内田康夫プロフィール
 1934年11月15日、東京都北区生まれ、現在は長野県軽井沢に在住。

 コピーライター、CM制作会社社長をへて、83年から作家専業になる。80年に長編第1作「死者の木霊」(自費出版)で衝撃デビュー。

 この作品が朝日新聞読書欄で紹介されたのを契機に「本因坊殺人事件」「萩原朔太郎の亡霊」などで脚光を浴びる。

 1982年に「後鳥羽伝説殺人事件」で初登場した名探偵・浅見光彦は、その後、最も人気の高いシリーズ・キャラクターの一人となる。

以後、「遠野殺人事件」など長編を中心に次々と作品を発表、「旅情ミステリー」の第一人者となる。

人気の浅見シリーズは、「ユタが愛した探偵で88作目となる。

浅見光彦のほか岡部・竹村警部、橋本千晶のファンも多い。

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 内田先生は、「軽井沢のセンセ」として作品に登場することがあるが、平成5年に「浅見光彦倶楽部」を設立し、ファンとの交流をはかっている。

会員数は、平成10年9月現在で10,000人余りにも及んでいる。

浅見光彦倶楽部の詳細をお知りになりたい方、及び入会をご希望の方は、返信用の封筒(宛名明記・80円切手貼付)を同封の上、次の住所に送付すると、折り返し、申込書・規約等が送られます。

〒389−0111
長野県北佐久郡軽井沢町長倉504 浅見光彦倶楽部事務局

 会員の特典は、年4回(季刊)の会報「浅見ジャーナル」が送られるほかクラブハウスでのセミナー、ミステリーツアーなどに参加することができます。

 

[朝日新聞書評]抜粋

 「死者の木霊」は意外性やドンデン返しを期待すると肩すかしをくう。アリバイ・トリックにしても、最も古典的な部類に属するものだが、ケレン味のない書き方が好感を与える作品である。

 かつて社会派推理小説のブーム、といわれた頃の松本清張や水上勉の作品を思い出したが、それらに比べると、加害者側、ことに事件に絡まる女性の人間像が十分書かれていないうらみがある。

けれども、作者のねらいはむしろ探偵側の真相解明へのいちずな執念を描くことにあって、その作者の意図が作品の背景となっていて、一本筋の通った骨太の作品に仕上がっている。

 地道な捜査活動をリアルに描く推理小説のタイプにも、探偵側に比重の置かれたものと犯人側に力点の置かれたものとがある。本書はその前者に属する作品だが、読みながら、クロフツのことが思い出された。

クロフツの長編はおおむね前者のタイプだが、後者の小説を書く場合には「クロイドン発12時30分」などのように倒叙形式を用いている。

 この作家の評価は第二、第三の出来にかかってくると思うが、クロフツの残した足跡が、一つの指針となるのではあるまいか。

「朝日新聞 1981年3月8日朝刊」