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コツノツツハナバチ(マメコバチ)の利用は、もともと青森県のある篤農家の方が1940年代に始められ、その後、民間主体で普及が進められました(現在では、世界に誇れる日本の農業技術の一つとなっています)。これは、コツノツツハナバチという蜂の性格が非常に温和で?扱いやすく、(短期間しか巣外活動を行なわないため)生態が単純で(実際には単純と言えるか?)、昆虫をあまり扱ったことのない人にでもすぐに飼養方法が理解できたことが原因でしょう。利用技術普及への研究者の関与は、20〜30年も遅れました。それでもこの頃の懸命な研究により、コツノツツハナバチの生態や天敵類の生態、送粉効果などが飛躍的に解明されました。1970年代後半からの飼養技術の急速な普及は、この頃の研究者ら(山田正輝 元青森県りんご試験場長、北村泰三 元長野果樹試験場病害虫部長、庄司敬 元山形県庄内農業改良普及所長、そして前田泰生 島根大学名誉教授、以上4名、順不動)の努力のおかげと言えるでしょう。リンゴ生産量の多い青森県、長野県、山形県、岩手県の4県にはコツノツツハナバチの飼養方法を指導できない(果樹生産)技術指導者はいなかった、という時代がしばらく続きます。しかし、研究活動というものは初期の成果が出やすい時期には活発に行なわれるものの、大きな成果が出なくなってくると次第に衰退していきます。そうすると後続の研究者はほとんど育たず、1990年代になると初期の研究者らが定年を迎えるようになり、1990年代後半になると飼養技術をまともに教えることのできる現役の指導者はほとんどいなくなりました。 こういう状況ですから、コツノツツハナバチを始めて飼養する人だけでなく、試験場や普及センターの人にも読んでいただきたいと思い、内容が少々複雑になるのを承知で、それぞれの飼養技術の科学的根拠を説明しながら書き進めたいと思います(従来の指導書を読まれても適切な指導は出来ません。科学的根拠を理解してこそ、それぞれの園地に合わせた的確な指導ができるのです)。また、昔からコツノツツハナバチを飼養しておられる方には、これを読まれて「迷信、誤解、思い込み」から脱却していただけると良いと思っています。・・・間違いがあったら遠慮なく指摘してください。 以下に書いてある内容は、『生態』のページと『天敵』のページ(『生態』のページからリンク)の内容をよく理解してからでないと分かり難いかもしれません。 |
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種バチの準備(購入)は、コツノツツハナバチ(マメコバチ)の導入・利用が成功するか失敗するかを決める重要なポイントです。健全でない種バチを導入しても、期待どおりの送粉効果は得られません。また、ハチが健全であっても天敵類が多く含まれると、送粉効果は一時的で、長続きしません。一度、天敵が多く含まれる種バチを園地に導入してしまうと、天敵類が園地周辺に定着してしまいます。そのような園地では、飼養管理を3年間しないで放置しておくと、コツノツツハナバチが全滅します。また、その後いくら飼養管理を徹底して行なっても、天敵類を根絶することが困難となります。さらに、近接する農家さんの園地にまで天敵類が分散し、地域全体で蔓延することにもなります。ですから、他の農家さんに迷惑をかけないためにも、コツノツツハナバチを初めて導入する際には注意が必要です。現在、リンゴの大産地でコツノツツハナバチが増殖できていない原因の一つは、不良品質のコツノツツハナバチを導入したため、天敵類が蔓延していることにあります。 導入後もコツノツツハナバチを継続して使い続けるためには、健全で、天敵の混入が極めて少ない種バチを導入する必要があります。2006年の段階でこのようなコツノツツハナバチを販売しているのはマメコ研しかありません。もしも品質の分からないコツノツツハナバチしか入手できない場合には、導入を延期するべきです。
種バチは、入手するときの状態によって種巣と種繭に分けられます。巣に入っている状態のものが種巣で、巣から取り出した状態のものが種繭です。 販売されている種巣は、まったくの無選別、あるいは営巣された筒だけを選別した状態です(マメコ研のものだけは巣内部の状態まで確認してあります)。巣筒に繭を再配置した状態のものも種巣と呼べます。 無選別の種巣には、完成巣と未完成巣と空のヨシ筒が含まれます。当然、これら3種類の比率には決まりはありません。ですから、全部が未完成巣だったり、ハチが全然出てこなかったり、全部が空のヨシ筒だったとしても文句を言えません。 営巣筒だけを選別したものは、完成巣だけのものと未完成巣が混在するものの2種類があると思います。巣内部が点検されていないのが普通です。ですからハチが少ししか出現しなかったり、天敵だらけだったり(これは普通です)、その巣が1年前のものだったり(つまり、巣内部ではハチが全滅していたため、入口栓が壊れない状態で保たれていたもの。こういう事例が本当にありました)、オス蜂しか出現しなかったりしても文句を言えません。 種巣にはいろいろな単位(ヨシ筒の本数だったり、束の本数、あるいは巣箱数)があります。内部が確認されていない状態のものは、どれくらいの単位を導入したら十分な送粉効果が得られるか、まったく見当が付きません。にもかかわらず、このような種巣や種繭を販売している人は、「これくらいあれば良いでしょう」と適当なことを書いたり、言ったりします。 販売されている種繭は、普通はほとんど無選別状態です(マメコ研のものだけはサンプル抽出して生存状態と性比、天敵混入率を確認してあります)。ほぼ無選別なので、いろいろなものを含んだ状態です。含まれているのは繭のほかに土壁、ヨシ屑、コナダニ類、カツオブシムシ類、チョーク病の胞子、寄生蜂などです。これらもどれくらいの比率で含まれているのか、特定の傾向はありません。繭内部も確認されていませんから、ハチが全部死んでいることもあり得ます。 種巣、種繭を導入する場合には、まず、そのハチの由来を確認しましょう(販売されている場合には聞けば分かります)。由来とは、「どこで、どのような飼育をされたものか」です。人工巣で飼育されたものはハチの健康状態(いろいろな意味での品質)が悪いので問題外です。次に状態です。選別の有無、ハチの生存状態(性比、生存率、越冬のさせ方)、天敵の混在状態まで確認しましょう。ハチがあまり出現しなかった場合には対処してもらえるかもしれません。
どうしてもすぐにコツノツツハナバチが必要で、「品質が悪いのを承知でほかに注文した」、または後述するように「トラップ巣を設置してコツノ(が入っているかもしれない)を入手した」、という場合(または「知人から巣を譲ってもらった」という場合)の対処方法について。マメコ研でこういうことを解説するのは間違っているような気がしますが、簡単に説明いたします。 もし注文したものが種巣だとしたら、種繭に変更してもらった方が良いでしょう。これでやって来る天敵の数量が少しだけ減ります。 「もう既に種巣を受け取った」、あるいは「トラップ巣を回収した」、という場合。まだハチが活動するまでに相当の日数があるのなら、それらの巣をすべて切開して繭だけの状態にしてください(『巣筒の切開』の項を参照)。つまり種繭で購入したのと同じ状態にするのです。 「もう種巣やトラップ巣のハチが飛翔活動を始めている」、または「あと数日〜1週間ほどで飛翔を開始しそうだ」、という場合。まだ営巣開始前なら「ふるい」の上で巣を切開してください。そうして集めた繭を巣箱に設置します(これも『巣筒の切開』の項を参照)。この場合には後述するような『繭洗浄処理』はできません。それでも巣の状態のまま何もしないより まし なのです。 「種巣が人工巣だった」、という場合には、簡単に切開できるタイプの人工巣なら切開してください。切開できないタイプだったら、どうすることもできません。天敵の混入が少ないことを祈るのみです。 「種繭で購入した」、あるいは「種繭の状態にできた」、という場合。適切な時期に『繭洗浄処理』を行なってください『コナダニ類の生態と防除』のページに『繭洗浄処理法』という項がありますので、そちらを急いでご覧ください。 「もう営巣活動は始まっている」、あるいは「終わってしまった」、さらには「導入したのは1年以上前だ」、という場合。手遅れです。『巣筒の切開』の項へお進みください。 |
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コツノツツハナバチ(マメコバチ)を初めて飼養する場合、どれくらいのコツノツツハナバチ(種繭・種巣)を購入するか?は、送粉しようとする果樹の面積をもとに決定します。送粉可能な作物については『利用 送粉(受粉)』のページをご覧下さい。面積とメス蜂数の関係は、『商品紹介1』のページに載せてあります。これはリンゴ園での標準的な放飼密度(メス12頭/1a)と定着率(50%)で計算したものです。リンゴで全頂芽花の結実率50%を達成できる放飼密度とされていますが、実際にはこの放飼密度では結実率30%くらいにしかならない場合が多いかもしれません。この原因の一つは、近年、定着率が低下する傾向にあることです。また、初めてコツノツツハナバチを飼養する場合には、飼養技術が未熟であるため定着率を高くできないことが多いでしょう。 それでもこの不足しているであろう放飼密度を掲載しているのには理由があります。工事中 |
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トラップ巣(trap nest)法は、アメリカの昆虫学者Krombein博士が考案した「いろいろなサイズの穴をもつ構造物をさまざまな環境に仕掛け、それを回収することで既存孔に好んで営巣するタイプの単独性ハナバチ類やカリバチ類の巣を効率よく集める」方法です。日本では青森県の篤農家がコツノツツハナバチの飼育を始めた頃(Krombein博士より10年くらい前)にトラップ巣でコツノツツハナバチを集めています。 コツノツツハナバチが好んで利用する内径・長さのヨシ筒(トラップ巣)を適当な場所に設置して、営巣終了後にそれを回収し、コツノツツハナバチの巣(種巣)を入手することになります。このように書くと簡単そうに思えますが、実際にはなかなか上手くいきません。いろいろと問題点があるからです(ですからトラップ巣設置はお勧めできません)。以下、作業順に解説します。 3a.トラップ巣の準備 まず、トラップ巣となるヨシ筒(両切筒が良い)100〜200本くらいを束ねます。これを設置する箇所の分(+お礼分)、用意します。確実にコツノツツハナバチがたくさん入る(営巣する)と分かっているのであれば、1ヵ所だけに設置しても良いでしょう。営巣するのか分からない場合には数ヵ所分を準備します。例えば100本の両切筒が全部営巣されれば、400〜800頭ものメス蜂が得られますしかし、このような場所は極めて稀です。入らないときには、無駄な労力で終わります。 3b.設置する時期 トラップ巣の設置は、早春(遅くともソメイヨシノ桜が満開となる前)に行ないます。 3c.設置場所 コツノツツハナバチが飼養されている果樹園かその近くにトラップ巣を設置させてもらうのが確実です。できればコツノツツハナバチが飼養されている場所から50m以内に設置させてもらいます(近いほどよくハチが入ります)。作業小屋があればその軒下に、作業小屋がなくて巣箱があるのであればその中に置かせてもらいます。コツノツツハナバチを飼養されている方に頼むのであれば、設置させてもらうヨシ筒の数倍量をお礼として差し上げれば快く承諾してもらえます(交渉次第です)。お礼に差し上げる数量は3〜4倍が適当です。これより少ないと飼養されている園地のコツノツツハナバチが減って迷惑をかけることになりかねません(いらないとか、同量や2倍量でOKと言われる親切な方もおられますが・・・)。コツノツツハナバチを飼養されていない方に頼むのであれば、ヨシ筒以外のもの(金銭か手土産)をお礼に差し上げます。果樹園が近くになかったり、設置を断られた場合には、果樹園以外でコツノツツハナバチが入りそうな場所を探すことになります。しかし、そのような場所はなかなか見つかりません。雑木林が隣接する山間部の農作業小屋であれば入る可能性があります。しかし、「入った!」と思って回収して調べてみると全部別の蜂だったということがよくあります。ほとんどの場合、ドロバチ類やツノツツハナバチの巣しか出てきません。果樹園以外でコツノツツハナバチが入手できるようなことは極めて稀なのです。にもかかわらず、(果樹園地帯ではない)かやぶき屋根の人家の軒下にトラップ巣を設置してハチ類に営巣させ、それを回収してはマメコバチの種巣だといって販売している会社があります。購入した人も種巣に何が入っているか確認しないのでクレームには発展しないのでしょうが、こういう商売をいつまでも続けていて良いのでしょうか?ちなみにツノツツハナバチはオウトウ開花終了後に営巣を始めますので、このような種巣をオウトウ受粉のために購入されても受粉には役立ちません。山形県でもこのような種巣が販売されていますので、ご注意ください。 3d.設置方法 周辺が明るい場所で、筒に日光が直接当たらず、雨水がかからない位置に、筒がほぼ水平になるように設置します。小屋の軒下であれば普通は南側を選び、ヒモで縛って取り付けます。巣箱の中であれば、古巣の上(段になっていたら上段)に置きます。 3e.回収 トラップ巣の回収は、普通は「秋以降に行なうのが良い」と解説されています。しかし、これではコツノツツハナバチ以外のさまざまなハチ類(とそれにおまけとして付いてくる天敵類)まで回収することになります。回収は、できればコツノツツハナバチの営巣終了直後に行なってください。回収したトラップ巣は水平にしたままそっと運び、段ボール箱などに入れて秋まで(野外と同じか若干低い温度で)保管します。その後の処理方法は、『種バチの購入』の項に書いたとおりです。 |
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種バチの手配ができたら、ハチが(飛翔活動を開始するまでに)巣造りする場所(営巣材料:巣筒)を準備します。
巣筒は、普通はヨシ(アシ、葦)を加工して作ります。ヨシPhragmites australisはイネ科ヨシ属の多年生草本で、世界の温帯から熱帯にかけて分布します。湿地帯に多く生育し、河川敷、湖岸のほか休耕田にもよく生育しています。茎の高さは1〜5mです。 ヨシの代わりにタケ(竹)を使うこともできます。タケノコを採るような太い竹(モウソウチクやマダケなど)ではなく、カンチクChimonobambusa marmoreaやメダケのようなPleioblastus simonii のような細い竹から適当な太さ(内径)のものを探します。竹は本数が沢山採れません。コツノツツハナバチを少量だけ飼養する場合にのみヨシの代用品として使えます。
人工巣(紙や合成樹脂(プラスチック)でできたもの)は、購入しないようにしてください。人工巣は高価で、ハチの利用率が低く、子孫の死亡率は高くなります。
コツノツツハナバチに営巣させる筒は、加工の仕方によって両切タイプと片切タイプの2種類に分けられます。ハチの出入口が節の左右にあるのが両切筒、出入口が片側にしかないのが片切筒です(下図を見てください)。 ヨシ筒を両切にすべきか片切にすべきか? 普通は両切筒のみを設置している人が多いようです。理由は人それぞれです。第1の理由は、ヨシ1本から出来る筒の本数はほぼ同じなので、両切筒にすると(穴が左右にあるので)片切筒の2倍のハチを飼養でき経済的であることです。第2の理由は、両切筒の方が設置しやすいことだと思います。両切筒は大きいので、軒下に吊り下げて設置する場合の作業が楽です。また、リンゴ箱を巣箱にする場合(このような人が多いのです)、両切筒はちょうどよい大きさになります。ただ単に、販売されているヨシ筒の大半が両切タイプだったから(何となく)、という人も多いでしょう。設置方法によっては両切筒の方がハチの活動が活発になるとまで深く考えている人はいないと思います(ただしこの利点については、片切筒でも置き方によっては同じ効果が得られますので)。 一方、片切筒を好む人の理由は、巣箱が小さいから、ハチが出入りしやすそうだから、巣筒を切開する作業が楽だから、(研究者にとっては)片切でないと調査できないから、などこちらもさまざまです。天敵類対策のため(= 天敵類の発生量を減らすため)片切筒を設置しているという人はいないと思います(マメコ研だけでしょう)。 コツノツツハナバチの行動や天敵類の寄生生態などを考慮すると、片切筒の方に分があると思います。しかし、経済的であるのが一番でしょう。「片切筒でないと困る」という強い理由がないのであれば両切筒にして下さい。
最初に、必要となるヨシ筒の本数と、これを作るための道具について解説します。
秋以降に茎の枯れたヨシを刈り取り、持ち帰ります。刈り取る際には、太さが加工に適したものを選んで刈り取ります。コツノツツハナバチが好んで営巣利用する太さは、内径5〜7mmくらい、ヨシの外壁部分の厚さは0.5〜1.5mmくらいで(ただしヨシは暖地で生育するほど肉厚になるので、現場で切って壁のおよその厚さを確認しておいた方が良い)、下部ほど厚くなっています。地面から10〜15cmくらいの高さで刈り取るとして、その部分の外径が(北日本では)7〜9mmであれば良いでしょう。穂までの高さが高い(250〜300cm以上の)ものを選べば、1本からたくさんの本数が取れます。それに背が低いヨシは細すぎることが多いので、刈り取るヨシ原を選ぶ際にも遠くから見て背が高いものが多いかを基準にして刈り取る場所を選びます。 刈り取ったヨシを集めたら、車に積んで持ち帰ります。このとき、車の大きさによっては長すぎる部分を切り捨てないと積めないことがあります。ヨシは地際がやや細く、上方中央部に向かって太くなり、さらに先端(穂)に向かって極めて細くなります。先端の細すぎる部分は持ち帰っても捨てることになりますので、刈り取り現場で切って短くした方が良いでしょう。先端付近では壁が薄くなってるので、外径6mmより細くなる部分で切断します。 適切な太さのヨシを何本くらい刈り取って持ち帰れば良いのか?・・・下の表を参考にして、放飼するメス蜂数から計算してみて下さい。
どのような場所に設置するかによって両切にするか片切にするかを決めます。軒下に吊り下げるなら両切筒が良いでしょう。巣箱に設置するのであれば、前記したような両者の利点・欠点を比較してどちらか(あるいは両方)を選んでください。ちなみに、マメコ研では両方を作っています。このとき出来上がるヨシ筒の比率は、両切:片切=6〜7:4〜3で両切の方が多くなっています。これは、両切はほとんど販売に回し、片切をおもに自前で使うためです。理由は下述する『筒の内径は?』の項に書いてあるとおりです。 加工方法は、切断する刃物や機械によって少し異なります。切り口を垂直切りにするか斜め切りにするかは、切断する工具の種類によって決められます。逆にみると、切り口をどちらにしたいかによって使える工具が限られることなります。
切断のしやすさ、調整作業量、作業効率などは加工するヨシの品質によって異なります。
持ち帰ったら、筒に加工します。マメコ研で販売している筒の内部長は、両切筒では7〜17cm、片切筒では13〜17cmです(なぜ最低7cm、最長17cmとなっているかは、『生態』のページに説明してあります。両切筒と片切筒の最低の長さが違う理由は説明していませんが)。これにならっても良いですが、できれば9〜15cm(平均12〜13cm)の長さにして下さい。 この推奨している長さは、昔から推奨されてきた長さよりかなり短いものです。従来、「長さは10cm(または15cm)〜20cm(平均15cm)が良い」とされてきました。実際に青森県では21〜26cmくらいの片切筒!が販売されているようです(そして何故か両切筒は25〜30cmしかないのです。理解に苦しみます)。しかし、『生態』のページにも解説したように、紙ストローでさえ長さが16cmを超えると利用率は激減します。しかも、長い筒を与えるほど古巣再利用率が高くなるので、これによって天敵類の発生率が高くなります。 果樹園でコツノツツハナバチを飼養した場合、通常は1本目の巣筒を完成させ(完成巣が1本できる)、2本目の作製途中に(殺虫剤散布または花資源の枯渇が原因で)活動を終えます。すると未完成巣ができることになります。この傾向は、与えられたヨシ筒が長いほど強くなります。また近年多発する傾向にある開花期の天候不順も、長い巣筒での未完成巣増加につながっています。未完成巣は天敵類(寄生蜂やカツオブシムシ類、ナガヒョウホンムシなど)によって攻撃されやすく、他の蜂類によって受継営巣される被害も受けます。このため、未完成巣をできるだけ少なくさせた方が良いのです。その手段が、コツノツツハナバチが好む(比較的短めの)長さのヨシ筒だけを与えることです。 また、巣筒の1本目に多発するタイプの天敵類(ツツハナコナダニやチョーク病)の存在も、短い巣筒を推奨する別の理由です。この1本目の巣筒では、天敵類はおもにメス育房を加害します。もし、比較的短いヨシ筒が与えられれば、2本目が完成巣となる確率が高くなります。完成しないにしても、メス育房で終わる巣よりオス育房の途中まで作られる未完成巣が増えれば、メスの生存率は高くなります。したがって、1本目で損失する分のメス蜂数を2本目で確保できるようになるのです。
両切筒にする人は、片切筒にしたい人ほどはヨシ筒の品質にこだわらない人でしょうから、切断位置は適当で構いません。とにかく手間をかけずに短時間で沢山切断したい、という方がほとんどでしょう。でも、下記のような考え方もあるということを知っておかれると良いと思います(「必ずこのように切断してください」とは言いません。覚えておかれるだけで結構です)。なお、寄生蜂など発生しないという人には下記の解説は関係ありませんので、適当に15cmくらいの位置で切ってください(実際に寄生蜂がまったく発生しない場所があるのです。羨ましいですね)。ちなみに市販されている両切ヨシ筒では、下記の考え方とは逆に(上が長く、下は短く)切られているのが普通です。 ハチが上側に営巣する場合、適度な長さの筒であれば少なくとも節の近く5mmくらいは育房作製部分に使いません。「マメコ研で推奨している平均12〜13cm」にするということは、厳密に考えると節から平均12.5〜13.5cmの部分で切断するということになります。一方、ハチが下側に営巣する場合には、適度な長さの筒では筒内全部を使う可能性があります。これでは困るので、下側はなるべく長くします。最低でも15cm、最長17cmになるように切断します。 本当はこのように切断したいのですが、作業するときに一回一回考えていては大変です。節の上側は15〜17cmに、下側は9〜17cm(平均は13cm)、これだけを覚えておきます。 実際に切断する場合。 たとえば、上下の節の間の長さが30cmあった場合には普通の人はど真ん中(上15cm下15cm)で切断しているでしょう。これをできれば上13cm下17cmで切るようにします。節間長が24〜29cmのときは上9〜12cm下15〜17cmのようになります。節間長が24cm未満のときは片切筒にしかできません。節間長が30〜34cmのときは上13〜17cm下(15〜)17cmの位置になります。節間長が34cmを超える場合には2度切りによって上13〜15cm、下15〜17cmにします。
1.ナイフで切断する場合。 工事中 2.ノコギリなどで切断する場合。 工事中 長さを揃えてはいけません。ハチの迷い。営巣効率低下。チョーク病の増加。 3.剪定鋏で切断する場合。 剪定バサミで切断する場合は、筒長を少し長めにする必要があります。切断部分から2〜3cm(ヨシの状態によってはもっと長く)は割れ目が入りますので、この割れる長さの分ほど長くするのです。ハチは割れた部分には育房を基本的に作りません。しかし、筒が短いときにはここにも育房を作ってしまうことがあります。そうすると寄生蜂は筒の外側から割れ目に産卵管を差し込んで寄生できるのです。天敵による加害率を高くしないためには、剪定バサミ使用の場合、筒内部長を少なくとも15cm以上にした方がよいでしょう。 ツノツツハナバチ用のヨシ筒を作る場合。本種は割れた部分にでも育房を作る習性が強いので、剪定バサミでヨシ筒を作るのはできるだけ避けてください。 工事中
果樹園の多くは、コツノツツハナバチにとって巣を2本までしか作れない環境です。このような場所でハチに完成巣をきっちり2本作らせて、しかも子孫のメス比率が高くなるように働かせるために、ヨシ筒の長さと太さをよく吟味する必要があります。また、コツノツツハナバチを健全に飼養するためにも選別作業は不可欠なのです(理由は上述のとおり)。自分でヨシ筒を作った場合はもちろん、購入した場合にも選別作業が必要となります。 販売されているヨシ筒は(マメコ研のものを除き)、通常は無選別状態です。販売されているヨシ筒(リンゴ箱に詰められた状態のもの)を調査した結果、不良品率(内径5mm未満または内径7.7mm以上または長さ7cm未満の筒の割合)は、ほとんどの場合43〜62%の範囲内になりました。長さ20cm以上も不良とした場合には、100%不良品ということもあります。何故このようなことになっているのか?それは、ヨシ筒生産者(通常は萱葺き屋根業者)はコツノツツハナバチ飼養経験がないため、ヨシ筒の規格というものを意識しないで作っていることにあります。まめこばち用ヨシ筒作製作業に従事している人に「ところで、まめこばちって何ですか?」と聞かれるくらいですから、自分たちが作っているヨシ筒が何に使われるのか知らないのです。また、販売者(普通は生産者とは異なるため、こちらも規格には無頓着)が納品業者をきちんと指導していないのも問題です。しかし、きちんと指導したとしても、規格どおりのものだけが納品されることはまずないでしょう(これはマメコ研でずっと経験してきたことです)。それに、規格を合わせて生産すると、ヨシ筒の価格がマメコ研のものよりずっと高くなります(マメコ研のヨシ筒は、現在、売れば売るほど赤字です。ですからなるべく他から購入して下さい)。
コツノツツハナバチ(マメコバチ)飼養に関する手引書には「コツノツツハナバチ(マメコバチ)は内径6.0〜6.5mmのヨシ筒をよく選択して利用する(だからこのサイズのヨシ筒を与えるべき)」と説明されていることがあります。これは間違いです。正しくは、「子孫のメス比率を高くするためには、コツノツツハナバチがよく選択する内径より少し大きめの(内径6.0〜6.5mmの)ヨシ筒を多く与える必要がある」のです。 設置するヨシ筒の内径の重要性は『生態』のページに述べたとおりです。巣筒の内径は、子孫の性比(メス比率として考えれば増殖率)を決定する重要な要素なのです。ところが、大部分の果樹園では無選別のまま、たくさんのヨシ筒が設置されています。このような状況でコツノツツハナバチに好き勝手に巣筒を選ばせると、本来、子孫のメス比率を高くできる太さよりも少しだけ細い筒を選んで営巣してしまいます。子孫のメス比率が高くならないので「春先には沢山ハチが飛んでいたが、そのうちに(まだ開花が続いているのに)少なくなっていた」ことになります。春先に沢山いたのはほとんどオス蜂で、少なくなっていた頃に飛んでいたのがメス蜂だったということです。 では、実際に果樹園で生産されたコツノツツハナバチがよく利用するヨシ筒の内径は? 個体群によって値は少しずつ異なりますが、おおよそ次のようになります。よく利用される内径は4.5〜7.5 mmで、特に良く利用されるのは5.0〜6.5 mm(平均値は5.5〜6.0 mmの間)。しかし、これでは子孫(とくにメス子孫)の体サイズは小さくなり、小さなメスは小さな筒を選択し、少数の小さなメス子孫(と多くのオス子孫)を残すということになります。この悪循環が続けば「いつまでたってもコツノツツハナバチが増えにくい」となります。 この悪循環を断ち切る必要があります。一番良いのは、内径5.5〜7.7 mm(平均値は6.0〜6.5 mm)だけを与え続けることです。しかし最初からこれを行なうのは良くないかもしれません(個体群内には非常に小さいメスや大型のメスがいるかもしれません)。できれば段階的にやった方が良いでしょう。いずれにしても選別して不要なヨシ筒を(もしかすると多量に)捨てることになりますから、「ヨシ筒がもったいない」とか「選別が面倒だ」という方には向いていません。 まず、コツノツツハナバチを初めて導入する、または、まだ飼養管理に不慣れ、飼養しているハチが適正放飼密度よりかなり少ないなどの段階では、内径5.0〜7.7 mmの範囲内で与えれば良いでしょう(太さの範囲が広いので、捨てるヨシ筒は少しで済みます)。ただし、内径5.5 mm以下は少なくしてください。次に、飼養しているハチがかなり増え、適正放飼密度くらいになったら、内径5.5〜7.7mmのみにしても良いでしょう。最後に、飼養しているハチが増えすぎたときには、内径6.0〜7.7mmだけ与えることが可能です(これが原因でメス子孫数が減少するようなことはありません)。マメコ研では、このように放飼するハチの大きさや数によって設置するヨシ筒の内径を調節してコツノツツハナバチを増やしています。
内径で選別する際には、直径が均一に作られている棒を使用します。 工事中
選別が終わったら次は結束です。結束しないでリンゴ箱にきっちりと詰め込むという方法もあります。実際にこのようにして販売されているヨシ筒(箱とセットでの販売)が多いようです。
結束には普通はPPバンド、セロテープ(野菜結束テープを含む)、バインダー紐、針金が使われています。 どれくらいの分量で束ねたら良いのか?販売されているものでは110本くらい(±25本)で1束としているものが多いようです。普通はほぼ一定の束サイズで束ねられるため、本数は一定していません。細い筒が多ければ本数が多くなり、逆に太い筒が多ければ本数が少なくなっています。 マメコ研では50本(±5本)で1束にしています。束サイズではなく本数を決めて束ねています。これは、放飼するハチの量に対して設置するヨシ筒の数量をどれくらいにするか正確に決めるためです。また、結束には(そのまま捨てることはないにしても)環境に配慮して麻紐を使っています。麻紐を使う場合、長時間濡れると腐ってしまうことがあるので注意が必要です(なかなか腐らないようにと少し太めの紐を選んで使っています)。麻紐を使うことには環境面以外の利点があります。それは、もし筒が濡れてしまった場合には麻紐が汚くなるので、それを目印に回収するまでに濡れてしまった筒を容易に識別できることです。濡れてしまった筒では、内部のハチの死亡率が高くなります(秋から冬にかけてハチは繭に入っているので、繭の外見からは生死や健康状態が判断しにくいのです)。結束例については、『商品紹介 ヨシ筒』の頁をご覧ください。
工事中
近くにヨシが生育していない、あるいはヨシを筒に加工する暇がないときにはヨシ筒を購入することになります。ツツハナバチ類の利用が盛んな地域(青森県、長野県、山形県の3県の特定の地域)では農業資材店、JA、ホームセンターなどで箱に入ったヨシ筒が販売されています。 ヨシ筒が入っている箱は、リンゴ箱(横にしたときの内寸:60(W)×28(H)×30(D)cm)、段ボール箱、(リンゴ箱より小さい)適当な大きさの木箱などです。木製の箱に入れられているものは「箱ヨシ」という名前で販売されています。 ヨシ筒は、それぞれの箱に結束されずに詰め込められていたり、適当な大きさに束ねて入れられています。リンゴ箱に結束して入れてある場合、普通は最低100本以上となる大きさ(直径9.5〜10.5cm)になっているのが普通です。内径の選別はされていません。いろいろな内径の筒が入っています。実際に数えてみると81〜144本(平均106±18本)となっています。これがリンゴ箱に18(〜19)束ですから、筒の本数は合計で1458〜2592本(平均1908本)となります。結束してない場合には2000〜3100本(平均2400本)となります。ただし、これは青森県産の場合で、山形県内で販売されているものでは後述する理由により本数が1350〜3200本と非常にばらつきます。価格は下述するような切り方や産地によって大きく異なり、リンゴ箱ヨシの場合はおよそ3500〜5300円となっています。価格と品質にはあまり関係がないように思えます(不思議です)。 切り方は、機械切りまたは手切りで、機械切りの場合は垂直切りのものが多く、手切りの場合は斜め切りがほとんどです。機械切りの場合は切り口がささくれていたり、内部長が適当なものが多いようです。筒の全長(斜めに切ってある場合は先端から先端までの長さ)は片切、両切ともに!25〜26cm前後です。片側の内部長は両切筒で3.5〜17.5cm(平均11.5±2cm)、片切筒では19.5〜24.5cm(平均23cm)となっています。これは、リンゴ箱が巣箱として使われる場合が多いためです(斜め切りにした場合、先端までの全長が26cmくらいだと、深さ30cmのリンゴ箱にちょうど収納できるため)。内径についてはほとんど選別されていません(まれに選別してあるような束が見られます)。内径は3.3〜10.6mmの範囲にあります(細すぎる筒や太すぎる筒が増量剤的に混入されているように思えます)。 販売されている両切筒の品質(良品率 = マメコ研の規格:内径5mm≦D<7mm、片側の内部長7cm≦L<17cmとなる筒の割合)は、青森県産のものでは46.6〜75.0%(平均:63.0±9.2、n=20)でした(2006年調査)。山形県で販売されているもの(=宮城県内の業者が作製したもの)は、25.7〜39.0%(平均:35.2±5.5、n=5)でした(2006年調査)。両県で販売されているヨシ筒の品質には2倍近い差があります。青森県では「まめこばち用のヨシ筒」だと認識された上で加工されているのため優れた品質のもの(およそ3分の2が良品)が販売されているのでしょう。これに対して、宮城県内で加工し、山形県に(長野県や青森県にも)出荷されているものは、何に使われるのか知らずに加工されています(宮城県では、まめこばちはほとんど飼養されていないためです)。このため、適当な太さのヨシが適当な位置で切断され(全長26cmの筒に節が0〜2個!あり、筒内部長は0〜26cm!です)、3分の2が不良品となっているのです。長野県で販売されているヨシ筒については、まだ調査していません(誰か送って下されば調査できるのですが・・・)。 このように、販売されているヨシ筒は加工した場所(業者)によって品質が大きく異なります。山形県の人は、品質の悪いヨシ筒しか購入できません。青森県では、おそらく不良のものが少し出回っているものの、大半は良いヨシ筒のはずです。購入する際に節の位置を確認すれば間違えることなく良いヨシ筒を選んで購入できるでしょう。良品の多い箱ヨシ(全長がほぼ均一になるように切断された両切筒)では、節の位置のばらつきが少なくなっています。不良品の多い箱ヨシでは、節の位置がかなりばらつきます。(マメコ研で販売している両切筒は、全長も節の位置も切り方もバラバラですが、結束する前に内径と内部長が規格に合うように選別してあります)。 中国産ヨシ筒の問題点 工事中 以上のように、販売されているヨシ筒は(マメコ研のもの以外は)無選別状態です。購入した後、自分で選別した方が良いでしょう(選別基準については上述したとおりです)。 |
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巣箱の設置方法もコツノツツハナバチの導入・利用が成功するか失敗するかを決める重要なポイントです。設置方法が悪いと、良い品質のコツノツツハナバチを導入しても園地に定着しない(=送粉効果なし)、増殖できないという結果につながります。巣箱の設置場所が1m離れているだけで、または巣箱の向きを変えるだけで定着率&増殖率が4倍以上違ってくることもあります。ですから、巣箱の設置場所は慎重に決定しなければなりません。 工事中 コツノツツハナバチを飼養するためには、巣箱が必要となる場合があります。 工事中 |
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コツノツツハナバチを飼養するためには、巣箱が必要となる場合があります。 工事中 |
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採土場の位置と大きさ、設置時期 果樹園内でコツノツツハナバチ(コツノツツハナバチ)を飼養する場合には、かならず巣箱の近くに穴を掘って採土場を確保してあげます。採土場は、農作業の邪魔にならない場所に、人が落とし穴に落ちないよう配慮して作ります。できればコツノツツハナバチの営巣場所(巣箱)から5m以内(高さが低い巣箱の場合は正面1〜1.5mの位置に、軒下など高いところに吊り下げる場合には正面2〜3mくらい)に作るようにします(下の写真では斜め前方に掘ってあるので良くない例です)。 また、地面より低くなった場所に採土場を求める傾向がありますので、プランターやバケツ等を地面に置いてに採土場を設けても、あまり利用しません。プランターやバケツ等の容器を利用する場合には、地面に穴を掘って、それらの容器が地表面より低くなるように埋めてください(でも、これは穴を掘る場所がない場合の最終手段です。お勧めできません)。 採土場は営巣活動が始まる前に作ります。コツノツツハナバチは一度学習した採土場を繰り返し利用するので、営巣開始後に採土場を作っても、すべてのメス蜂がそれを利用するようになるとは限りません。
採土場の作り方 採土場の作り方は次の通りです(1巣群程度の放飼密度の場合。大群の場合にはこの2〜4倍程度の面積が必要です)。地面に幅25〜40cm程度、長さ60cm以上で東西方向に細長く、深さ40〜50cmの穴を掘ります。この際、(特に穴の南側の壁面は)なるべく垂直(90度)に掘り下げます(これは、コツノツツハナバチの営巣時期に南中する太陽高度がおよそ68度(±5)なので、これより急角度に掘って、常に日陰となる部分を設けるためです。垂直が無理でもせめて75度以上には掘りましょう。東西方向に掘る理由も分かりますね?)。掘って出てきた土は、穴の南側横に山積みにします(下図のとおり)。コツノツツハナバチは粘土質の湿った土壌を好んで集めます。穴を東西方向に細長く掘り、土を穴の南側に盛り上げることによって、太陽光が穴内に射し込むことによる土の乾燥を軽減できます(上の写真のように正午頃でも南側の壁には日光が当たりません。それと同時に南側の地表の土の乾燥も軽減できるので、穴の南壁を長時間湿った状態に保てます)。 穴を掘り終えたら、穴の壁に水をかけて土を湿らせると同時に排水状態を確認します。いつまでも水が溜まったままのときは、営巣期間中にコツノツツハナバチが落ちて溺れ死ぬ可能性がありますので注意してください。
採土場への客土と土練り 穴内の土の粘り気が弱いときには(ほとんどの場合は掘っただけでは粘り気はありません)、水をかけて土を練っておきます。コツノツツハナバチは穴内の土が採りやすい場所(土質が良く、適度に湿っていて、足場のある場所)を選んで採土します。採土場の穴の南側の壁に小さな孔をたくさん作ってやると、そこをよく利用します(上の写真のとおり)。 穴内に砂礫が多かったり、土が砂質の場合には、粘土質土壌を客土します。掘り上げた土は硬くて練りにくいので、最初から客土するつもりでいた方が良いでしょう。一番良い土は山に行くとよく見かけられる赤土(赤色土壌)です。有機質をほとんど含まないので幼態の死亡率が高くならず、きめが細かいのでハチが塗布作業をしやすく、(仕切壁が)乾燥した後も壊れにくいという特徴があります。水田の底土が入手できるなら、それを使っても良いでしょう。
このようにして採土場を完成させると、後の管理は単純です。晴天日が続いて底土が乾燥しそうな時に水をかけてやり、土が常に湿った状態になるよう管理します。一度練ってデコボコにした土は、水をかけるだけで自然と(ハチにとって)ちょうど良い硬さになります(というより、なっている部分がどこかに存在します。このどこかに存在するちょうど良い部分を見つけると巣に帰る際に定位飛行をしてその位置を覚え、次回から同じ位置に飛来するようになります)。できればハチが活動しそうな日の朝〜昼にかけて1〜2回水をかけるようにすると完璧です。 採土場の評価 ハチの営巣活動が始まったら、採土場が適した状態にあるか確認します。採土行動を観察し、採土所要時間を計測します。 ![]() 「採土所要時間」は、ハチが採土場に着陸してから、土団子を口にくわえて飛び立つまでの時間です。この時間は最短で15秒くらいです(『生態 - 4b.採土と土壁(仕切壁)の作製』の項を参照)。ハチのなかには場所を何回か変えながら採土する個体もあります(当然、採土時間が長くなります)。このような個体も含めて平均で20〜30秒なら適した状態にあると言って良いでしょう。1分以上かかるようなら土が乾燥気味か、土自体が適していないかのどちらかです(場所が遠すぎるのは問題外です)。水を加えたり、土を練り直しても改善しないなら、客土からやり直しです(やり直しが嫌な人は、下の図とその解説をご覧ください)。
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遅放飼法は、コツノツツハナバチ(マメコバチ)の営巣開始日をリンゴの開花日と一致させるために、また開花前におこなわれる殺虫剤散布の影響を回避するために開発された放飼技術です。コツノツツハナバチは、自然状態ではオウトウが開花する頃(リンゴ開花の7〜10日前)から営巣活動を開始します。このため、リンゴ園で自然放置した場合、リンゴの開花前に営巣活動を開始することになります。大きなリンゴ園では(帰巣可能範囲内に)花粉源としては不適切な下草類しか開花していないため、貯食活動を開始できません。この時期に(有機リン系などの)殺虫剤が散布されるとコツノツツハナバチが死亡する危険性があります。この問題を回避する技術が遅放飼法です。 遅放飼法の手順 遅放飼法は、野外条件にある種巣(または種繭)を冷蔵庫で保管して放飼(出現)時期を遅らせるという放飼方法です。冷蔵庫の温度は5℃(±2℃)で、冷蔵庫内の湿度は高め(50〜70%以上)に設定します。 遅放飼法は種巣(または種繭)を冷蔵庫に移す時期によって2タイプに分けられます。
遅放飼法の問題点 遅放飼法は簡単でとても良さそうに思える放飼方法ですが、いくつかの問題点があります。
どうすれば良いか 工事中 |
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導入した種バチが健全で、放飼方法や巣箱の設置方法、使用農薬の種類などに問題がない、コツノツツハナバチの好む花もたくさんあり、出現時期と開花期も一致している、気温も比較的高い・・・にもかかわらず飛翔活動を行なっているハチの数が少ない、またはまだ開花量が十分あるのにもかかわらず活動しているハチの数が急に少なくなった。このような場合、鳥がコツノツツハナバチを食べてしまった可能性があります。コツノツツハナバチの天敵類のうち、最大の被害をもたらすのは鳥類です。 鳥は、人通りが少ない時間帯(特に早朝)にコツノツツハナバチをよく襲います。人通りが少ない場所に巣箱を設置している場合(果樹園はこれが普通)、日中でもハチたちを捕食します。集団で襲われた場合には1日でほぼ全滅した、ということも起こり得ます。気が付いた時にはもう手遅れ、ということはよくあることで、ハチが飛び始める前から防鳥対策をしておく必要があります。 コツノツツハナバチを食害する鳥類として、ヒヨドリ、ムクドリ、ツグミ、スズメ、カラスなどが報告されています。このうち、ヒヨドリ、ムクドリ、ツグミ、スズメは巣外で活動するコツノツツハナバチの成虫を、カラスは巣内の貯食物・幼虫・成虫を食べます。大きな被害をもたらす種類は地域によって異なり、青森県ではムクドリ、スズメ、長野県ではヒヨドリ、ツグミ、山形県ではヒヨドリ、カラス、宮城県ではヒヨドリ、スズメが特に問題となります。 コツノツツハナバチの天敵となるおもな鳥類とその加害の状況
地面を歩き回って餌を探すタイプの鳥(ムクドリ、ツグミ、スズメなど)の被害を防ぐには、巣箱の周りを広く防鳥ネットで覆う必要があります。巣箱の近くに補助的な花蜜源植物や採土場を準備している場合には、それも含めて防鳥ネットで囲みます。 花蜜源植物を準備していない場合、営巣前期間のコツノツツハナバチは園内に開花する下草(タンポポ類、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウなど)で吸蜜したり、花上で交尾します。このため、園地全体が鳥たちの食卓となってしまいます。しているところを襲われてしまいます。これを防ぐためには園地全体を防鳥ネットで囲む必要があります。しかし、それよりも補助的な花蜜源植物を巣箱の近くに植えて、下草を全部刈り取り、巣箱周辺だけをネットで覆った方が簡単です。 巣の外で休息している(= 太陽光で体を暖める行動)コツノツツハナバチが襲われる場合には、コツノツツハナバチが休息したがるもの(白っぽい石のようなもの、たとえばコンクリート板やブロック)を巣箱の前に並べて置くようにします。そうすると、コツノツツハナバチがそこに集まって休息するようになるので、防鳥ネットで囲んで守ることができます。巣箱の近くにコンクリート電柱やブロック塀がある場合、そこが鳥たちの食卓となることがあります。被害が大きいようなら、そこもネットで覆うか、巣箱を別の場所に移動させるしかありません。 作業小屋などの軒下に巣筒を吊り下げて飼養する場合、小屋の屋根の上が鳥たちの食卓となります。巣筒を設置している場所の上の屋根の、少なくとも幅が左右合わせて6m以上、奥行き4m以上をネットで覆うと良いです。 採土場も鳥たちの食卓になります。採土場も含めて防鳥ネットを張るようにするとともに、コツノツツハナバチが土を採りやすいよう採土場を常に適切な状態に管理することも重要です。
カラスは、コツノツツハナバチの巣筒を巣箱から引っ張り出し、くちばしで巣筒を器用に割ります。そして母バチが貯めた花粉団子や、発育途中の幼態、休眠中の成虫を食べます。このようなカラス害を何の防衛策も取らないで放置し続けると、巣箱内の巣筒が全部引っ張り出されて、ハチが全滅するようなことも起こります。一度コツノツツハナバチの巣(内容物)の味jを覚えたカラスは、防鳥ネットを破ってまでして巣を狙うようになります。ですから、カラスの被害が見られないからといって防鳥ネットを張らないのではなく、ハチの巣が餌になることを学習させないためにも、コツノツツハナバチを最初に導入する際から防鳥ネットを張るようにしてください。 もし、既にツツハナバチ類の巣の味を覚えたカラスがいる場合には、防鳥ネット設置だけでなく、巣箱の底面を地面から50cm以上高くする、巣箱の前方の地面に障害物を置いて(たとえば、支柱のような棒をたくさん立てるなど)近づけなくする、金属製の網(カラスが通過できないできるだけ広い網目のもの)で巣箱の前面をカバーする、などの対処方法を組み合わせると効果的です。
鳥類のうち、コツノツツハナバチの最大の天敵は何か?と聞かれれば、間違いなくヒヨドリと答えます。ヒヨドリによる被害は、おそらく温暖化の影響もあって増大する傾向にあります。 ヒヨドリによる食害は、巣から出現した直後、交尾時、休息時、吸蜜時、花粉花蜜採餌時、出巣・帰巣の途中などあらゆる時期に(コツノの活動期間中ずっと)、さまざまな場所(巣箱から遠く離れた場所でも)で起こります。このため、効果的な対処方法が少ないのです。 被害がまだ少ない場合には、巣箱の周りを防鳥ネットで覆うだけで済みます。このとき、巣箱の周りをできるだけ広く囲うように張ると効果的です。ヒヨドリは、ハチが帰巣時に飛行速度が落ちる場所(巣箱の近く)でホバーリングするようにして待ち構えて捕食することがあります。巣箱の近くにネットを張ると、ハチが飛行速度を落とす位置が集中するため、ヒヨドリにとっては捕食しやすくなります。 防鳥ネットの目合いが小さすぎると、ネット前でのハチの飛行速度低下が著しくなるので良くありません。また、金網のような鳥の目で認識しやすいものを張ると、近くでホバーリングできるので、これも良くありません。巣箱近くの通常の防鳥ネットとは別に、巣箱から3〜5mの位置に目合いの大きいネットを張るか、テグスを張り巡らしてヒヨドリがホバーリングしにくい(がハチは飛行速度を低下しなくても済む)環境を作ると良いでしょう。 ヒヨドリ害が大きい場合には、園地全体を防鳥ネットで覆うことになります。それでも被害が減らないというのもよくあることです。最終的にはヒヨドリの生息密度を減らすしか対処方法はありません。 園地面積が小さく、隣の人の園地や雑木林などが隣接する場合には、コツノツツハナバチは放飼園の外でも採餌活動を行なうことになります。したがって、自分の園地だけを防鳥ネットで覆っても防除効果はあまり期待できません。隣の園地の人にも防鳥ネットを張ってもらうか、あるいは雑木林のコツノツツハナバチが好んで訪花する樹木を伐採する、またはヒヨドリの生息密度を減らすなどして、被害を軽減するしかありません。 ヒヨドリは杉林のような高木となる針葉樹林を好んで活動の拠点としています。落葉広葉樹の葉が茂ればそこにも造巣するのでしょうが、それまでの間(つまりコツノツツハナバチが活動する時期)は、常緑の針葉樹は葉がよく茂っていて姿を隠しやすいのです。果樹園の近くに針葉樹林を植えるのは、鳥害を助長する行為です。防風林として植えられることもありますが、コツノツツハナバチ飼養にとっては良いことではありません。杉の木の近くに巣箱を設置するのは、絶対に避けるべきです。 |
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コツノツツハナバチの営巣活動が終了したら、巣筒を巣箱内に置いたまま翌春まで放置する人が多いようです(つまり、何も管理しない)。しかし、これは(ほとんどの場合)良くありません。営巣活動終了後には、適切な時期に適切な管理作業を行わないとコツノツツハナバチの増殖率が年々低下していきます。そのまま放置して何年かすると、適切な放飼密度以下にまでコツノツツハナバチの数が減少し、十分な受粉効果が得られなくなります。 受継営巣者(他蜂)の取り扱いについて この項は別のページに移動しました。 工事中 巣筒を設置したまま放置しておくと、他のハチ類(略して他蜂(たばち)。おもに筒孔類営巣性・借孔性のカリバチやハナバチの仲間)が飛来します。そしてコツノツツハナバチが利用しなかったヨシ筒やコツノツツハナバチの未完成巣に営巣します。コツノツツハナバチの未完成巣では入口側の空いている空間を利用して営巣することになります。これを受継営巣(じゅけいえいそう)と言います。コツノツツハナバチより遅れて出現するハチ類の育房が入口側を占拠することになります。そうすると翌年の春、(受継営巣したハチの種類によっては)出現期の早いコツノツツハナバチが巣から出れなくなります(他蜂の種類によっては、(繭や育房壁が柔らかい種類などでは、それらを壊して)出現できることもあります)。 このような被害はまだ良い方です。一番問題となるのは、受継営巣する他蜂の巣がコツノツツハナバチと共通の天敵類(カツオブシムシ類やナガヒョウホンムシ、クロヒラタコバチ類など)の発生を誘発することです。これらの他蜂には夏季に営巣活動する種類が多く、夏季はカツオブシムシ類などの成虫が分散して産卵できる場所を探しています。入口栓がしっかりしている完成巣ならこれらの進入を軽減できるのですが、未完成巣や(他蜂の)活動中の巣は無防備なので集中して狙われてしまいます。他蜂を寄主として発育した天敵類の次世代は、確実にコツノツツハナバチを加害します。 これらのハチ類のうち、ドロバチ類はガ類幼虫を餌として狩って巣内の育房に貯食するので、果樹園では有益昆虫(ガ類幼虫にとっては天敵)として機能します。このため、コツノツツハナバチと一緒にこれらのハチ類も積極的に保護して営巣させている人がおられます。 しかし、このような行為はコツノツツハナバチの適切な管理を怠っていることになります。もし、有益昆虫として保護してあげたいのであれば、コツノツツハナバチの飼養場所とは別の場所(数十メートル以上離れた場所)で行なって下さい。そして、コツノツツハナバチの場合より頻繁に巣筒の切開と更新を行なって下さい。そうしないと、これらのハチ類が減少するだけでなく、コツノツツハナバチが減少することになります。 このような被害を防止するためには、コツノツツハナバチの営巣活動が終了したら、すぐに巣筒(巣箱内のヨシ筒全部)を園地から回収したり、巣箱(の入口)を目合いの細かい網(1mm目)で覆ったりして、他の蜂類が侵入・営巣できないようにする必要があります。 回収する場合 工事中 網で覆う場合 巣箱の場合、巣箱全体を網で包んだり、入口部分だけを覆って外部と完全に遮断します。軒下に巣筒を取り付けている場合、種籾袋に入れたり網で包んだりして、北側の軒下に設置します(南側は、北側よりも寄生蜂に狙われやすいため)。後者の場合、天敵類による寄生を完全には防ぎきれません。できれば回収して保管した方が良いでしょう。 コツノツツハナバチや受継営巣する他蜂を加害する天敵類のなかには、1mm目の網でも進入を防ぎきれない種類のものがあります。これらも完全に防ぐためには、より目合いの細かい網で覆う必要があります。実際に「1mm目より細かい網が良い」と指導されている場合があります。しかし、目合いが細かすぎると夏季に巣箱内が高温になる可能性が出てきます(夏季の高温の影響については『生態』のページで解説)。1mm目でも防除効果は高いので、より細かい網にする必要はないと思います。 |
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巣筒の切開は、コツノツツハナバチ(マメコバチ)の健康状態(巣内で繁殖する天敵類の発生が少ない状態)を保つための重要な作業です。 巣筒の切開は、巣内で繭が完全に紡がれた後に行ないます。しかし、できれば繭内のコツノツツハナバチが柔らかい時期(前蛹〜羽化直後)に行なうのは避けます。羽化してから1ヵ月以上経てからが良いでしょう。この時期は地域によって異なります。仙台市の場合、作業適期は11月10日以降となります。 工事中
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