the Prince of Tennis
**parody**

それはとても晴れた日で 【1】
 

 桜も満開の時期を終えて、何枚もの花弁が性急に散っていく。薄紅に染まった雪のように、通り行く人々の身体に降り注いだ。風と共に頬をなぶり、柔らかい感触を残す。
 完璧すぎるほどの春だった。
 清明にして穏やかな空が広がり、道沿いは淡い色の絨毯で埋め尽くされている。
 そんな麗らかな陽気に申し訳ないほどの堅苦しい表情を浮かべて、手塚国光は駅へと向かう通りを歩いていた。貫禄すら感じられる足取りであるが、真新しい制服には若干のぎこちなさが残っている。それが辛うじて彼が新入生であることを物語っていた。
 目的地でもある青春学園は、都内屈指の名門にして一流と謳われる進学校である。そこの中等部に手塚は合格した。正式には今月から所属していることになっているが、実質は本日の入学式からであろう。
 入学試験を主席で通過した手塚は、新入生代表で挨拶をする役に任命されたのだ。
 知らせを受けたのは今月に入ってからである。電話を取った母は珍しく頬を紅潮させ、居間で食後の休憩を取っていた家族に報告した。祖父に至っては喜び勇んで観音開きの仏壇の前で、先祖たちに夜通しで語り明かす始末であった。しかし手塚本人はそれほどの感動も生じなかった。むしろ家族の盛り上がりように、乗り遅れてしまったと言えるかもしれない。
 周囲が騒げば騒ぐほど、冷静になっている自分がいた。試験なのだから誰かしらは必ず一番になるものだし、大事なのは入学してからの成績ではないだろうか――と、手塚は思う。
 新入生はおよそ五百人。例年の倍率からいっても、総受験者数はたかだか二千人であろう。二千分の一ごときでは大したことでもないだろうというのが、手塚の正直な感想であった。
 とにもかくにも半分事後承諾のような形で決定し、その所為で他の生徒たちよりも早く登校するよう言われていたのだ。事前の呼び出しを一切省いて、本番前にのみ軽くリハーサルを行うらしい。優秀な生徒だから大丈夫だろうというのが教師側の見解である。
 確かに手塚自身にも、そうしてくれる方が有難かった。何度も足を運ばずとも、今はメールなりファックスなりで連絡手段はどうにでもなる。無駄な時間もかからず、合理的な方法だろう。
 入学式であるから本来なら保護者同伴で登校するものだが、そのような事情もあって手塚は単身で先に学校へ向かったのだ。中学生にもなって保護者と共に歩くということに、多少の抵抗もあった。
 広い車道を挟んで駅が見える。横断歩道の前で手塚は立ち止まった。何台もの車が、勢いよく目の前を通過していく。
 通りを風が渡る。薄紅色の花弁が、ふわりと宙を舞う。
 歩行者用の信号が青に変わった。人の流れに逆らうことなく、手塚も駅構内へと飲み込まれていった。

to be continued.....

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同タイトル同人誌からの抜粋ですが、すべてをアップする予定はありません。
あらかじめご了承下さい。


update 7,Nov,2003

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