「虚霊」は天上の音、
「虚空」は空中の音、
「鈴慕」に至って
はじめて人間の音で
あります。
行けども行けども地上の
旅を行く人間の哀音、
その何れより来たって、
何れに行くやを知らず、
萩のうら風物さびしく
地上を送られ行く人間が
天上の音楽を聞いて、
これに合せんとする
あこがれがすなわち
「鈴慕」の音色ではないか。 |
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無限の空間のうちに、渺たるうつせみの
一身を歩ませて、限り無き時間の波路を、
今日も、昨日も、明日も、明後日も、
歩み歩みて、曾無一膳のわが身にかかる
大能の情の露に咽ぶ者でなければ
「鈴慕」の曲の味わいはわかるまい。
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心は高く霊界を慕えども、
足は地上を離るること
能わざるそのあこがれ、
耳に虚空の妙音の天上
にのぼり行くを聞けども、
身は片雲の風にさそわれ
て漂泊に終る人生の悲哀。
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けだし、最初の人は、霊感うちに
湧いてこの曲を作り、第二の人は、
曲そのものを学んでその霊感に
触れ、第三の人は、曲そのものの
ようになりて胡蘆を描く。
大菩薩峠 鈴慕の巻より
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虚霊 宇宙の霊性を具現すると伝えられる
ミクロがマクロを呑み込んでしまうという、抽象
が最後に具象になる、通常の音楽では感じ難い
経験をさせて貰った。 星川京児氏談
邦楽ジャーナル 2003・11月号 CD Reviewより |
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