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【Bargain Sale】

 まあるい月がぽっかりと空に浮かんでいる、土曜日の夜。
 虫の音だけがかすかに聞こえるだけの、もの静かな秋の夜長……な筈なのだが。

「う〜ん」
 ここ(梨本家)の2階にあるつぶらの部屋からは、怪しげな(笑)うなり声が聞こえてくる。
「う〜〜〜ん」(汗)
 机の上に置かれた1枚の紙。
 つぶらは、それを穴が空くかと思うほど見つめながら、何かを考えに考え抜いている様子である。
「う〜〜〜〜〜〜〜ん」(大汗)
 乙女の悩みの元は、近所のデパートが配った明日の特売品チラシ広告だった。

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九ッ塚センタービル(C−GURA) 開店5周年記念特価品

 「CASIO・G−SHOCK 
   2000年シドニーオリンピック公式モデル」(色:白、ピンク)
     3980円!!  [おひとり様、1ケ、1回のみ限定、総数50ケ]

 「たれぱんだ トイレットロール」
   (ダブル30m×12ロール)
     98円!!  [おひとり様、1ケ、1回のみ限定、総数200ケ]

 5000円以上お買い上げのお客様先着100名の中から抽選で10名様に、
     なんと!「500円玉つかみどり」イベントへご招待!!
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[※作者談:ホントにデパートのチラシなのか、この内容は(笑)]

「よおしっっっ!!!」
 突然、何か決心したように両手の手をグッとにぎりしめた。
「これだよ! やっぱり、これしかないよ! 絶対にGetしちゃるわ!!」
 自分に言い聞かせるように、つぶらはメチャメチャ気合を入れまくる。あんまり大声出すと、ご近所に迷惑ですって(汗)。
「そうとなったら、明日は早起きしなくちゃ。寝よっ」
と言うな否や、そのままベッドへもぐりこんでしまった。

    ■ ■ ■

翌日。九ッ塚市駅前:九ッ塚センタービル。

 前日のチラシの効果に加えて、秋晴れの日曜日ということもあり、ビル内は大勢の買い物客でごった返している。
 その雑踏の中に、われらが高屋敷昴の姿があった。
「ったく、たまの休みなのに、なんで親父のために買い物せにゃならんのだ」
 日曜の朝から父にたたき起こされた高屋敷は、少々ご機嫌斜めであった。
 それでも、頼まれたお目当ての品物を探して、フロア内をうろうろする。
「しっかし、今日は妙に客が多いぞ。あそこじゃ、レジに長い行列作ってるし……って、あれ?」
 その長いレジ行列の中から見覚えのある人影に気が付く。
 トイレットーペーパーのパックを胸にだき抱えて、鼻歌が出るほど満面の笑みで喜んでいる……。

「おい、はいぱあ仮面じゃないか?」
「げげっ!! 高屋敷、どーしてこんなとこに――」
 よりによって一番見つかりたくない相手に声をかけられてしまい、あわてふためくはいぱあ仮面as梨本つぶら。
「そんなことより、オマエこそ何やってるんだ? こんな休日に制服着て、しかもトイレットペーパー抱えて」
「いや、その…………コレすんごく欲しかったんだよ〜〜ハハハっ」
 照れ笑いで、なんとかこの場をゴマかそうと必死の様子だ。
 (だって、はいぱあ仮面とつぶらで2回も行列に並ぼうってつもりだったなんて言うワケにいかないじゃん)
 一方、高屋敷はレジ前に貼ってあるチラシと手にしているトイレットペーパーを見比べて、ピンと来た。
 (ははぁ。はいぱあ仮面とつぶらで2回も行列に並ぼうってつもりだったと言うワケだな。アイツらしいな)
 一瞬だけ、高屋敷の顔が優しくほころんだ。が、すぐに真面目な風紀委員長の顔に戻る。

「おい、はいぱあ仮面」
「な、何だよ」
 何か突っ込まれるのかとたじろぐ、はいぱあ仮面。
「オレが代わりに並んでやるから、お前はさっさと家に帰れ」
「エッ? でも――」
「こんなところを新聞部のヤツらに見つかったら、それこそ大騒ぎになるぞ」
「ん〜。たしかにそれはそうだなぁ」
 高屋敷の思いがけない言葉にやや戸惑ったが、もっともな指摘に納得する。
「オレが並んで買った分は梨本に渡しておいてやるから。な、分かったな」
「……うん、分かった」
 思いやりのある行動に、はいぱあ仮面の優しい笑顔が広がっていく。
「それとだなぁ、」
「ん? まだ何かあるのか、高屋敷?」
いぶかるはいぱあ仮面に、彼は彼女の肩を引き寄せ、耳元でこう呟いた。

「アイツ(梨本)にも半分、分けてやれよな」(Wink☆)

    ■ ■ ■

P.S.
 結局、高屋敷はトイレットペーパー2パック買って、つぶらのもとへ届けました。
 もちろん、はいぱあ仮面2号に変装して、もう1パック買ったんです(笑)。

Sept. 19th '99 written by さとう はじめ

《《《後書き》》》
 えー、お楽しみ頂けましたでしょうか?
 前回のSSで、「ちょっと高屋敷かわいそうだったね〜」という感想を
東京ビッグサイトにて(笑)頂戴しましたので、少しだけ彼をカッコ良くしてみたつもりです。
 これでも足りない(笑)方は、いましばらくお待ち下さい。

 素敵なキャラを勝手にお借りしています。やや原本と異なるような性格付けはご容赦を(_ _)。>校長先生


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