Diary 2005. 5
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5月4日 (水)  尼崎・列車脱線事故

兵庫県尼崎市のJR宝塚線(福知山線)で25日朝起きた快速電車の脱線事故での死亡者は107人、負傷者は460人である。何とも言い難い、怒りに震える、あまりにも悲しすぎる大惨事である。
鉄道事故で死者が100人を超えたのは、1963年に161人が死亡した旧国鉄横須賀線鶴見事故以来で、この40年で勿論最悪だ。
経験11ヶ月、高見隆二郎運転士(23)は運転席に立った状態で、車体に下半身が挟まれながら右手で操作盤のレバーを握った状態のまま見つかったという。

一週間あまりたった現在、許せない問題が次々に浮かび上がってくる。
JR総連関係者の話によると、事故後の現在でさえ乗務員教育担当者は定規を振り回しながら「オーバーランはとんでもないことだ」と怒鳴り散らしているという。
事故後すぐに、事故にあった電車の車掌に対して「遅れを取り戻す為にスピードを上げていた事実などはない」などの嘘の証言を強要した疑いもありそうだ。

数々の問題が露見していく中、更に、事故車両には現役の2人の運転士まで同乗していたという問題が発覚したのだ。多くの周辺住民などまでが救助活動している最中、2人は人命救助など思いつきもせず、そのまま徒歩と電車を乗り継ぎ、それぞれの職場に向かい、運転業務に付いたというのだから驚きである。
現場での救出にも関わらず、上司も適切な指示もせず、その事実も隠していたというのである。同乗していた現役運転士の重要な証言が原因究明に役立つだろうと誰でもが思いつくはずのことを隠ぺいする魂胆までが見えてくるのである。わからなければ2人の存在そのものまでを隠し通すつもりだったのであろうか。
取材者からの疑問に答える会見での苦しい答弁にもまたJR西日本の体質が現れている。「気が動転しておりその場を立ち去った」と言うのだが、そんな気が動転しているような精神状態の者に通常運転させたというならもっと問題であろう。

多数の人命を預かる鉄道業務に従事するJR西日本という企業が、安全を二の次にし、現場のスタッフに自殺者まで出す過酷な業務と無理を強いる利益最優先を目指す体質が今回の事故を誘因したというのであれば、今回のこの大惨事は明らかに人災であったのだ、と言えるであろう。

また被害にあったマンション住民はJRに対して買い取りを求めていくようであるが、当然のことである。あれだけの被害者がでた住まいに誰が平然と住めるというのだ。事故当日、助からない方達は一時的にマンション駐輪場に置かれたらしいが、その姿を思い出しながら自転車を取りになど行けるはずがないというのは当たり前だといえる。
事故後、たった一時間ほどマンションを検査した国土交通省は、早々と「構造上問題がない」などと発表した時は非常に驚いたのである。精神的な問題などは全く考えていない無神経な発表だったとしか言い様がない。

1週間ほどして、マンション住民にはとりあえずJRが用意したマンションへの一時的な転居、あるいは賃貸料金1ヶ月15万円程度を支払うということになりはした。しかし、JR社員からは「ゴールデンウィーク中は近辺のホテルも混んでいるので、旅費は持つからどちらかへ温泉旅行でもされたらどうか」などと提案されたらしい。あれだけの事故を目の当たりにし、心の傷も癒えない人たちにそんなことが言える無神経さにただただ唖然とするばかりである。

最大の事故原因は、現時点では事故の発生したカーブでのスピードが108Kmだったことと急ブレーキだと考えられる。このスピードに耐えられずに脱線転覆したのであろう。脱線に至った正確な原因は今後の調査に委ねるしかないのだが、今回の大惨事への誘因となるJR西日本が抱えている様々な問題が次々に明らかになってくるたびに、これらの多すぎる諸問題が一挙に解決などできるわけもなく、列車運行に拭えない不安がこれからも付きまとうのである。

残されたご家族のどなたかがおっしゃっていたように、近頃の日本人の何かが緩んだこの状況が不気味に何やら不安をかき立てるのである。
最愛のご家族を亡くされた方達が「2度とこのような事故は起こさないで」と悲痛な叫びを上げるたびに、緩んだ精神を徹底的に改善して欲しいと思うのである。

国家、国民に何があっても最優先事項は後回し、政治生命だけを第一に考えた行動しかしない、我々国民が選んだ政治家に嫌気さす毎日である。
今、一番大事にしなければならない近隣アジアを無視し、このゴールデンウィーク中、せっせとアメリカ訪問する政治家のいかに多いことか。
拉致問題はじめ、北朝鮮ミサイル・核問題、靖国を含む中国問題、年金問題、公務員の高額給料、むだ遣い問題などなど、あきれた話は枚挙に暇が無いのである。


5月5日 (木)  JR西日本はもういらない

JR西日本はもういらない。そんなことさえ考えさせる出来事が事故後10日の間に次々発覚してくる。
JR宝塚線の脱線事故が起きた4月25日、JR西日本天王寺車掌区(大阪市天王寺区)の区長(53)ら社員43人が、ボウリング大会を催していたことがわかった。事故発生から約3時間後の午後0時半から約1時間半、催された。当時、現場の惨状がテレビなどで報じられていたし、13人は死傷者も出た事故だということを認識していたのだ。しかし、社員からは中止を求める声は上がらず、2ゲームを楽しんだという。43人は休暇を取っていた。このうち少なくとも22人(後に27人と判明)は大会終了後、近くの店で飲食をしていたという。その後、12人(後に15人と判明)は別の店で飲食、その内2人はさらに焼き肉店にも行っていたのだ。
午後1時過ぎ、同車掌区から区長に対して事故の状況を伝える連絡が2回にわたって携帯電話にあったが、区長は気づかなかった。同車掌区では26、27両日にも別の社員計約80人が開催する予定だったが、中止になったという。その後、区長は「事故は指令所からの一斉放送で知っていたが、状況を詳しく認識していなかった。非常に軽率だった」と反省しているというのだが。(〜5月5日、朝日新聞など〜)

同社はまず最初の会見では、記者からの「酒は飲んでいたのか」という質問に「酒は飲んでいなかった」とはっきりと答えた。その後の夜の記者会見では一転、一部酒を飲んでいたと事実関係を認め訂正した。嘘に嘘を重ねるからすぐにばれる構図が延々と続くのだ。
このJR西日本の会社ぐるみの隠ぺい体質には、怒りを越えて呆れ果てるばかりである。
同社の垣内剛社長は、今後の補償問題を考えてのことなのか、責任を取り辞任するという考えを表明しないのだが、NHKの海老沢会長の件などを思い起こせば、辞任に追い込まれるのは必至で時間の問題であるとどうして気づかないのか不思議である。

そもそも、03年12月のダイヤ改定で宝塚線の快速電車の停車駅が増えたにも関わらず、ラッシュ時などの所要時間は変わらず、一層のスピードアップが求められるようになった。カーブ手前の直線の制限速度は、91年3月に時速100キロから120キロに上げられていた。
レールの付け替えやダイヤ改定による高速化などによって、現場のカーブの危険性が高まっていたにもかかわらず、列車の速度を制限内に抑えることができる新型の自動列車停止装置(ATS―P)の設置などの安全対策を講じなかったことが、事故につながった可能性が大である。
宝塚線の安全施設は旧型の自動列車停止装置(ATS―SW)だった。新型設置完了予定は今年6月末と大幅に遅れていた。
現行のATS―SWでも、速度超過を感知すると自動的に非常ブレーキをかけることができるが、同社は今回の事故現場には設置していなかった。レール脇に付ける脱線防止ガードも「設置基準を満たしていなかった」との理由で未設置だったという。
利益最優先主義を改め設置を急いでいたならば防げた事故であったろうと思うと、まことに悔まれる。死亡者107人、負傷者460人、生涯苦しむその家族、知人はいったい何人になるのだろう。悔やんでも悔やみきれないのである。

明らかになってくる事実に、戦前からの旧国鉄時代とまったく変わらぬ、あるいはそれ以上かもしれないと思わせるJR西日本のどこまでも暗い体質がある。
社員教育と称する日勤教育は、肉体的以上と思われる精神的な暴力で運転士、車掌をとことん追いつめるているのである。現に精神的な苦痛を与えられたとして裁判中の現役運転士、あるいは、実際に自殺に追い込まれた運転士の裁判まで抱えていながらJR西日本は結局何も変わっていないということだ。
裁判中の現役運転士の職場でのやり取りを録音したテープを聞くと、実に胸くそ悪い。戦後まもなくの日本の戦争映画を見ているかのように、上官が部下をいじめる構図とまったく同じだということに驚いた。
今どきのこととは思えない、全てにおいてすれちがう暗い言葉のやり取りに驚愕したのである。
おそらく年齢的には戦争は体験していないとはいえ40代後半、50代の上司が部下である運転士、車掌に教育中というのだが、そこにはそれぞれの職務に役に立つ先輩としてのアドバイス、技術を含め精神的なことを教え伝える姿などはまったくないのだ。真剣に愛情を注ぎながら後輩を育てるなどの意識はまったくない。むしろこの上司達はあら探しといじめに日々生き甲斐を感じているかのごときにしか見えない。

こうしたJR西日本の暗い構図を見せられ、今回発覚した事故当時にボーリングをしていたという車掌達の行動から、何をどう解釈すればと思うのだが、全体がやはり「無責任でいい加減な体質」ということにつきるのだろう。どう民営化されようが、旧国鉄時代からの公務員意識は結局そう変わらず引き継がれているということなのだと思う。人命をあずかる業種だというところが恐ろしい。

JR西日本はもういらない。


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