ふと思い出した。前のコミケの際にスケブを頼まれたんだけど、描いた物を渡したらその絵を見て依頼者は怪訝な顔をしつつ、こー言った。「あの…極限劇場の高木さんですよね…?」はい、そーですが何か。軽く「プロの大物をカタるのならともかく、おいらみたいな無名をカタってもしょーがないっちゅーねん!」とツッコミを入れてみる。あ、これは良いツッコミですか?美凪〜、褒めて褒めて〜。←このようにわかりにくいギャグ始めました今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。こんにちは、高木裕司です。
だいたい、おいらのラフを見た人間はこれがおいらの絵ということに疑問を呈することが多い。しょーがないやん。そういう描き方なんだし。おいらの絵の描き方はラフをざっくりと描いて、線を消しゴムで消しつつ削っては足し、削っては足すといった描き方。絵を描くというよりも彫刻を彫っているという感じです。一発描きってのができないんですよ。すらすらと一発で線を描き出す人を見ていると、まるで異星人を見る気持ちです。なんつーか、F1マシンと軽トラの差というか。まぁ、それだからって訳じゃないのですが、今日は軽トラでもできるお絵かき講座でも。
おいらは絵を描くっていうのは別に特殊能力でも何でもないと勝手に思いこんでいる。一番重要なのは観察力と想像力なんじゃないかな。こういった能力は筋肉と同じで、誰でも鍛えることができるんではないか。もちろん生まれ持った才能ってのもあるんだろうけど、経験で補える部分も数多くあると思う。思う、ていうか思わせて下さいプリーズ。おいらはもっと上手くなりたい。
白い紙を見る。そこに絵の完成型を思い浮かべる。それも、なるべく三次元化したフィギュアを机の上に置いているようなイメージで空間を把握する。それが背景つきのものでも人物単体でも同じ事で、手足は体にどのような位置にあるのかとか、服の奥行きはどうなっているのかとかを想像する。でもこれが一番難しくて大変な作業。最初から何を書くか決まっているような時には別に構わんのですが、なにを描こーと考えながら描く時には、白い紙を前にして何時間も唸ることすらもある。どんなポーズなのかとか、手足の位置関係や胴体の奥行きはどーかとか。でもなかなか実体を脳内に顕すことができない。平面的な、二次元的な物なら出てくるのだけど、立体としてはなかなか出てこない。こんな状態で絵を描いても、とてもじゃないが立体としては整合性の取れていないメチャクチャな物しか描き上がることがない。なので、おいらはここで想像力のドーピングを行う。空間を把握できないのなら無理矢理把握できるようにしてやればいい。
たとえばおいらのMeタンの絵を例にとると、まず↓こんな感じに描く。
丸と線がくっついているデッサン人形みたいなもんで、小さい丸は関節を示している。実際の人物の骨とかの位置関係を把握できる能力のない人でも、ここまで単純化した記号のような人間ならどーとでも想像できる。どの円や線が立体になった時にどの位置にあるのかを把握できるようになる。顔の十字とかは別に正確な位置になくてもいい。あくまでも空間を把握できればそれでいい。しかもこの程度の簡単な者ならいくらでも描き直せるので、自分の気に入ったポーズが出るまで短時間で何度もやり直しまくれる。とりあえずこんな感じに丸と線で部品を構成したらその絵をじっくりと見てどういう感じに目や手足が存在するのかを想像し、納得できたら次へ進む。
んでもって、そのデッサン人形に順次肉付けをしてきます。↓
疑似デッサン人形効果で頭の中に完成型ができているのならけっこうスラスラと描けるもんです。要するに頭の中にある完成型を元になぞってやるだけですから。時間がかかったり、自分でも納得できない物ができるのは描きながら想像するからであって。おいらの場合はこの時点でもけっこういい加減です。縮小しているので分かりづらいかも知れませんが、目とかもかなり適当な感じです。想像力の許容量が少ないのでしょーがない。軽トラは軽トラなりに工夫で補うのですよ。
おいらがスケブを描いたげた人が怪訝そうな顔をするのはこの絵をあげてるからなんだろなーと思ってる。しゃーない。イベント会場ではトレス台なんてないし。ちなみに目や鼻の位置の空間把握がうまくいかない人は、美少女フィギュアでも買って、それを観察しつつ目はどの位置に、鼻はどの位置にとかを確認しつつかけばいいかもしれん。あくまでも二次元的にではなく、三次元的に把握してこそ良さ気な絵になる…気がする。
ある程度完成したら今度は線を整理します。トレス台に載せてペン入れを行うわけですな。
ペン入れと言ってもこれが完成品ではなく、単に線を分かりやすくするためにペンを使うだけです。鉛筆で描いたラフを元に更にイメージを確固たる物にふくらませてなぞっていく。おいらの場合、多い時には数回このペン入れをした物を下書きとして更にペン入れを行って線を起こします。今でこそたいがい1回でPC上の作業に行きますが、絵を描き始めた頃は3回くらいやってたかしらん。上の絵では目にハイライトまで入っていますが、これは自己満足。どーせ色つけの際に消さざるを得ないのですが、線画の段階でも絵に命が欲しいってだけの話で。
しかも前のラフはあくまでも線の参考程度にし、実際にはペンを走らせながら線の位置を修正しまくっています。あくまでも前回の線はアタリであって目標じゃないってわけ。
重ねた物です。これを見ると分かりますが、下書き段階の線なんて無視しまくりですな。服のしわの方向とかも全然違っていたりします。口元の表情や髪のなびきかたもなんだか気に入らなかったのでペンの段階で想像しつつ微妙に変化させてます。線なんてはみだそーが何しよーが、あとで修正すればいいだけの話なので勢いだけでガリガリ描きます。たのしけりゃいーのよ、たのしけりゃ。数回の修正を経て、ある程度納得がいったらスキャンをしてPCに取り込み、最後の仕上げです。ペンツールを使って線の微調整を行います。
ペン入れをしてもなお気に入らなければ、そのペン入れをした物を下書きとしてもう一回ペンを入れ直す。そうやってまるで彫刻を削るかのように自分が思い描く理想の線に近づけていくわけですな。人物を描く場合にはこのような感じに描きますが、基本的に背景やメカの場合でも同じです。車とかなら直方体を描いて方向を決めて想像、タイヤの位置決め、窓の角度、主要部分の曲線などを継ぎ足していって、最終的に車の形を出すという方法をとります。
はなっから空間把握のできないおいらみたいなオールドタイプは、こうやって技術と工夫でもって足りん才能を補うのですよ。才能のある人を羨んでいるばかりじゃ何も始まらんですしな。もっと経験を積んで脳の処理能力が増えれば、いつかは一発描きもできるようになるでしょう。その日が来るのを信じて、おいらは今日も描くのですよー。
F1マシンになれる日を夢見て、今日も軽トラは頑張るのです。
おまけ:トレス台の話。
トレス台を活用しまくりのおいらも最初は市販のトレス台を買ったのですが、こいつが使いにくい!妙な厚みはあるし、ふだんは使っている傾斜台を横にどけてトレス台を設置しなくてはならないのも面倒くさい。もし何かの拍子に盤面を損傷してしまったら買い直しですかー?インバータの高周波音も鬱陶しいけど、最初から付いている物だからどうしようもない。おまけにA3のが最大だけど、紙を回して描いたりするには狭すぎる!などと、さまざまな問題があって困っていた。
で、考えたのが傾斜台兼トレス台を自分で作ればいいじゃないか、ということだった。
台はどうするか。透明なガラスがいいか?でも冬は冷たくて寒そうだし、滑りまくるのもいただけない。何よりもうっかり体重をかけてしまったりして割ったら大惨事だ。ならホビーショップにあるようなプラ板か。でも大きさが足りない。ならホームセンターとかで売っているアクリル板はどうか。あー、でも薄い。高価い。だけどネットで探せば業務用の分厚い奴もけっこう簡単に安く手に入るのではないか。よし、調べてみよう。…けっこう簡単に見つかった。へー、セミオーダーできるんだ。厚さは1センチくらいが適当だろう。面積は60x45センチくらいで…5000円ちょい。トレス台に比べれば鼻糞なみに安い!色はどうするか。乳白色のが良いような気がしたが、光を通さなさすぎたら少々困る。透明の物を買って、裏のランプがまぶしかったら裏に紙でも貼ればいいな。
ランプはどうしよう。秋葉原にでも行っていろんなランプを見てみるか。けっこういろんな物があるが、白熱球は熱を出しすぎる。小型の蛍光灯がいいだろう。お、いいものがあった。スイッチつきの卓上蛍光灯、一個940円。安い。耳を近づけてもインバーターの高周波音もしない。光量もちょうど良い感じだ。これにしよう。材料はこれで良い。
で完成した物がこれ。↓完成っていっても別にたいした工作したわけでも何でもないんですが。
前の傾斜台で使っていた古本を積み重ねて作ってあった台の端にアクリル板を載せて傾斜を付ける。下側には滑り止めのゴムを装着。段ボールにアルミホイルを貼って作った反射板を下に敷いて、その上に小型蛍光灯を載せる。面倒なので別に固定はしない。固定しない方が下を物置代わりに使ったりできるので便利なんですよ。必要な時だけ蛍光灯を移動させてスイッチオンてな感じに。アクリル板が透明なので、下を手探りで探す必要もないので非常によろしい。
原稿を載せるとこんな感じ。トレス台として必要十分な性能を発揮してくれます。しかも広い。紙を回そうが何しようが楽々ですよ〜。左右がガバッと開いているので、空気の出入りが大きいのか板面が生暖かくなることもありません。なんといってもトレスのたびに傾斜台をどけてトレス台を持ってくるような面倒なことをしなくてもいいっていうのが一番いい。蛍光灯の設置位置によっては明かりムラが出ますが、左右に内側を向くように配置してやれば大丈夫。でも、実際にはほとんど明かりムラなんて感じませんがね。感じるようならもう一灯増やして明るさを平均化するなどの対策をとればいいでしょうね。どうせ940円だし。
原稿が薄かったり小さくてランプがまぶしいようでしたら、このように紙を一枚蛍光灯の上に載せてやって光量を減じてやればよろしい。これで材料費を全部ひっくるめても8千円程度。安っ。蛍光灯が目にチカつくっていう人の場合には、光量の調整できるスタンドなどを入れてやればいいかもしれん。この方式の良いところは、ランプが気に入らなければ好きな物に変更できるし、板面を誤って傷つけてしまったら裏返してしまったり同サイズの1ミリほどのアクリル板を重ねて接着すれば復活するっていうとこもありますな。便利だ。
わざわざ使いにくく何万円もするトレス台を買わんでも、これでじゅーぶん。というか、こっちの方がいい。
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