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[7958]浅草11頭・中
=八卦(関東)
=13/11/29(Fri)00:39


敬称略です。



1.ai

 マドンナもレディ・ガガも精力的にワールド・ツアーを敢行しますが、
 遡ること78年前、単身日本に乗り込んできていたのは、ベティさん。
 くりくりした眼、ふっくらした頬、プードルの毛並のようにカールした髪が、頬にかかります。
 そして、グラマーでエロカワ!!
 愛らしいキャラをスクリーンで紹介し、続いて映像から抜け出したベティさんが、
 生身の体の魅力を惜しげもなくさらすという趣向です。

 オープニングは、大きなちょうちんの中からあでやかなyukata風の衣装で登場。
 ゆったりと羽織ると、ズーチャ、ズーチャとゆるやかなジャズに衣装をゆらめかせます。
 クラリネットやサックスが転がすようにフレーズを奏でると、
タップを踏むように軽やかに。
 ピアノがなだらかに旋律を弾くと、フロアをなめるようにハイヒールを運びます。

 愛嬌をふりまき、ウィンク、キッス!
 キュートな魅力で、一挙手一投足に目を離せません。
 トレードマークの真っ赤なミニドレスからもろ肌へ、
抜けるように白い肌が目に焼きつきます。

 憂いを帯びた表情で優しく癒すベッドから、喝采を浴びて一礼、立ち上がりへ。
 最後はバーレスク風の陽気な演出で、1曲たっぷり跳ね回ります。
 甘えたような、あけすけなスマイルで、会場は幸せな気分で満たされます。
 さあ、みなさんごいっしょに…

 ♪Boop-Oop-A-Doop



2.有村沙耶

「火の用心…… カチ、カチ…」
 呼ばわる声が聞こえれば、外はもう夕まぐれ。
 芸者遊びに明け暮れていた若旦那さんも、腰をあげ、
 なじみの芸者に別れを告げました。

 つい今しがたまで、野球拳でどんちゃん騒ぎを繰り広げていたお座敷も、
 ひっそりと静まり返っています。
「若旦那ったら、もう可笑しくて可笑しくて…」
 そう口にしてはみたものの、芸者の心のうちの寂しさは拭えません。

 カラコロと琴の音が繊細に響いて、女心をかき乱します。
 朱の襦袢をぱっとはだけて、しばらく立ち尽くし、裸足で盆に駆け寄ります。

 ベッドでは、わびしい女心のうちをせつせつと綴ります。
 捨てられた女の諦めの念って、どうでしょうか、ねぇ。

♪バカだねぇ、バカだねぇ…、と、
 悔恨と自嘲との間で揺れる心。
 それでも男の影にすがりつこうとする思いを抑えきれません。

  ♪流れるなぁ、涙ぁ、心でとまれぇ…

 でも「バカ」な女ときたら、去りゆく男を笑顔で送り出すに違いありません。

 そんなやるせない曲想を、抑制のきかせて淡々とした演技でこなし、
 歌詞を引き立てて感情移入を促します。
 哀れを誘うか弱い女性像かと演じるのかと思いきや、凛としてたくましく、
したたかな「をんな」に見えたのが、ちょっと意外でした。



3.彩音しゅり

 カラス女とかかしさんの、可笑しくて、なんとなく懐かしいラブ・ストーリー。
 ハッピーエンドは夢落ちで。

 カラス女は、黒い羽根飾りで露出度の高い衣装に、黒のブーツでなまめかしく。
 純朴で、イケてないかかしさんは、カラス女を見初めてのぼせ上ります。
 くどいてくどいて、くどきまくっても……って、あれっ、くっついちゃうの!?

 彼女の柔らかな膝枕、まさぐればしっとりした肌…
 …夢の中で、かかしさんは深い眠りに落ちました。

 カラス女は解き放たれて、自由奔放なダンスを繰り広げます。

 花道上りはボサノバ風なサウンドでのびやかに。
 野太いベースが官能的、ドラムは颯爽と、
 フルートは軽いタッチでくつろがせます。

 軽やかな連続ターンをゆるやかに。
 腕の先、脚の先を軸から遠回りさせて、泳がせます。
 ブレのない動きで、ターンの軌跡がスローモーションのように克明に見えます。

 わずかな風に羽毛が舞い上がるのを見るような、繊細なベッドを繰り広げます。
 脚、腰が浮遊して、ポーズからポーズへと切れ目なく移行します。
 変幻自在な動きに引き込まれ、陶酔する一瞬です。



4.藤咲茉莉花

 幕が開きしづしづと、着物姿の夫婦連れが登場します。
 能のようににじり歩きを始めると、ステージは芝居小屋に一変します。
 太い綱で互いの胴を縛って繋いて、よろめく儚い道中。
 ヤァヤァ、休もうかのぅ…おまえや……ぁ…… ……

 ふたりの目の前を、枯葉がはらり…… 舞い降ります。
 紅に、やまぶき色に、ぁあぁ、きれいだねぇ……
 人生の秋は深まるも、よもや冬ではあるまいにぃ……

 とうとうと語るは、シャンソンの歌の声、感傷にとっぷりくれて詠嘆調に。
 その声に、リズムボックスが無慈悲にもかぶさると、
 夫婦はそろりそろり、単調なリズムに引きずられ躍りだします。

 ぎっこんばったん、夫婦はぎこちなく人形振り。
 流麗なシャンソンの旋律は木枯らしのように、
枯葉(4人のバックダンサー)を吹き散らし、夫婦を包囲します。

 因果なく人生を彷徨する夫婦、意思なく寄っては散る枯葉…
 なんの教訓も垂れないまま、夫がこと切れ、物語は終わってしまいました。
 亡骸を無情に見下ろす枯葉たち(4人)も、興味なさげに立ち去ります。
 無惨、無惨や、ぁあ無惨かな。
 あとには、紅葉色の光の海が広がって、映画のワンシーンを見るようです。

 絆のように固く結ばれた綱を振り捨てて、妻は今、放たれました。
 帯を解き、脱げば白襦袢、いやさ冥途への旅衣装。
 冷え切った床を踏みしめて、花道越して、彼岸まで。
 未練があるのか、あの綱を引きずり引きずり、くちなわのように身体に這わせます。
 膝立ち、足上げのポーズを2度、3度…
 脚にからめた綱を自ら引き上げて、自縛、自吊りのように宙に体を浮かせます。
 予想外な展開、見慣れぬ景色につい引き込まれます。



5.美咲遥

 先生はボクのものだよね、ねつ、せんせい!

 アダルトビデオにいかにもありそうな、主観映像の設定です。
 自由気ままな女生徒と、ちょっぴりHそうな(気もする)グラマーな先生と。
 学園もの、コスプレ、フェテシズム…
 生徒はタータンチェックの赤いスカートで、先生はぴっちりキメたタイトスカートで。
 紋切型の設定、シチュエーション……物語のなかで記号化された女教師像。

 廊下で腰を振って、先生がこちらに歩いていらっしゃいます。
 冷ややかな目が、めがねの下で光ります。
 自由奔放で、ちょっと下品な(気もする)ハードロックをがんがん鳴らすなか、
 ボクの欲望のターゲットが、こちらへ歩いていらっしゃいます。

 清楚な白いブラウスの下から、シックな黒いブラジャー。
 スカートから突き出す、すらりとした脚。
 スカートがたくしあげられ、パンティの紐の結び目がほどけ、
 かたわらにめがねを置くと、無表情のまま、ボクに目をやりました。
 ……どうするの、ボク。

  ♪We don’t need no education
We don’t need no thought control…

 あらがうボクの心を、先生が押さえつけ、欲望が暴発するのに手を貸します。

  ♪Hey! Teacher!
  ねぇ、せんせい……



6.真白希実

 ハウスの洗礼。
疾走する音、狂おしいほどのスピード感に圧倒されます。
 ボルテージが上がるイントロを過ぎると、モールス信号のように単調な主題が2小節現われて、
あとはテンポを変えずひたすら主題の変奏を繰り出し、4つ打ちが延々と続きます。

 背景は一面スクリーンにして、白で支配。
 コンピューター・グラフィックのように抽象的な映像を、目まぐるしく動かして、
 観客の視線を釘づけにします。

白いスクリーンから浮かび上がる、黒い制服姿の3人。
 激しい動き〜
    〜ピタッと静止〜
       〜激しい動き〜
          〜ピタッとまた静止して……網膜に残像を残します。

 人目を惹くためでしょうか、ダンス・パートは型に嵌めたようで、いかにも画一的です。
 すると、ヒキツケを起こすようにクイックな動きを挟んで、ブレークします。

 つい立ての前でリアルな3人が、…ひとり、ふたりと入れ替わり、
影(=フェイク)が、ふたり、ひとりと、リアルな本体から遊離して彷徨ったり、
あるいは蜃気楼のように消えたりします。

 サイレーンのような女声がこだまして終わりが近づき、万感胸に迫ります。
 リアルな3人が静止してキメっ!
 影(=フェイク)が砕かれて雲散夢消し、バーチャルな世界から脱出します。

 続く2曲目は、タイトなリズムでタメを効かせ、遊び心豊かに、自由奔放に踊ります。

 ベッドでの3曲目は瞑想的で、癒しの場。
 終曲はダイナミックで扇情的に、立ち上がり後もトランス状態でしなやかに動きます。
 …ムチを振るう効果音がひゅん、ひゅんと唸ると、
腕、肩、腰の動きに遊びを持たせて、肢体をしならせます。



7.白石美咲

 ノリのいいカントリー・ミュージックで陽気に、カウ・ガール。
 木馬のような牛の図体はビア樽ほどもあって、メインがちょこんと跨ると愛らしく。
 カウボーイハット、ベスト、ミニスカートは、ピンク系で揃えてキュート。

 舞台下手にドンと置かれた牛を取り巻くように、隙間を縫って6人が回る〜回る……
 ……浮かれてスキップするように。
 元気よく駆けずり回ったり、肩と肩とが触れ合うくらい密集したり。
 小気味よいリズムに、みんなのステップも自然に揃います。

 2曲目で、ギャロップから並足へ、スローダウン。
 バンジョー、フィドル、ホンキートンクピアノ……
 ソロ楽器のひなびた響きが次々とリレーして、明るい女声ボーカルを盛り上げます。

 ベッドは有名なミュージカル映画から、誰でも口ずさめるあのメロディを、
ゴスペル調で歌い上げます。
 カウボーイハットを脇に置き、熱唱に合わせてダイナミックなポーズを2度、3度。
 すっと背筋を伸ばしてスワン、白いブーツの脚をL字で高く掲げます。

 ハイ・トーンの女声ボーカルは、余韻を残して虹の彼方に消えました。
 再び、カントリー・スタイルで、ハリのある女声ボーカル、歯切れの良いリズム。
 花道戻りで移動台に仁王立ち、カウボーイハットにブーツ姿で、逞しくカッコよく。
 演奏がライブネスを感じさせてヒートアップする中を、
喝采浴びながらミラーボールの輝きに吸い込まれていきました。



8.フィナーレ

 これもオリジナルはミュージカル映画の1シーンで、ドシャブリを浴びてもめげずに
タップダンスを披露していましたっけ。
 編曲はアップテンプで景気よく、ディスコ風の編曲、モータウンサウンド風のリズム進行で、
駆け回る出演者たちの背を押して張り切らせます。
 3色のパラソル、はじける笑顔。
 これなら雨も行き過ぎて、明るい晴れ間が見えることでしょう。



                          以上

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