長遅延エコーについて

 

English
 

 電波は一秒間に地球を七回半まわると言われております。ほとんど瞬時です。

電離層より遠いところから飛んでくる電波、衛星中継などはエコーがかかって反響したように聞こえます。月面反射だとしても数秒の遅れです。

それがローバンドで5分後や10分後あるいは1時間遅れでエコーが帰ってくる、と言われたらあなたは信じますか?「そんなバカな!」と思うでしょう。

 自分の出したCQを,数分あるいは数十分後に受信したことがあり、誰かのいたずらだろうかという経験が160m/80m運用者の間で散見されていました。しかし、誰もが半信半疑でそんなバカな、と正面からは取り上げようとしませんでした。

これから書くことは全て真実の話です。信ずるか信じないかはあなたの自由です。

 

2001年に、TZ6JA小原実氏により、ロ−バンドの伝搬について、興味ある解説記事が月刊フアイブナイン誌に掲載されました。

ミーティング等で小原氏とお会いしたときに、自分のCQを遅れて後から聞いた話をしたところ、「長遅延エコー」というのがUSAの文献に報告されている。でも10分も1時間もと言うのはなかった、とのことでした。その後小原氏がJA7SN金森氏と会ったとき(ご両人は共に盛岡市出身)同じような話を金森氏からも聞かされたので「何かあるのかな?」という思いはしたとのことです。

 

 私は金森氏とはDXミーティングでお会いすることがあるのでその件を話すと金森氏も「80mで自分にはあれだけ頻繁に経験できているのに、他の人は経験した人が居ないのか、誰も信用してくれないんだ、やっと話が判る人に巡り会えた」云々ということで、もちろん私も同じ思いでした。

 その後になって小原氏もこの問題に興味を示し、フアイブナイン誌にその経過と観察を元にした記事を2003年1月号と3月号に執筆されました。

 

ところで、何とJA7SN金森さんがその自分のエコーの一部をラジカセに録音されていたのです。これは凄い。

そのテープが金森さんから送られてきて聴きました。

聴いてみて、鳥肌が立つ思いでした。まさしくそれは「長遅延エコー」そのものでした。

(録音ファイルはここ)

金森さんは、

@1993年12月25日1305ZにQSOした自分の電波のエコーを翌6日0702Zに受信した。

A1998年1月15日1217ZにQSOした自分の電波のエコーを翌16日の1340Zに受信した。前の日のログの記載通りにエコーは返って来ている。

B1998年2月24日1210Z頃にNK8B,W8UVZなどとQSOする自分の電波やCQDXを出した自分ののエコーを50分後の1300Z頃から30分に渉って受信した。 周波数は金森さんの送信した周波数3504Khzと同じ。

 

以上3例を小原氏にレポートされておりますが、録音されたのはBの部分を約7分間です。

金森さんの話によれば、とっさに手許にあったテープレコーダをスピーカーの前に置いて録音したので部屋の音が入っているし時折テープレコーダの動作を確かめたり、受信音が聞きやすいようにダイヤルをまわしてピッチを変えたりしたので受信音全てを録音したのではないとのことですが、それにしても録音を撮ったという事実には頭が下がります。この録音を聴いて、正に青天の霹靂だと、小原氏がつぶやいたのはさもありなん、と言ったところでしょうか。

 

テープを聴いて感じたのは、

160mバンドでの現象と同じだが電波の強さは予想外で、160mと80mの伝搬の違いと言えばそれまでだが長遅延エコーの起きやすいのは80mのほうかも知れない。

エコーは、送信した人にしか聞こえないのではないか、他の人も同じ電波を聴くチャンスは多い筈なのに何故かレポートがない。現に同じ周波数でJA8DNV斉藤さんがCQDXを出すのは斉藤さんには金森さんのエコーが聞こえていないからだろうと思う。

この記事掲載や録音をWEBで公開したところ、多くの方から感想や体験レポートが寄せられました。それらを逐一小原氏に報告し、最終的には「長遅延エコー(LDEs)再訪」と題して月刊ファイブナイン2004年6,8,9月号に掲載されました。

 

ここに小原氏及び月刊ファイブナイン草野編集長の御厚意により、その要約を掲載します。

 

 

 

「長遅延エコー(LDEs)再訪」(要旨)

 

 

小原  実(おばら まこと)
TZ6JA,exJA8SLU

本稿は掲記同タイトルにて、東京で出版されているDX月刊誌「フアイブナイン」2004年6,8,9月号の日本語による投稿の要約です。ここで述べる主なことは、長遅延エコー(LDEs)は実在し、hoaxでもミステリーでもなく、その遅延時間が非日常的な長さであろうとも、物理現象であることは明らかで、そしてその反射源は太陽系惑星間電離層(仮称)であろうというものです。

LDEsには色々な種類があり、ここでは1.8/3.5MHzで起こっている長時間のものに限定して、日本アマチュア無線家による1993−2000年の報告を中核として研究、検討した。その内容は付表にある。
これらのLDEsの体験者は、我が国のDX界ではこの道30年の、トップバンダーやローバンダーとして知られている以下の人たちです。
金森,JA7SN; 坂入,JA1HQT; 萩島,JA1CGM; 斉藤,JA8DNV; 中西,JA3ONB,の各氏です。

 斉藤氏を除き複数回の受信で、中西氏は1回の送信に対し2回の受信、つまりダブルエコーを受信しています。金森氏は複数回LDEsを再現させています。再現させるということは、人間の抱く錯覚から現実を区別するための不可欠な一歩であります。

 これらはUL7GWを除き、長い遅延時間を示し、20分から82時間に至る。これらは距離に換算すると1.8天文単位(AU;1.496×10の8乗Km)から297AU迄の往復距離に相当する。これらの反射源は小惑星帯とカイパーベルトの小天体が作る磁気テイル群であると考えられる。
 受信できる季節は10月から2月に限られ、送信時間は晩20−22地方時(LT)に限られ、受信時間は16−06LTの夜間である。受信信号は弱いが安定した強度で平均としてRST559ぐらいで聞こえるがSメータを振らすには至らない。いつでも受信できるものではないが、受信できるときはある期間に集中する。時々信号の乱れやドップラー偏移を、そして二重エコーを示すものもある。受信信号の持続時間は最高20分に達する。
 LDEsの発生時期は太陽黒点活動ピーク1−2年後からそこにかけてと、ピーク1−2年あたりに対応する。地球では、LDEsの発生は地磁気異常の回帰性ダブルピークに対応し、これは太陽で発生するCMEの1/6にだけ対応する。残り5/6は地球には影響を与えないが、惑星間電離層の形成には寄与すると考えられる。

 LDEsの反射源は天文学的に決っているらしい。それは特定のベルト、特定の天体群のある場所に位置している。付表で示したように、T型を除くと、U、V型のLDEsは全て微少天体やデブリと呼ばれる天体の破片の多く集まるところで、その中でも平均共鳴天体群と呼ばれる特定のベルトである。
その反射源は惑星間電離層とよぶべきもので、黄道面に直角に、この平均的共鳴天体群のベルトを中心として屏風状に存在するものと考えられます。その小天体群はいずれも彗星の始原型となるものです。惑星間電離層という述語はありません。その概念もなく、それは今まで必要とされていなかったからで、これが無いとLDEsは宙に浮いたままです。この電離層は実在するのだと思われます。その傍証は数多くあり、その中で彗星のプラズマテイルがその鍵を握っています。

 前に述べた通りLDEsはいつでも発生するものではなく、或る時集中的に発生するパターンがあるようです。その発生の鍵は太陽のCME、太陽フレアーが握っています。太陽活動ピークの1−2年前と、ピーク後1−3年後からボトムにかけてです。季節は冬を挟んで10月−2月、送信時間が20−22LT、受信時間は16−06LTで、21LTに集中の意味は、この季節、この時間、天頂近くに、黄道、電波の窓の中心、地磁気テイルの中心が集中し、惑星間電離層に対して最良の送信条件がそろう。LDEsはドップラー変移によりオンフレでは受信できないことがあり注意を要する。

 LDEsの発信、受信には経験的に次のような依存性が認められる。これが複合的に重なった時、LDESにとっては好都合となる。
* 地方時依存性(Local time dependence(d))
* 電波の窓依存性(Radio window d.)
* 季節依存性(Seasonal d.)
* 太陽活動サイクル依存性(Solar cycle d.)

 LDEsの経験者はLDEsの距離損失は殆ど無いということに気がついています。
LDEsがhoaxでもミステリーでもない証拠はJA3ONB中西氏の受信報告の中に見ることができます。それは36時間、そして82時間遅れのダブルエコーで、本人及び宇宙空間でしか作ることの出来ない現象が入感信号に印加されていることです。それはキーイングの癖と、信号の歪み、そしてドップラー偏移です。その偏移量は、1.8MHzの電波に対して+300から−200Hzを示し、反射源が地球に対して見掛上+25から−17Km/sの速度で動いていることを示しています。

 1,8/3,5型LDEsの理論の骨格部分がレーダ方程式の中にあることがわかりました。LDEsも月面反射通信(EME)もレーダー反射波とみなし見倣し、この両者を比較し、長距離のLDEsが実際に起こり得るのか否かを理論的に検討しました。その結果、LDEsは起こり得、38万KmのEMEと450億KmのLDEsを方程式で比較すると、その距離差にも拘らずLDEsにその伝搬上の優位性のあることがわかりました。その主な理由は、伝搬上の距離損失はEMEの場合は距離の4乗に比例し、LDEsは距離の2乗にしか比例しないことによるものです。(理論の詳細については省略)

 結論としてLDEsはミステリーでもhoaxでもない物理現象で約300AUに達する太陽系活動への新しいコンセプトと観測手段をほぼリアルタイムで提供できることが可能であることを示しているのです。

TABLE             1.8/3.5 TYPE LDEs RECORDS                       2004 AUG

TYPE

MODE

STATION

DATE

TIME(LOCAL TIME)

DELAY TIME

DISTANCE AU

POSSIBLE

REFLECTOR

D・M・Y TRANSMISSION RECEPTION

EARTH

SUN

T

3・5CW

UL7GW

14・12・72

20:05

20:05

10-15 sec

-

-

PLASMOID-GEOTAIL

U

W6WYW

11・10・01

20:00

20:30

30 min

1・8

2・8

MINOR PLANET

JA7SN(1)

24・2・98

21:10

22:00

50

3.0

4.0

V

3・5CW

JA7SN(2)

26・12・93

22:05

16:02*

17h:57min

65

66

EKBO N 3/10

JA7SN(3)

16・1・98

21:50

21:40*

20:50

86

87

EKBO N 1/5

JA1HQT

10・89〜2・93

19:30

21:30

19:30*

21:30*

24H〜25

86

87

JA1CGM

JA8DNV

27・12・02

21:00

23:10*

26:00

94

95

EKBO N 2/11

1・8CW

JA3ONB(1)

18・1・04

19:54

06:13**

34:19

124

125

EKBO

JA3ONB(2)

-

-

06:25***

82:32

297

298

* NEXT DAY
** 2DAYS AFTER
*** 4DAYS AFTER
EKBO: EDGE-WORTH KUIPER BELT OBJECT

N 3/10: MEAN MOTION RESONANCE BELT AFTER NEPTUNE

 

超遅延エコー  投稿者:JF3NRI/1  投稿日:2007年 5月25日(金)20時33分52秒  
 
  超遅延エコーの説明で、伝播損失がEMEの場合距離の4乗、LEDの場合2乗とあります。なぜこうなるの

かは文中省略されているためによくわかりませんが、これが本当の場合でもLEDのほうが10の5乗倍ほど

伝播損失が大きくなります。HFのLow BandでEMEが確認されていないところから考えると、その信号の

10の5乗倍小さい信号を受信することは不可能ではないでしょうか?どういう理論かもう少し詳しく説明し

ていただけないでしょうか?

 

 

.