知床初秋'98

 久々の知床。知床大橋周辺では羆が目撃できる確率が高いと聞いて、またポンコツジム君にむち打ってしまった。

 出発は午後8時半、岩尾別に着いたのは午前3時を回っていた。知床横断道路との分岐から知床五湖への道に入るとエゾシカがうようよといた。大きな牡,が道ばたで腰を下ろしてくつろいでいた。車が来ないのをいいことに、道の真ん中でヘッドライトを正面に向けても平気である。デジカメでは上手く写らなかったが8ミリで撮影はした。しかしあまりに緊迫感に欠け、至近距離で撮影できても逆につまらないものだ。道路に出てくるエゾシカやキタキツネに危害を加える人間はいないから、彼らも人前に平気で姿を晒す。観光客は喜ぶだろうが、これが正常な自然の状態なんだろうか。
 夜が明けるまで過ごそうと思っていた岩尾別川の河口には立入禁止で入れなかった。3年前、仲間と3人でカヌーを漕ぎ出した場所である。仕方なく五湖の駐車場で明るくなるのを待った。そして、いよいよ知床大橋に向かおうとする私に無情のゲート閉鎖!!なんということであろうか、林道は台風5号の影響でカムイワッカ付近に出来た斜面の亀裂のために期限未定の通行止めになっていた...。

 岩尾別温泉は無事だった
 またも仕方なく、岩尾別温泉に向かう。ホテル地の涯の駐車場の下にある無料の露天風呂だ。早朝にも関わらず宿泊客がすでに何人も入浴していた。

 まず三段の湯に入る。文字通り湯船が3段になっている岩風呂である。泉源は同じだが中断が一番熱く適温だった。
 更に奥には滝見の湯がある。数メートルの落差の滝を見ながらの入浴となるのだが、それよりユニークなのはここでは狸の××袋から湯が出ていることだ。その下には丸太をくり抜いた小さな湯船がある。昔よくガイドブックなどに載っていたヤツだが、今は朽ちかけて使われていないようだ。手を入れるとぬるく、やはり入れそうにない。
再び知床五湖へ
 十数年前、私がトーモロコシ売りのアルバイトをしていた場所にはログハウス風の立派なトイレが建てられていた。当時の知床ドライブインも建て替えられ、展望台が新設されている。ここからは五湖の一つ、一湖を臨むことが出来る。今年、TVで観光客が羆を見物しているシーンが放映されたが、その現場はここのようだ。

 一湖、二湖を歩いて廻る。美しい水鏡を見ることの出来る場所である。

 知床峠を越え、羅臼に抜ける。混み合う熊ノ湯を横目に薫別側から薫別温泉を目指す。相泊セセキの温泉にも行けば良かったと後悔したが、この時は薫別しか頭に無かったのである。

ジム君泥だらけ
 林道をひた走っていると「ここから先は行っちゃいかんよ」とばかりに2m位の高さのところにテープが張られていた。通行止めの表示は無いし、やけに高いところに張ってある。私は迷わずテープをくぐった。しかし数十mも走ると案の定、山側の土が崩れて道を塞いでいたのであった。一つ目の障害は2駆のまま難なくクリアした。2つ目、3つ目は水が浮いていたので4駆のLOWレンジにシフトしクリア。そして最大の難関が現れた。倒木が横たわり、砂防ダムのように泥を溜めている。

 クルマから下りて確かめると長靴がズブズブと沈む。倒木は直径25pほどもあろうか、ここを下りるのは何とか出来そうな気がした。その先を偵察すると次のコーナーまでは、荒れてはいるが走行には問題は無い。だがその先はどうなっているかは判らない。もし土砂が完全に道を塞いでいる場所があれば引き返さなければならない。そうなったとき、この倒木を逆に乗り越えていくのは無理かも知れないと思われた。

 私はトライを諦め、引き返すことにした。以前ならスタックするまで突き進んだに違いないが、私も大人になったものだ!? 後で聞いたところによると、薫別温泉には何処を通っても行けなくなっているらしかった。

 台風5号の傷跡はあちこちに残されているようだった。続いて向かった川北温泉も林道の入り口で止められていた。今日はもうメチャメチャである。すっかり気落ちした私はもう帰途につくことに決めた。
 330゜の展望で知られる開陽台を経てからまつの湯で入浴。釧路川河口を経て屈斜路湖畔のコタン温泉和琴半島露天風呂へ。そして津別峠を通り帰帯した。

1998.9.21


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