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ベイクド・ビーンズ 日本 vs 英国

英国の伝統的なランチョン・メニューに「ビーンズ・オン・トースト」があります。
トマトソースなどで煮込んだ豆(ベークド・ビーンズ)をカリカリに焼いたトーストの上にのせる、というだけの至極簡単な料理。 でも、家庭でちゃんと豆を煮て作れば、なかなか美味しいものです。
このメニューを日本で英国料理店を開いている英国人のオバハンがdanchyuという雑誌で紹介していました。
なんと! オバハンはア○ハタのベークド・ビーンズ缶を鍋に開けて温めたものをトーストにかけて出来あがり、とやってたのです。 わたくしはしっかり(本に向ってだけど)ツッコミいれましたね。
「オバハン、プロだろ〜がっ」
英国では「豆を煮る」なんて奇特な人はほとんどいないので、もっぱら缶詰を利用しているようです。 それは、別にいいんです、素人さんだし。でも、曲がりなりにもオバハンは料理人で店も開いている。自分煮た豆を使う、ぐらいしてもいいと思いません?
「英国人がよくやる方法」ということで缶詰を開けたというなら百歩譲りましょう。 でも、味をととのえる、ということも全くなし! もしかしたら、オバハンの料理は、○オハタの缶詰以下…? オバハンの店は結構お高いんですよ。 もし、一切手を加えてないアオ○タの煮豆がのったトーストが、店のメニューに載ってたりしたら、暴れてやる〜、と思ってしまいました。(店に行くつもりはないけれど)
このことを、遊びに行ったサイトでブツブツ言ってたら、ロンドン在住の人が「試しに」、と英国人が愛するハインツのベイクド・ビーンズの缶詰を送ってくれました。 そしてウチのご近所でアオ○タ製も、見つけたので食べ比べをすることにしました。 で、結論は…。

すごく「意外」なのですが、ハインツ君の勝ち〜!でございます。 英国の悪名高い?缶詰の中じゃしごく「まっとう」な味でした。 覚悟して口に入れたら、けっこうイケたんで面食らってしまった。
対するアオハ○のものは、すごく甘〜いんです。なんか妙な甘さ。 当然そのままじゃ「ぺっぺっ」というような味だったんで、醤油を入れてみたり、チリソースを入れてみたりして何とか食べられるレベルまで引き上げましたが、それでもイマイチ。

ということは、あのオバハンの舌(ベロ)と料理の腕は…ううう、考えただけでも怖ろしい。 たしか店は市ヶ谷辺りにあったはず。 間違っても入らないほうがいいですわよ。(2000/07/25 )

トマトのチャツネ

今日の朝食は英国人を気取ってチーズ・オン・トースト。
このメニューは本当はランチョンで、英国人は朝から食べないとは思いますが、ここは日本だからいいや。 イギリスパンにバターを塗ってチェダー・チーズを乗せてトースターで焼くだけ。 付け合わせに5月に作って瓶詰めにして寝かせておいたトマトのチャツネを出すことにしました。 チーズ・オン・トーストにはこれ、がお約束らしい。
本当はこのチャツネ、レシピでは出盛りの生トマトで作ることになっているのですが時期が早かったので缶詰の水煮トマトを使いました。この頃は真夏でも露地トマトにお目にかかるのは至難のワザだったりするけど。
トマトを粗くつぶしてピクルス用のビネガーと唐辛子やドライプルーン、マスタードシードなどを入れて煮詰める。 出来たばかりはまだ味が荒々しいので、3〜4ヶ月寝かせるわけです。 これがめんどくさかったら粒状のトマトケチャップに唐辛子を加えたお手軽版にしてもよいと思う。そうしたらすぐに食べることが出来ます。さてどうなっているかな。 …ん、よしよし、味が馴染んで美味しくなっている。 英国人もこういうの考えるなんて結構やるじゃない。 まぁ、かの国のホンモノを食べたことがないから何ともいえないのだけど。
イギリス帰りの友人が言うには「同じキャ○○ルの缶詰でも、イギリスのとフランスのは全然味が違うのよ。フランスで売られている方が断然美味しい!」のだそうです。 フランスに旅行に行った時は買い込んだりしたらしい。 「ハインツのシチュード・ビーンズについては「英国産でも美味しかったけど」と言ってました。 なるほど、シチュード・ビーンズの不味さはやはり日本のア○ハタに軍配が上がるのね。 今度はアメリカ産もどっかから調達して比較してみようかな。

英国はペースト類は「???」というものはありますが、ジャムやマーマレード類は美味しいものが多いと思います。 正式のイングリッシュ・ブレックファストのトーストにつけるのは、必ずマーマレードでジャムではないというこだわりが、「らしく」て可笑しいですね。 「どうしてジャムではいけないの?」と訊いても「そういう風に決まっている」という答えじゃなかったかしら。
わたくしは特にウィスキーを入れたマーマレードが好きです。(2000/09/19)

星を見つめるイワシ

昨日のオフ会で借りた英国料理の本をぱらぱら。この手の本は最初から熱心に読むより、パラッとめくって目に付いたところを読むのが楽しい。で、「イワシ」
英国ではつい最近まで生のイワシを調理して食べるということがほとんどなかったそうです。 オイルサーディンやアンチョビの塩漬けなど缶詰や瓶詰めで売られていることが多い。 生のマイワシが魚屋に並ぶようになったけど、料理書にもイワシの項がないのだそう。いったいどういう風に食べているのだ、英国人。 やっぱりフライかしらん、揚げ物好きだし。
そんな英国でもコーンウォール地方には名物のイワシ料理があるそうです。 その名も「Star Gazing Pie」(星を見つめるパイ) イワシの頭がパイ皮から飛び出ているんですって。 うひひひ、想像しただけで笑ってしまった。 星を見つめるイワシがずらっと並んでいたらさぞかし壮観だろうなぁ。 英国人らしいジョークですよね。

この本はロンドンで料理教室を開いている日本人が書いたもの。 駐在員の奥さま向けということで、料理書というより日本とはだいぶ事情が違う英国の生鮮食材の指南書という感じです。 ちゃんとレシピとして載っているのはパンケーキぐらいかな。
この本の出版元の欧州総局長が「イギリスの日常食で生活していると、思わずイギリス人に猛省を促したくなる時がある」と巻頭に書いているのには笑ってしまった。(2000/09/21)

ジャガイモ三昧

本屋で「料理王国」を立ち読み。 今月号はジャガイモを巡る欧州お国事情。ヨーロッパではジャガイモは主食!パンよりも愛されている食材です。そして…
フランスとドイツとアイルランドはちゃんとしたお料理が紹介されてそれなりに美味しそうな写真が。しか〜しっ、イギリスは…(笑)
ロンドン在住の知人によると、イギリス人のジャガイモへの愛はヨーロッパ一といっていいほどだそうです。「料理王国」のレポートにも同じことが書いてあって朝、昼、晩全て「ジャガイモだけ」でもよいらしい。お昼ご飯はジャガイモ1個ということもある、って。えええ?
一応「ジャケット・ポテト」なるものを食するそうです。ジャケット・ポテトはいわゆるベイクド・ポテトのことで、オーソドックスなのは焼きあがったホクホクのおジャガに切りこみを入れてバター塗ったくって食べる、これですね。ご家庭ではこのシンプルな食べ方が愛されているようですが、パブやデリだとこれだけじゃお金をとるのに ちと、となるのでいろいろな具を挟んで売る。この頃はラタトゥイユ入りなんていうのも出てきているそうです。
これだけじゃなんかサビシイ、と日本人は思うかもしれないけど、日本人だって「おにぎり1個」ですませたりすることもあるからそれと同じ感覚、と書いてありました。日本人が夜遅く帰って「御茶漬けを軽くさらさら」という感覚でジャガイモを食べる、ということもあるらしいです。
はぁ、そうなのかぁ。ジャガイモ=おにぎりor御茶漬けねぇ。ベイクド・ポテトはわたくしも大好き。ジャガイモ本来の美味しさが楽しめますよね。でも朝・昼・晩、イモだけというのもねぇ。日本の方が食のヴァリエーションつけるでしょ。
ジャケット・ポテトと共に英国人の好物の双璧がフライド・ポテト。どんな料理でもフライドポテトがドサ〜ッとついてくる。メインディッシュに覆い被さったフライドポテトの写真(何の料理か判らない)及びジャケット・ポテトの写真も載っていたけど、写真うつりが悪いのか、他の国の料理に比べて美味しそうに見えませんでした。なんか、気の毒。
ところで、英国人男性はジャガイモ以外の野菜は食べない、という偏食野郎もかなりいるそうです。そしてマーマイトを食べるのね。げ〜。

「マーマイト」は「ベジマイト」と並んでビール酵母から作られたペーストです。英国系の人間はこれをパンやクラッカーにつけて食する。言わば国民食のようなものですね。 味は…英国系以外の人間はまず食べないと思います。(2000/09/11)

英国人とパイ

「料理王国」のミニ特集は「パイ」。
お菓子の方より料理パイを中心に記事が組まれています。日本の仏レストランの有名どころのシェフのパイ料理競演! がメインです。さすがにフレンチ、どれも美味しそう! 増井和子さんが著書で書いた「ピッカピカ、健康優良児のほっぺたのよう」なパイがずらずらっと並んでいる。 熱々のパイにナイフを入れると、そこから具の匂いがほわっと立ち上ってきそうな写真の数々…ううう、涎ものだわ。 お値段張るんでしょうけど。

そして打って変わって地味〜なのが、英国のパイの写真。英国人と言えばプディングとパイ! マザーグースにも歌われるぐらい、かの国の人民はパイが大好きだけど、わたくし達が考えるパイの定義とはちと違う。 どうみてもパイに見えないもの、例えばパイ皮でなくマッシュポテトを使ってたってパイと呼ぶ。 英国人にとってパイとは具をなにかで覆ったもの、なのだそうです。
もちろんバターを練り込んだり折り込んだりしたパイ皮を使ったものも沢山ありますが、これもキャセロールに具を入れてパイ皮で覆って焼く方法が多い模様。 考えてみたらオーブンさえあれば冷凍パイシートと缶詰やレトルトを使って簡単に出来てしまう料理でもある。 しかも見てくれは豪華。 この記事を書いている人は、旅行中にキッチン付きの宿泊施設でダンナ(英国人)が「パイを焼こう」と言ってめん棒代わりにビール瓶を持ち出してきて生地作りから始めたんでびっくりしたらしい。 でもパイ皮は母親がよく作っていたのでダンナにとって大仕事という感覚はないのですって。 練り込みパイは失敗が少ないのでご家庭でも生地から作ったりしているらしい。

あ、余談ですが、フードプロセッサーを使うと練り込みパイは上手くできますよ。 バターと小麦粉をきれいにそぼろ状に出来てしかも手も汚れない。クッキーやスコーン作りの時もお勧めです。 フード・プロセッサーをお持ちの方は試してみてね。

英国人はパイを食する時は単独ではなく、必ずソースや付け合わせを添える。 まぁ、よくある光景に思えますが、その添え物がハンパじゃない! マッシュ・ポテトがど〜ん!ソースがベチャ〜! メインはどっちだというくらいのディッシュです。
特にスウィートの方は…カスタード・ソースでパイの姿が見えない! 記事の筆者曰く「カスタードの海に沈む潜水艦」のような状態。 「クレーム・アングレーズ」といわれるぐらいのものだから、もちろん英国人は皿から溢れんばかりのそれもキレイに食べてしまう。 わたくしだって熱々のパイにアイスクリームを添えたり、カスタードクリームをかけたりするのは好きだけど、英国のそれは写真を見ただけでげんなりのシロモノでした。

ディック・フランシスの「標的」では、サバイバルの達人の主人公が缶詰とクラッカーを使ってなんとかパイ料理らしきものを作り出す。 場所は原野ではなく、なんと牧場主のお屋敷。 大金持ちなのに、食べることに無頓着な親子と自分の為に知恵を絞った料理がこれでした。 息子なんて「ごちそうだ!」と喜んじゃうんだからねぇ。 この親子、ベロが典型的な英国人でフレンチなんぞは受けつけないらしい。 女房(息子の母親)と別れた原因の一つが、彼女が「料理研究家」だったからというのが可笑しい。 ワケの判らん料理を食べさせられて辟易したらしい。 でも女房が出て行った後の食事が、毎日冷凍のビーフサンドイッチと冷凍ピッツアというのは、あまりにも…。 お金はあるのに〜。 内心飽き飽きしていても食生活を変えられないのが英国人なのだろうか。 なかなか魅力的な親子ではあるのですけどねぇ。(2000/10/18)

えげれす の味 「You LOVE it or You HATE it」

ロンドン在住の友人Mさんからの「なんじゃこりゃ」の英国ジャンク・フード類が遂にやって来ました。Mさん、運び屋してくれたFさん、そしてSさん、どうもありがとう! 順次味見をして、結果をご報告いたします〜。

まず「マーマイト(MARMITE)」。 これはトーストに塗るペーストです。色は真っ黒。一瞬チョコレート・ペーストか、とも思いますがニオイですぐに違うと判ります。
そのニオイとは…インスタント・ブイヨンを濃縮して「強力わかもと」を振りかけたような感じ。 そして味の方は…最初に塩味がガッとくる。 そのわりにはしょっぱさは後味として残りません。 で、焦げたようなアミノ酸系の味がするんだけどすごく薄っぺらで旨味というものが全くない。 焦げ味もただ焦げただけ、というのが「えげれす」ですな。 本来焦げ味は旨味に通じるもののはず。肉や魚を焼く時は焦げ目をつける。 カラメルもそうだし、ご飯のオコゲもそう。 考えてみると焦がすというのは食材が元から持っている甘味を引き出して旨味に変える手法なのかもしれません。 ところが、マーマイトは塩が強いだけで「甘」の部分が一切ない。
う〜ん、これってグレービー・ソースの味だわ。 わたくしはロースト・ビーフに添えるグレービー・ソースって美味しいと思わないんですよね。なんと言うか底が浅い味。 邪道だけど、醤油+ワサビ又は醤油+辛子が一番美味しい! グレービーかけて食べるんだったらトマトケチャップかけたほうがマシかも。

この妙ちくりんなモノが英国人に愛される?のはこの「グレービー風味」のせいかもしれません。 ただ愛していても「うまい」モノとは思ってないんじゃないかな。
もちろんマーマイトがキライな英国人もたくさんいて、英国を代表する「おえ〜」な食品としても名を轟かせてもいる。 CMのキャッチフレーズが「You LOVE it or You HATE it」というのが、さすがブラックジョークのお国柄。

面白いことにこの食品、動物性の材料は一切使ってないんです。 イーストや塩、カラメル、ビタミンなどを混ぜ合わせて作っている。 あ、カラメルは単なる色付け用なんじゃないかしら。なので、ベジタリアンもOKですって。 水で薄めてスープを作って飲むというヤツもいるらしい。おえ〜。 まぁ、栄養の塊ですからねぇ。

クマに舐めさせたら「こんなのパンに塗るぐらいなら、納豆をパンに乗せて食った方がマシ」だとさ。 ちなみにクマは納豆が大嫌いです。

次に「ツィグレッツ(twiglets)」。
なんとマーマイトを練り込んだスナック菓子です。 実はMさんの方からやって来る前にツィグレッツは食べていたの。 去年まで英国に住んでいた友人とお喋りしている時にツィグレッツの話題になって、彼女が「小袋があるから」とくれたのでした。
Mさんは何故か年に1、2度は買って全部平らげてしまうと言ってたけど、友人も「マーマイトはオェだけど、ツィグレッツは食べちゃうのよね〜。 ビールに合うの」とのこと。
貰って帰ってテーブルの上にちょっと置いてたら、クマがいきなりガッと開けて、バリバリッ…! 「なんだ、このヘンな味は???」あああ〜、わたくしの許しも得ずに。 『食い意地が張ったクマが民家を荒らす図』を思い起こしてね。
やはり「ヘンな味」としか言い様がありませんね。 最初にしょっぱい、そして焦げ。あとは何も無し。 でも、マーマイト自体の強烈さは薄れているんで何となく続け様に食べることが出来る。 なるほどビールのアテにはよいかもね。 89%脂肪分カットらしいから、カロリーを気にする向きには特に。 ただし英国では、ということで、日本ではわざわざ食べるものじゃない。 日本には煎餅、おかきという素晴らしい食べ物があるものねぇ。 同じアミノ酸系でも、旨味が口の中に広がる深い味。 これさえあればツィグレッツなんて…と思うけど、イマドキのお子ちゃまたちはハマってボリボリ、になるかもしれない。 ジャンクフードにまみれてちょっとベロがおかしくなってきているものね。