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祇園草紙 【2】 |
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針のように細い月が、天高くまで昇って、頼りなげに下界を照らしていた。
夜ごと形を変化させるそれは、不実の象徴ともされている。どんなに駆けても付いて回る月が、自分を共犯者に仕立て上げているような錯覚に襲われるのだった。
血を透かした薄紅色の瞳は、闇に染まれば染まるほど濃く色付いていく。昏い夜を得意としているはずなのに、足取りは重く、思うように進むことが出来なかった。
気持ちは抵抗するが、身体がそれを許さない。距離は徐々に短くなっているのに、決心はまだ完全に固まっていないのだった。
自分はどうしてこんなに腑抜けになってしまったのだろうか。
今までは何の躊躇いもなく、多くの命を奪ってきた。女であろうと子供であろうと、情け容赦はかけない。上からの命令を、言われた通りに遂行する。心には、何の余韻も残らないほどだった。
見たもの全てが腰を抜かし、歯の根も合わぬほど震えながらそのちっぽけな命を取らぬようにと懇願する。しかし彼らがどんなに泣いて縋っても、慈悲の一つも窺わせずに斬って退けていた。
しかし、今の姿はどうしたことか。
迷い子のような足取りで、暗い森の中を彷徨っている。あまつさえ何度も足を止め、その時を少しでも遅らせているかのようだ。
これでは残忍で獰猛な鬼神と恐れられているのが、虚実のようである。
言いようのない不快感が、腹の底から滾ってくる。それを振り払うようにおのずと拳を作り、己の頭を力強く叩いた。容赦のないそれに、一瞬気が遠くなりかける。
しかし、これでもう迷いは消えた。目の醒めるような一撃に、己の信念を呼び戻させる。
心が決まった。
力強く土を踏みしめ、確実に一歩一歩進んでいく。
加減をしなかった所為で、まだ頭がずきずきと熱を持っている。しかしそのことが、却って有難かった。
忘れようと思っても、忘れられない面影がある。そのことを思い出す度に生じる胸を刺すような傷みを、誤魔化してくれるのだから。
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to be continued..... |
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