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Quarterly Magazine Hi-Fi Index |

 



 長旅お疲れさまでした。

 タイトな移動スケジュールの中、お声をかけていただきまして、それにまた今回もすっかりごちそうになってしまいまして、本当にありがとうございました。ただ私が合流させてもらっていた間、皆さんの行動予定を制限させてしまっていたのではないかと思い、恐縮しております。
 じつはあの日の午後、当初予定していたデトロイト行きのフライトはオーバーブック状態で、スタンバイの僕はあっさりBumpされてしまい、30分後のミネアポリス便に飛び乗りました。自宅への到着は少々遅くなってしまいましたが、移動時間中、例のエリオット・へスターの「機上の奇人たち」、たっぷりと楽しませていただきました。どれも思い当たるような場面ばかりで、たまに実物のフライト・アテンダントの方にチラチラ目配せしながら、ニヤニヤ読んでいました。さっそく東京の友人たちに推薦させてもらっています。

 先週は少し忙しくて、火曜日にはコロンバス、木曜日はルイビルに出向いておりました。引越しの際に何が入っているのか判らないようなカセット・テープがたくさん出てきて、ドサクサ紛れにこちらに持ってきていたので、そうした時に「棚から一掴み」して聞いています。

 ルイビルへのケンタッキー州71号線、農場や菜の花畑の中を南にひたすら退屈な・どこまでも単調な景色の中をウンザリした気分で走っていたとき、思いがけず耳に飛び込んできたBeckの「Load Only Knows」。5年ぶりくらいに聞いたのですが、いやはやコレが強烈にハマってしまいました。Willin'みたいなスライドギターにレイドバックしながらも、時折絶叫したくなるような中西部の閉塞感・危なっかしさに対して何かが共鳴したのでしょうか。それともどの局も同じ曲ばかり繰り返しかけていたカーラジオに、耳がふやけていた反動でしょうか。大人のおもちゃ箱をひっくり返したような発狂スレスレの音が、こんなに心地よく響くなんて。ここアメリカの人たち、皆やたら元気そうだし、星条旗掲げて気を張っているように見えていたのですが、じつは薄々感じている限界感や拭いきれない倦怠感を掻き消したいのか、それともそんなことを感じていること自体に不安なのか、そんな感情をこんな混乱した音楽で共有していたのかもしれませんね。

 そういえばあの晩家に戻ってStarbuckの「Moonlight Feels Light」についてallmusic.comで調べてみたら、あの曲が収録されているCDをじつはボク、持っていました。しかもあの時にもう一曲、Music Rescueをお願いしていた「I Don't Wanna Change Your Life」ってフレーズの、なんとその曲も同じCDに続けて収録されておりましたよ。まあビックリしたのなんの。まったく自分のバカヤロぶりにあきれかえってしまいました。

 Rhinoから出ている70年代シリーズ「Have A Nice Day Vol.18」の「Moonlight Feels Light」の次に入っているイングランド・ダン&ジョン・フォード・コ−リーの「I'd Really Love To See You Tonight」(「秋風の恋」でしたっけ)。これでしたよ、これ。長年思い焦がれて探し続けていたのは。灯台下暗しとはこの事。買ってばっかりいるけど、ちゃんと聞いてるの?というカミサンの指摘ももっともだと、しばし反省いたしました。

 今週の月曜日、Memorial Dayの日にはダウンタウンでEaglesのコンサートがあり、ちょっと$高くついたのですが、一人で予定も無かったので観に行ってみました。
 結論から言うと、行ってよかった。楽しかったです。
 まだ外は明るい夜8時過ぎに開演。まずは「Long Run」。ドン・ヘンリーはいきなり立ちマイクでしたよ。え?あみん?って感じ。だって我々世代が見慣れた彼らのライブ映像って、少しセピア色がかっていて、夕陽の暮れかかった屋外ステージでドラムを叩きながら必死でマイクに首を伸ばして歌うドン・ヘンリーの姿。それが、摺込まれているものですから。松永サンなら言わんとする事、わかってくれると思うんですけど。やけにプロの歌い手風な彼の立ち振る舞いに、少々意外な第一印象を受けたのでした。
 で、次がグレン・フライの「New Kid In Town」。あらためてイイ曲ですね、これ。ダリル・ホールに捧げられて書かれた曲だそうですが、なるほどライト過ぎずメロウ過ぎずの名曲。ジョー・ウオルッシュはさすがにヴギーなR&Rでは枯れたおつな風味を醸し出しておりましたが、服装がひどかった。見れたもんじゃありません。豹柄のウインドブレーカーに白黒ストライプのパンツ。どっきりカメラのレポーターみたいなヘルメット。みうらじゅんがよろこんでネタにしそうな雰囲気。でもゆるくて、悪そうで、酒臭そうでいい感じなんですけどね。

 観客席の親父さん達の大半のお目当ては、どうもこの人だったみたい。長髪のティモシー・シュミットが一番ミュージシャンシップ漂うというか、タイトな佇まいがカッコよかった。とりわけ彼の「言い出せなくて」(これもいい邦題ですね)、個人的に大好きなもので。じつは今でも僕の「ギターは泣いている」的名曲の第一位です。
 他にも制作中だという新譜の中からゴスペルタッチの新曲を演ったり、ランディ・マイズナーの代わりにフライが「Take It To The Limit」を歌ったりで11時過ぎ。なんせ全曲知ってるから盛り上がります。

 アンコールの一発目は「Sketches Of Spain」みたいなトランペット・ソロから導入された「Hotel Califronia」。(どこか「Baby Come Back」みたいな心地よい横揺れでした。)その後は「Heartche Tonigt」やら「Life's Been Good」、「Dirty Laundry」とオヤジロックの真骨頂連発。骨太だけどファンキーで。たまらない快感でした。
 この頃にはもうレイディース&ジェントルマン、おとっつあん&おっかさん総立ちですごいのなんの。斯く言うボクも、その頃には足元のバドワイザーが何本目だかもうわからなくなって。アンコール最後の「Desperado」では、暗闇に一本のスポットライトで照らされて、まるでマイトガイみたいなステージアクションに、官能的な鼻声でドン・ヘンリーがキメテました。凄い声援。ほとんどのおばさま達のお目当てはやっぱり彼だったようでした。

 12時近くなって外に出たら、みんな川沿いの道を風を浴びながら、気持ち良さそうに歩いていました。ボクもこちらに来てから、こんなに満ち足りた気分になったのは初めてだったかもしれません。引越し以来、週末返上でいろんな用事に忙殺される日々が続いていたので。

 6月には松井の来るヤンキース戦とか、コロンバスの野外ホールでニール・ヤング、それに近所でリトル・フィートが演るみたいなので、また是非足を運んでみようと思っています。
 少しずつ楽しみを見つけて何とかやっています。
 では。皆さんもどうぞ良い週末をお過ごしください。

追記
 レッズ対NYヤンキース戦、観に行ってきました。今年オープンしたばかりのGreat American Ballpark(凄い名前!)に。一塁側内野席の15列目くらいだったので選手達の様子は間近にうかがえたのですが、ちょうど松井の調子はどん底状態にあり(その後はご存知のようにひたすら上向きなのですが)、打席に立っていてもマイナスのオーラが漂うというのか、球場全体どうせ凡退でしょという雰囲気で彼を包んでいて、ちょっと気の毒でした。

 試合もグリフィーのホームラン等でレッズが大勝。オハイオ川に何発も花火が上がって、地元サポーターたちはご満悦の様子でした。
僕はアンチ巨人派なのですがここ数年のヤンキースは好きで、ジーターやジアンビ、ポサダ以外にも、カープ上がりのA・ソリアーノや"Rockin"ロビン・ベンチュラなどが近くで見れて興奮しました。
 欲を言えばジョン・ルーリー似のアンディ・ぺティットが投げた日に見たかったのですが。 
 松永さん、今年は20年ぶりにいい年になりそうですね。







これがMr.Redくん


ホテルの部屋にて

To 嶋田歩
 アメリカに本社を持つ外資系企業にお勤めの嶋田さんは、今年からアメリカに転勤。もちろんそれ以前にハイファイではなんどもお会いしているし、お酒をご一緒したことも。こんどはアメリカの買付中にどこかでお会いして、一杯やりたいですねとお話ししていたら、さっそくその機会を持つことが出来ました。仕事の終業後には、それぞれにまっすぐ家路につくことが当たり前の毎日。仲間が集ってわいわいと語り合いながらビールを乾杯という習慣がないアメリカに暮らしていると、懐かしい日本での毎日が思い出されるということでした。久しぶりの心おきないパーティ(宴会?)を楽しんで戴いて、なによりです。そしてその後にいただいたお便りがあんまり素敵だったので、そんな感じで原稿を下さいとお願いしました。嶋田さんには、アメリカ暮らしの日々を届けてもらいます。(大江田)

 
DAYTON OHIO 2003 |1 |
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