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[7922]浅草3結4頭
=八卦(関東)
=12/04/17(Tue)23:33



敬称略です。



1.鈴木ミント

 大正詩人の叙情的な詩の朗読に、心安らぐ音楽をつけました。妖精ともかげろうとも見える5人が、バレエのステップで軽やかに。
 詩の改行ごとに音が途切れると、凍りつくように動作を停止させ、そのたびに深い断絶感を味わいます。そのときふと、行間に漂う余韻を味わいます。
 はねる足元、泳ぐように揺らす腕、腕の先に背後から回した薄く透けるベールが、かげろうの羽のように広がって、動きに合わせて流れたり揺れたり…
 形態模写までおり込んで、ちょっと神秘的なシーンになりました。

 花道上りは穏やかな曲で、エレキギターの弦が哭き、アコースティックギターがそれをなだめるように優しく包みます。恥じらうように胸を手で隠し、宙の一点を見つめたまま穏やかな表情で進みます。
 花道を行く間に照らす淡い黄色と菫色。盆に移ると、目の覚めるような赤と青の光に染まります。
 オルガンのように響くシンセサイザーの分厚い和音が心地よく、瞑想へと誘います。
 トライアングルを震わす音、鉄琴の澄みきった音色に彩られて、盆に坐して、体の動きを止めて、指先をたなびかせて…瞳に浮かぶのは、もの思わしげな色。
…寂滅へ、心は自由な境地に遊びます。

 背を向けた立姿を、腰まで届く長いブロンド・ヘアーが覆って、きらきらと反射します。
 腰巻を取るのと、背後の舞台で幕が左右に開くタイミングが重なって、後光さすような光の海に、溶け込むようにしてその姿は消えてゆきました。



2.はるか悠

 母さん、あれが二重橋よ…とは言わないでしょうが、スカイツリーの姿に重ねる、当時の東京タワーの偉容を、母娘が仰ぎ見るシーンから始めます。懐かしき昭和年代の香り。
 買い物籠下げ、中間色でコーディネートした普段着、流行りの水玉模様、パーマで縮らした髪。
 ちゃぶ台、4本足のテレビ、そして極め付けは東京オリンピックの応援歌。
 セピア色に染まった古き良き時代の面影を。コント仕立てで描きます。
 手旗信号風の素朴な群舞はマスゲームを思わせて、5人で爽やかに締めくくります。

 家族団欒のあとに、潜在的な欲望…主婦のよろめきへ。
 倦んだ日常への反動からか、背徳の甘い蜜につい誘われて、エプロンを外してから先は、現実ともテレビの中とも区別がつかず…うたかたの夢のなか。
 昭和歌謡のちょっと淫靡でモダンなムードに包まれて、若妻の艶技はいきいきと若やいで見えます。
 メリハリのきいた3連のポーズで揺さぶって、コケティッシュな姿態にアルカイックな笑みで、まとめます。



3.昴

 花の銀座でランデヴー。
 彼女は白地のワンピースでしとやかに装って、お相手を待ちかねます。
 彼氏ときたら、落ち着いた茶系のチェックの背広でしゃれて、靴磨き相手に長談義。
 口をついて出るのは彼女の自慢ばかり、容姿、気立てを礼賛し尽くしますが、ならばさっさと待ち合わせ場所に急いでほしいもの。
 素人芸でタップダンスなぞ披露して、とっぷり油を売りました。

 わんぱくな靴磨きの目を見張らせてから、気心の知れた恋人たちのダンスに靴磨きも加わって、3人3様のタップダンス。肩のゆすり方、膝の揺れ具合、それぞれ個性があっておもしろみがあります。
 いつも心にスウィングジャズの歌…、踊る踊りはジタバーグ…
 ゆったりとしたテンポにのどかな歌唱の、昭和歌謡に包まれて、古いキネマを覗いたようでした。

 ベッド着は長身を覆う情熱的なスカーレッドに、胸元を黒い生地で縁取ってアクセント。
 立ちポーズの凛々しさから、なよなよと盆に座り込む慎ましやかな表情に至るまで、手数をかけて丁寧に作り込みます。
 長い睫、濡れた瞳、寡黙そうでさみしげな表情で、屈託なくのびのびとしたベッド。スラリとした肢体でポーズは見栄えがします。
 流行のグループ・サウンズで、湘南の強い陽射しを浴びるようにして、情熱的な歌声に合わせ、肩、肘、手首をゆらりと流すとき、ムチを振るうようにしなやかな動きで、目を引きつけます。



4.浜野蘭

 舞台左右から1/3ずつ張り出した白い幕。それをスクリーン替わりにして、イルカのフリッパーとともに海洋での散歩を楽しみます。
 サファイヤ、コバルト、エメラルド、目に鮮やかな色彩に包まれて、水面に向けて上昇するイルカや、花畑のような珊瑚礁の画像がスクリーからこぼれんばかりに埋め尽くします。
 南国風ののどかな民族音楽風なコーラスに合わせて、現実とは隔絶した夢のような世界へと運ばれます。
 踊り子7人が白いコスチュームで、ラッパ状に広がる袖をたなびかせたところは、むなびれを揺らすよう。ふわふわと、泳ぐように動かせば天女の羽衣のよう、重力から解き放たれたように優雅に振る舞います。

 波のさざめき、水泡のはじける音、ウィスパー・ボイスに包まれて、メインは横たわったまま移動台で運ばれます。
 入り江に迷い込んだイルカよろしく、つぶらな瞳、人なつこい表情を見せて、膝下をフィンであおるように揺らします。やおら立ち上がって、2歩、3歩と盆に踏み込みます。
 それまでの重たいマゼンダ系の照明が、クールなブルーとイエローの照明にパッと変わると、途端にすがすがしい印象に変わります。
 澄んだ歌声で口当たりのよいバラードで、幸福感に包まれて、のびのびと演じます。
 スプリット、腰上げのL、しゃちほこと、無理なく連ねてから、花道戻りで精悍にブリッジへ。面白いようにキメて、爽快に締めくくります。



5.叶咲ゆめ

 桃から生まれた桃太郎みたい、デンマーク産の親指姫。
 チューリップの花弁に囲まれ花芯のように、縮こまっていたそうな。
 若芽のような萌葱色のドレスにくるまって、つややかな黒髪にちょこんとティアラをのせて…
 初々しいそのお顔は、無垢そのもの。
 笑ってくれるかなぁ、笑うと可愛いだろうなぁ…と、長い花道を渡る前から、見るものは期待に胸を膨らませます。

 薄手の白い幕の向こうから、メインに後光が射すように、ミラーボールの光が散乱します。おっとりとしたクラシック風の序曲は神秘的。ヴィーナスの誕生を祝福します。
 コミカルに不協和音を奏でる曲が続き、ユーモラスな掛け合いのミュージカル風なソングへ… 
 バックの4人が扮するもぐらもヒキガエルも、……5,6,7,8! 派手にカウントをとってみせ、懸命にメインを引き立て、デビュー新人を花道に送り出します。

 目に涙をためるわけでもありません、口元にテレ笑いを浮かべるわけでもありません。
 生まれたばかりの親指姫は、まっさらな世界への期待に胸を膨らませて、勇んで踊りまくります。
 長い長いベッド曲は、悠然としたテンポで、切れの良いスタッカートのリズムを刻みます。はやる心を抑えて、曲にとけ込んで、体の中からわき起こる衝動に身を任せたとき…
 流麗なサイドステップに、快活なシェイク・ボディを繰り出して、驚かせます。



6.shion

 コインを入れ、マシーンがあたたまると、ミュージック・スタート!
 プレイヤーは、敵機を撃ち落すのでもなく、牌を並べるのでもなく、スクリーン上の虚像(バーチャル)に合わせて、生身(リアル)の肉体で踊りまくる趣向です。
 よおぉし、やったる!!!

 さんざん聴いた33年前のディスコ・ナンバーにのせて、等身大の虚像2体(バーチャル)が、体にフィットした白いコスチュームで軽やかにエクソサイズ。生身(リアル)は負けじと、振りを受け渡すように軽妙なステップでお返しします。
 古びたスタイル、風通しのいい音作りで、タメをきかせます。雲を踏むようにふわふわと、ネコのように柔らかいステップ、ヒップホップ調に足腰の関節をなめらかに動かしたら、スパッとキメ! ボールを投げるように振りかぶると、軽くウェーブした長髪がきれいになびきます。
 パーカーをゆったりと着こなして、颯爽に演じ、惜しみない拍手を浴びました。

 花道上りを歩く姿は、メカニカルなリズムに対し、ランダムにブレークする不規則な動きを挟んで、崩します。
 瞳に優しい光を宿し、慈しむような表情見せて、盆での立ち姿。
 ラッピングしたような結び目をほどいて衣装を剥いで、捧げるようにさらします。
 祝福する歌の詞に合わせて投げキッス。ハイトーンの歌声、ピュアな歌詞、その場を幸福感で包みます。



7.伊沢千夏

 Ahaaa………、Aha!
 憑りつかれたような絶叫が、頭蓋骨の中で反響します。
 速射砲のようなギター、ギャロップするようなドラム、耳をつんざくハードロックが狂気に駆り立てます。
 ボンデージ姿の7人揃って、ステージの縁までせり出して客席をにらみつけ、踵を返して持ち場につきます。
 メインは白(エンボス調)、他の6人は黄土色の打掛をボンデージの上から羽織り、引きずりながら翻したりして、刺すような視線を配って手踊りへ。

 大音響のなか、録音されたドラミングを、生の和太鼓が追いかけます。(4人)
 タッタタ、タァータ、と、ギャロップするような特徴的なリズムを、こん棒のようなバチでもって力づくで押し込みます。平太鼓を3つ並べて流れるようなバチさばきで、ティンパニーのように器用に扱います。
 一方、3人の踊り手は、口元にニヒルな笑みを浮かべ冷たい視線を放ち、緊張感あふれるリズムに突き上げられて、一気呵成に踊ります。

 花道上りは悩ましげな視線に上気した顔で、膝を浅く沈めて腰を揺れるに任せます。
 素肌にチェーンがからみつき、黒いブーツが印象的でエロティック。
 ベッドはナイーブな日本語のロック・バラードで。
 声を震わせ絞り出すようにして、直情的に訴えかけるとき、メッセージは意外にもすんなりと心に届きます。
 片膝つきのLで、下向けた視線をゆっくりと180度回して天井に向けたとき、視線ひとつでスケール大きく感じさせます。
 嘆くようなフレーズに合わせて息の長いポーズの連鎖、曲の魅力を引き出します。



8.フィナーレ

 おきゃんな小娘たちが、ダンスホールでジルバ!
 いなせな水兵さんにエスコートされて、50’sの世相を色濃く映します。
 1954年、1955年と、R&Rの胎動期。
 古い蓄音機から流れる、いきのいいロカビリー。アップテンポのリズムに合わせて、軽く合わせるタンバリン。
 ♪あんたの思いやりが欲しかったんだぜ、
    Anyway you do とくくります。





                                以上

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