土地は基地にするためにあるのではなく
作物を作るためにあるのであり
海は軍艦を浮かべるためにあるのではなく
漁をするためにあるのであり
子どもは戦争で殺すためにあるのではなく
親子ともども幸せになるためにあるのです


1955年2月世界母親大会準備会での
イスラエル代表の訴えより

ああおとうとよ 君を泣く
君死にたもうことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃(やいば)をにぎらせて
人を殺せとおしえしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや

堺(さかい)の街のあきびとの
旧家をほこるあるじにて
親の名を継ぐ君なれば
君死にたもうことなかれ
旅順(りょじゅん)の城はほろぶとも
ほろびずとても 何事ぞ
君は知らじな あきびとの
家のおきてに無かりけり

君死にたもうことなかれ
すめらみことは 戦いに
おおみずからは出でまさね
かたみに人の血を流し
獣(けもの)の道に死ねよとは
死ぬるを人のほまれとは
大みこころの深ければ
もとよりいかで思(おぼ)されん


ああおとうとよ 戦いに
君死にたもうことなかれ
すぎにし秋を父ぎみに
おくれたまえる母ぎみは
なげきの中に いたましく
わが子を召され 家を守(も)り
安しと聞ける大御代(おおみよ)も
母のしら髪(が)はまさりぬる

暖簾(のれん)のかげに伏して泣く
あえかにわかき新妻(にいづま)を

君わするるや 思えるや
十月(とつき)も添(そ)わでわかれたる
少女(おとめ)ごころを思いみよ
この世ひとりの君ならで
ああまた誰をたのむべき
君死にたもうことなかれ



与謝野晶子
君死にたもうことなかれ
日本国憲法第9条

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、

国権の発動たる戦争と、

武力による威嚇又は武力の行使は、

国際紛争を解決する手段としては、

永久にこれを放棄する。

前項の目的を達するため、

陸海空軍その他の戦力は、

これを保持しない。

国の交戦権は、これを認めない。