付きの音楽を披露したり、各パートの楽器の見せ場を設けたり、観客席へ降りてきて演奏したりと、もう観てる方が色々な意味で圧倒されっぱなしでした。

　こんなバンドが５０００円程度で、しかも当日券で楽に観られるとなれば、私が毎年観に行くのも判って頂けると思います。上手く都合が付いた年は５回観に行った事もありました。

　私は楽器を演奏しませんが、ライブでオリジナルの曲をアレンジし、新しい「ベンチャーズの曲」として演奏してるのはよく判ります。また、初期の頃から演奏している曲でも、時代と共に少しずつアレンジが変わっているのも、今と昔のライブ盤を聴き比べれば明らかだったりします。それらの事を踏まえながら色々と資料を集めたり、昔のアルバムを買い足したりしてる内に、ベンチャーズといういうバンドは、バンドの核の部分は同じでも、それを包む演奏の部分は時代と共に変わっているという事が判りました。ちなみにここで私が言う「核」という意味は、メンバーという事ではなく、「スピリッツ」と解釈して頂けるとありがたいです。

　ただ、会場で体験した雰囲気が、ＣＤやＤＶＤからはその半分以下しか伝わってこないというのが、非常に困りものだったりしますね。それ故に、私が他の方に積極的にお薦めできない要因になってるんですけど．．．。

　ともかく、私の場合毎年ライブを観に行かないと夏が終わったという気がしなかったりします。今年も今日（２００８．９．７）観に行った事で、コミケから続いていた夏のイベントが、私の中でやっと終わりました。



ドン・ウィルソン：
　貴方の「テケテケテケ」サウンドが、アルバムで聴くのとはライブで聴くのとであんなに違うとは思いませんでした。楽しく演奏してるのがとっても見てて楽しいです。ディレイ使ったり、ゴリゴリと固い音を出したりする反面、歌を歌ったり、演奏中に客にピックをあげて握手したりと、常にお客を楽しませる事を第一に考える姿勢．．．最高です。

ジェリー・マギー：
　私は貴方のギターが聴きたくて観に行ってると言っても過言ではありません。ブルースを基にした音色がロックンロールであんなに哀愁漂う何とも言えない感じになるなんて、初めて聴いたときは衝撃的でした。昔からのファンにしてみれば、カントリーを基調にした初期ギタリストのノーキー・エドワーズの方が良いという方が多いと思いますが、好みの音色なのと初めて生でベンチャーズを観た時のギタリスという事で私はジェリーのギターの方が好きです。特にアコースティックで弾く「クラシカル・ガス」は生きてて本当に良かったと思える最高の音色だったりします。

リオン・テイラー：
　父であるメル・テイラーが急逝した為に、ドラムとして加入しましたが、貴方のきっちりと打ち鳴らすリズム音とパワフルな音色は、聴いててとても楽しいです。加入した初期は体力が足りなくて苦労していましたが、最近ではもう他の先輩メンバーをグイグイと引っ張る牽引役になってますね。ドラムは生が面白いというのは、ワイプアウトやキャラバンの途中に（特にキャラバンは１０分以上ドラムソロがある）組み込まれている演奏パートを聴いててよく判ります。父も偉大なドラマーですが、貴方無しでは今のベンチャーズは語れないです。

ボブ・スポルディング：
　前ベーシストのボブ・ボーグルが、硬めの音色で鳴らすのに対して、暖かみのある優しい音色で鳴らすのがとても印象的でした。代役としてステージに登場した時は、他のメンバーよりも目立たないようにと遠慮しながらステージで弾いていたのを今でも覚えてます。あれは貴方なりの気配りだという事がすぐ判りましたし、そんな性格が音にもよく現れていると私は思ってます。とは言え、ステージ以外ではずっとアルバム制作とかにも参加していた方ですから、息の合う演奏を聴かせてくれるので安心して聴いていられます。


　まったく、私の上の世代はこんな面白いバンドをこっそりと楽しんでいたなんて．．．ホントずるい話ですよ（笑）