送信アンテナ編   

 
Aki スペシャル(送受信用)

(上はK9AJ/KH5Kキングマンリーフで使用中AkiSpecial)

 

「Akiスペシャル・アンテナ」 のこと

 ON4UNの著書「LOWBAND DXING」やQSTなどにも紹介されているJA5DQH_Akiさん製作の1/4波長のバーチカルアンテナだが、随所に工夫がなされている。又、その性能は1988年に行われたDXペディション「キングマンリーフ&パルミラ島」ペディ(K9AJ/KHK5,W0RLX/KH5)に本人が持参、抜群の飛びっぷりで世界中を驚かせたことは有名である。このアンテナは移動用だけでなく固定用にもよく使われている。原型は奈木さんが自宅で使用してJA初の160mDXCCを完成させた1/4波長のバーチカルアンテナでありその経験が土台となって開発されたものである。以下はご本人のJA5DQH奈木氏の解説である。


 

お問い合わせの私のAki Special ですが、特別なものではなく単なる逆Lです。最近ではかなりの局がフィッシング・ポールを使用してアンテナを製作されておられるようですが、多分釣竿を使用したのは私は最初の部類に入ると思います。ご存知のように私は160メーターを専門に1970年からやっておりました。その時は今ほどアンテナに関しての記事もなく、特にローバンドで良く飛ぶアンテナというのはまだ未知の世界という感じでした。私は160メーターに転向する前に80メーターのDXもやっていましたが、当時中学生だった私には高いタワーや自立のバーチカルは、夢のまた夢でいかにしてDXに電波を飛ばすかが寝ても覚めてもの課題でした。Hi 80メーターでは、庭にある松の木にそわせて竹竿を2段継ぎにして、垂直部を25メーターほど確保して、給電点を高さ4−5メーターにしてラジアルを確か6−7本張っていたと思います。(今はやりのエレベーティッド・ラジアル、そのものです)このアンテナの飛びは素晴らしく、当時アクティブだったK4GSU(N4AR)W1EVT(私の記憶では後にKF1Zになり、最近またバニティーで W1EVTに戻った)達イーストコーストや、ヨーロッパと結構QSO出来ていました。その後160メーターに転向してからも、何とかバーチカルのアンテナを立てられないものかと常に考えておりました。160メーターのWAC完成までに5年かかり(1975年完成)このままでは到底DXCCなど無理と感じていました。何とかして打ち上げ角の低い電波を出さないとカントリーの多いヨーロッパやカリブ、南米とのチャンスはないと思い、思案していましたが、いかんせん4分の1波長で40メーターもあるので垂直部の長さを確保するのが至難の業で、行き詰まっていました。当時(WAC完成当時)、160メーターのアンテナはダイポールを使用していました。そのせいかパシフィックや東南アジアでは私の電波はかなり強力らしく、気分の良い思いを随分したものです。しかし、ヨーロッパや南米まではどうも思うように飛んでいかず、垂直系のアンテナをいろいろ実験していましたが、垂直部20メーターほどにコイルを入れて短縮したりしましたが、結果は余り芳しくありませんでした。外国でも丁度時期を同じくして、160メーターの垂直アンテナの話題が持ち上がり、当時のW5RTQ(現K6SE)がシャントフィードシステムと名づけたタワードライブのアンテナをQSTに発表したりしました。それは、タワーから電線を数十センチ離したところに引き降ろしオメガマッチングで給電したものです。また、W9UCWMinooka Specialと名づけたバーチカルを発表しました(彼が作ったMinooka SpecialVK9ZR Mellish Reefで使用し160mをはじめローバンドで大活躍しました。私は実際にそのアンテナを彼の家で見ましたが、結構コンパクトでFBでした。また、このアンテナの改良版は最近BCS Battle Creek Specialという名でいろいろなペディションに活躍しています)。しかし、いずれにしても、基本的には20-40mのタワーを利用した本格的なもので私には現実的ではありませんでした。

 

 私は1981年に50日間かけてアメリカのローバンダーの友人達を渡り歩く旅行をしましたが、それは私がアマチュア無線、特にローバンドに対する熱意を更に深める旅になりました。今はなき160メーターの父W1BBを始めK2GNC, N4AR,K5GO, W5SUS, K6SE, W6RW, WA7GCI(KG7D), W8JI, W8LRL, W9UCW, W0SD,K0ZZなど、当時160メーターで世界に名を轟かせていた局はほとんど、実際に自分の目で見て、そして彼らから直接話を聞きました。当時の160メーターの世界のトップレベルと日本のトップバンダーとのレベル差はそれは大きいものでした。

W5SUS.jpg (36029 バイト) K6SE.jpg (31660 バイト) WA7ILC.jpg (34189 バイト) W8JI.jpg (25157 バイト) W8LRL.jpg (32753 バイト)

W5SUS  John

K6SE Earl

WA7ILC Craig

JA5DQH Aki &

W8JI Tom 

W8LRL  Wal

パワーにしても、3CX-3000A7 や8877x2がいたのには驚きました。アウトで5キロ以上。今、この設備を聞いても何の驚きのありませんが、1981年の事ですから彼らの力の入れ方は大したものです。私は4 -1000Aのシングルでしたから、1970年代、80年代初期の当時としてはJAの中ではそんなに小さい方ではなかったはずです。(ちなみに私の今の160の設備は、球のぼけたTL-922です。情けないHi)そして、彼らの送信用のアンテナはほとんどの局が垂直系でした。大体の局が30-40mのタワーにシャントフィードシステム、それに50から160本ほどのグランドラジアルというのが標準的でした。また、受信用には申し合わせたようにビバレッジアンテナを使用していました。しかし彼らも最初からそんな設備を使用していたのではなく、いろいろと研究しグレードアップしていったのです。グレードアップする過程でみんな必ず一度は、逆Lを経験していますが簡単な割に良く飛ぶというのが、大体の意見でした。

特にW1BBは、逆Lはシンプルで垂直系のアンテナとしてベストだと力説してくれました。彼の家には2泊させてもらい、奥さんにも優しくして頂きましたが、何十回ものスケジュールにも関わらず、JAとはQSOを果たさないまま他界してしまったのは、今でも心残りです。

約2ヶ月の旅行を終えて、日本に帰り早速アンテナの実験に再度取りかかりました。、垂直系のアンテナをいかに高く(垂直部を長く)上げるかが問題でした。そして、考え出したのがAki Specialと名づけたグラスファイバーの釣竿を使用した垂直アンテナ(逆Lアンテナ)です。大体、波長の60から70パーセントの垂直部があれば、フルサイズのバーチカルと何ら変わらない事が7や3.5メガの実験で分かっていましたから、垂直部は25メーターほどあれば良いという事です。

私の場合最終的には、5.5mのガス管、その上に5mのアルミパイプ3段つなぎ、そしてその上に9mのグラスファイバーの釣竿をつないで、垂直部28mほどかせぎました。そしてラジアルは4分の1波長の電線や適当な長さのアンテナ線合計15本ほど、それに何本かのアース棒との伴用でした。マッチングはいろいろ実験をしてみましたが、最終的には何もせず同軸をじか付けしています。ですから、フイッシングロッドを使用し垂直部を出来るだけ長くし、余った部分を水平もしくは下方に引っ張った4分の1ラムダの逆LアンテナをAkiSpecialと呼んでいます。(1981年、奈木さんから頂いた当時のスケッチ)へ

水平部のエレメントには自重の軽い1.0ミリ程度のエナメル線やホルマル線が適当です。そして、その先にテグスや水糸をつなぎ、立木や電柱に伸ばします。調整方法は至って簡単で、垂直部と水平部の全長を4分の1波長程度にし、1910KHzで送信し、どこに共振しているかをみます。(多分下の方に共振しているはず)そして、適当にカットし(グラスファイバーの釣竿が上部の付いているので、端を引っ張ればエレメントに手が届くはず)再度、SWRをみます。簡単に1910KHzプラスマイナス50KHz位にくるはずですから、そうなると後はエレメントをカットせず、エレメントを引っ張るテンションを変えて周波数を変化させて同調周波数を合わせます。強く引っ張ると周波数が下がり、引っ張る力を緩めるとエレメントは釣竿の力で上に上がりますので、共振周波数は上がります。

 

私は、このアンテナを使用し、1985年に 160m - DXCC を完成し、世界で No.75 アジアではファーストの DXCCを得ました。。

ペディション用のAki Special は、垂直部のアルミパイプを1.4メーター程度のジュラルミンのパイプを7段つなぎ、その上に9メーターのフィッシングロッドを足したもので、上記ホームで使っているもののスケールダウンです。この手のアンテナは、飛びの全てはグラウンドの状態で決まると言っても過言ではありません。1988年に実施したキングマン・リーフやパルマイラのDXペディションの時は、まさに海の上に設置し、ラジアルは数十本を海中の中に敷設しました。あの当時運用されていた方は記憶に残っているかも知れませんが、本当に抜群に良く飛びました。しかし、先日のテモツのペディション H40AAでは、私が運用したCWサイトは海岸よりかなり離れた小高い丘の上で、グラウンドの状態が極めて悪く、うまく動作しませんでした。運用していて、自分の信号の強さが(弱さが)分かりました。応答してくるタイミングやパイルアップの大きさ等で、すぐ自分の電波の状態が分かります。アンテナを立てた日は、ラジアルは4本、地上から約2メートー程浮かしたエレベーティドラジアルでした。しかし、余りの応答率の悪さに閉口し2日目にグランドラジアルに変更しました。(少しマシになったような気がした)テモツのペディションは目的が1局でも多くの局にニューカントリーを与えるという大目標がありましたから、21メガを中心に上のバンドに時間をかけましたので、今回は残念ながら160メーターは運用時間も少なく、アンテナにも力を入れませんでした。

以上、私のアンテナの経緯なども含めて、まとめてみました。もし、ON4UNの Low Band DXing をお持ちでしたら、逆Lアンテナのところと、DX Pedition用アンテナのところに私のアンテナが紹介されていますので、ご覧ください。

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