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朝の唄 【6】 |
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オペレーターの仕事の最たるものは、現場での機体誘導に尽きるだろう。
だからといって普段の仕事は皆無であるわけでもない。パイロットと同様に、自らの用いる機械の調整や、予備部品の手配などもオペレーターの仕事のうちなのである。
「さてさて、お勤め終わりっと」
時計はもう十時を廻っていた。数週間掛けて徹底的に磨き上げた結果、総合評価『イケイケGOGO』、性能はどれも『やったぜ最高』までになっていた。
それにしてもふざけた評価である。まあ、ののみが喜んでいるから善しとしよう、と瀬戸口は考えていた。
「ののみも終わったよー」
機械物だけ室内に仕舞い、後はそのままにして上からカバーを掛けておく。後片付けは、至って簡単なものであった。
「よし。それじゃあ一緒に帰るか」
「うん」
仕事で遅くなった日は、瀬戸口がののみを家まで送って行くのが常である。さして遠い道程でもないのだが、瀬戸口の過保護っぷりが表れているのだった。
どぶ川べりの道を二人で並んで歩いていく。今はまだ深閑としているが、これから春夏にかけて、ここは随分と賑やかになるだろう。並び立つ木々を見れば、ふっくらとした蕾を付け始めている。
「桜も、もうすぐだな」
「ののみ、おはなみしたいなぁ」
桜と言ったら花見である。古今東西、老若男女問わず、日本人の心といえよう。
「いいな、花見。桜が咲いたら弁当持って来ような」
この時すでに、瀬戸口は腕によりをかけて『かわいいおべんと』を二人分作る所存であった。しかし無邪気な、それゆえ無情な一言で、それも儚く消える。
「うん! みんなで来よーね」
「…………ああ、そうだな」
瀬戸口の言葉に含まれた微かな落胆に、ののみは気づきもしない。楽しそうに全校参加の大お花見計画を立てて、瀬戸口に語り聞かせていた。
真っ直ぐ進んで右に折れると、そこはもうののみの家である。この辺の光景も、すっかり馴染みになってしまった。
二人は立ち止まった。
「ありがとーね、たかちゃん」
「どう致しまして。それじゃあ、ゆっくり寝るんだぞ」
「うん!」
ののみは部屋へ向かって駆けていく。しかし何かを思い立ったように、途中でくるりと振り返るのだ。
「たかちゃん、おやすみなさい〜」
ぶんぶんと、ののみは大きく手を振っている。瀬戸口もそれに応えて、右手を高く上げた。
「ああ、また明日な。一緒に登校するんだから、遅刻するなよ」
「ぶー。しないよう〜」
ののみが部屋に入るまで、ちゃんと見送る。部屋の明かりが灯ったのを確認してはじめて、瀬戸口は来たのと同じ道を戻っていくのだった。
さらさらと流れる水音が、夜の底で優しく響く。
どぶ川べりの道まで戻ったところで、瀬戸口の足は止まった。
「さて、今日はどこへ行こうかな」
瀬戸口隆之には特定の住居が存在しなかった。常に転々と別の女の家を渡り歩くその姿は、同性にとって見れば垂涎ものの騒ぎであろう。美少年は案外伊達ではなさそうだった。
しかし、そんな色男も、このところは急がし続きで寂しく学校にばかり寝泊りしていたのだ。こうやって誰かの家に行くのは久し振りであった。
「ここだと誰が一番近いかな……」
頭の中にプライベート仕様の地図を開き、現在地をそこにインプットする。ターゲットまでの距離、およそ850。推定到達時間、+300秒。
「あ〜あ。仕事のしすぎかも」
なんでもオペレーションしてしまう自分に呆れつつ、今日の寝床へ向かったのだった。
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to be continued..... |
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