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[7960]12中・結浅草
=八卦(関東)
=14/01/01(Wed)01:51



敬称略です。



1.鈴木ミント

 劫火を映し出すスクリーン、その前で踊るダンサーひとり。
 踵を覆うスカーレッドのフラメンコ風スカートで、上体をしならせて風に吹き消される寸前の炎のよう。

 幕が開き、光が射しました。
 黒ずくめの男性4体が現れます。
 黒いハットを目深にかぶり、無表情。
 柔らかく膝を送って、宙に浮かんだまま床を蹴るようなステップで。
 メインを両脇から挟み込むように、4人がスーッとメインに寄せたり、引いたり、
 背後に回り込んだかと思うと、護衛するようにメインをステージ前面に運びます。
 一列横隊で進み出て、メインと交錯しながらすれ違うなど、
 あたかも4人がひとつの意志を共有するかのように整然とした動きで、
 名手のチェスの盤面を見るような…

 カスタネットが刻むリズムに、アコースティックギターがぴったり重なって気持ちよく、
 スタッカートで跳ねるようなリズム。
 スパニッシュとアイリッシュの旋律が混然一体となって、スリリングなステージです。

 ケルトの薄明のようなたゆたう音楽から、続いてオペラのアリアへ。
 透明感溢れるオーケストラを背景に、チェンバロが優雅に流れます。
 バレエのコスチュームのようなベッド着を、ふわりとまといます。
 水色と藤色の薄手の生地が重なって、瑞々しく。

 端正な動きで整った型のポーズを、ゆったりと。
 切り返しを意識させないなだらかな動きで、裸体が宙に浮かびます。



2.友坂麗

「しーっ……、しーっ……」
 読書の秋は図書館で、されど恋が花咲くこともある。
 ブロードウェイ風のナンバーで、茶目っ気たっぷりにお芝居を。
 優雅なワルツでお上品にデュエット・ダンス、
そうかと思えば、ビッグバンドを伴奏に、パワフルに踊りまくります。

 髪飾りに、ヒールに、ローズピンクの可愛いドレス、流れるようなステップへ。
 恋のお相手との掛け合いもコンビも楽しげで、
 コミカルでキュートにこの場を締めくくります。

 舞台上で着替えてから花道を登り始めるまで、ジャズ・セッションが流れます。
 さざなみのようにピアノが流れ、ベースが浮かんでは沈うんだところに、シンバルが軽やかに……走る、走る。
 花道では椅子に掛けたまま移動台の上。
 没頭していた本から目を離し、なごんだ風情で口元に笑み…

 露出過剰な下着で挑発して、椅子から立ち上がったとたん、
 遠慮ない視線を浴びました。
 長い黒髪がさらさらと流れて、首筋や頬を伝います。
 乱れた髪の下からゾクッとさせる視線を投げ返します。
 ねじる、反る、のたうつ……なまめかしい肌があらわに、乱れに乱れて。
甘味なデザートに、背徳感さえ…



3.小宮山せりな

 アンパンマンと3人とおさるさん1匹。
 一見すると何の縁もゆかりもなさそうな5人ですが、地球に暮らす多民族を象徴させてあちこちから、
 UFOかなんかが呼び寄せたのかもしれません。
 にこにこして、の〜んびりとスカのリズムでお遊戯風にダンス。
 あぁ、かごめかごめに、とおりゃんせみたいのまで…
 無邪気に、おもちゃ代わりに地球儀をサイドパスにバックパス。
 赤ん坊をあやすしぐさで、地球をもっと癒そうと訴えます。

 アンパンマンは、黄色いゴム長靴を脱いで、赤のヒールへ。
 優しげなワルツを耳にして落ち着いて、自分の足で花道を上ります。

 ベッドでは音に聞き入って、音の揺らぎに体をシンクロさせて、ゆったりと。
 だらけたようにのろのろ進むリズムボックスに、早口言葉で韻を踏むラップがかぶさります。
 勇んで高邁な理想を歌い、舌鋒鋭いシニカルな内容かと思いましたが、
 それとはちょっと違いました。

 アカペラ風の透明なコーラスでハーモニー。
 …Father, Father, Father help us
Where is The love ?……

 ナイーブな歌詞で歌い上げる、優しい世界観。
 ゆりかごに揺られるようにやすらいで、ポーズを2度、3度。

 One world, One world……  世界はひとつ と祈る声



4.平松ケイ

 ピアノの和音にのせて、アイルランド古謡の素朴な旋律が流れます。
 ゆったりと深い息遣い。
 7人の踊り手がステージに散り、足を止め、伸ばした腕を揺らします。
 薄暮に包まれたように、ステージは淡いエメラルド色に染まります。
 衣装は厚手の生地で、ターンのたびにスカートの襞がきれいに脚に巻きつきます。
 青、緑、薄紫の照明を反射して、この生地は鈍く落ち着いた色に輝きます。

 とぎれがちにピアノ、男性ボーカルがしみじみと歌います。
 ボーカルが1オクターブを一気に駆け上がり、高揚したところで7人がユニゾンへ。
 軸足をしっかり踏みしめ、跨ぐように大きく踏み込んでと、
 のびのびしたバレエのような身振りで優雅に。
 7人をギューっと中央に寄せて、縦一列に並べてから、
 左右に蛇行させて、2歩3歩進めてピタッと静止。

  ♪……so I can stand on mountains <<< to walk on stormy seas

 メインの背を押すように、残り6人が2列縦隊で肩を並べ一丸に。
 荒波を乗り越える船に見立てます。

 でも、傍らにいつも居てくれる「きみ」こそが、私を励ます源だよ…

  ……to more than I can be >>>♪

       余韻を残して最後のひとことが消えました



 花道上りはつややかなバイオリンに導かれて、華やかなオーケストラの響きに埋もれます。
 着替えた金色に輝くスカートは、膝下まで届きます。
 そのまま、女性ボーカルのしんみりとしたバラードで、抑え気味のポーズを3つ。
 歌のメッセージに心を託したのでしょうか。

 最後は豪快に、メインの独壇場でした。
 長いスカートの裾を翻して、煽り、フラメンコのよう。
 クラブで流すド派手な曲で、
 酒呑もうぜ、やっちまえ……酩酊まで、カクテルの名を連呼!
  テキーラ、ブンブン、テキーラ、ブンブン…

  劇場がパーティー会場に変わります。



5.美緒みくる

 森の奥は、神秘的な闇に包まれています。
 そこには、見たこともないようなコビトさん達がひっそり暮らしているそうな…
 ガムラン風の旋律が出る、低音のドラムが続く…
プロジェクターの投影が木もれ日のように、影を落とす…
電飾をあしらうコスチュームが暗闇で点滅……お待ちかねのメインの顔にピンスポ。

 ストンと流れるワンピース、三角帽子のてっぺんからアドバルーン。
 桃、橙、黄、緑、白と色分けされたユニフォームで、髪や手袋に至るまで同色で揃えます。
 チョコチョコとパントマイム風の振付がかわいらしく、
 幼少期の絵本の記憶、童話の世界を回想してしまいます。

 せっかく順番待ちしてブランコに乗ったと思ったら、
 オルゴールを早回ししたような2曲目に背を押され、慌てふためいて盆へ。
 膝をばねにして跳ね回り、電気回路がショートして制御を失うロボットのよう。
 ユーモラスでコミカルに、はじけて遊んで、やがて盆に突っ伏します。

 ゆるやかに始まった女性ボーカルがリードして、ノリのいい曲でダンサブルに。
 歓びを抑えきれない表情で、曲の合間に割り込むようにポーズへ。
 ホップ、スキップ、花道を駆け巡り、逃げるように去ってゆきました。

 森の奥にはこんなコビトさんがいて、今でも童心を失っていない人と遊びたがっています。
  ……たぶん、ね 



6.かんな

 あれから2年が過ぎました、銀河鉄道の旅は続きます。

 通信鉄塔のような三角のタワーが、舞台に投影されて浮かび上がります。
 牛乳屋に寄った帰り道、ジョバンニはその下に身を投げ出して横たわりました。
 その一瞬、何万光年離れた銀河鉄道の軌道にワープして、北十字から南十字に向かう旅を経験いたします。

 列車には、幼馴染みのカンパネルラが先客でおりました……ぬれたようなまっくろな上着を着て。
 舞台衣装では銀色の細紐のすだれを全身にまとい、金色のジョバンニと仲良く踊ります。

 「ぼくはもうすっかり、天の野原に来た!」

 ジョバンニは感極まった声を発します。
 驚く、心を躍らす、はかなむ…
 テキストを言葉にすれば、揺れる心があらわになって、
その揺らぎを、装着したヘッドセットのマイクが拾います。

 ♪主よみもとに近づかん……

 しめやかなオルガンの響きに、清らなソプラノ。
 ジョバンニとカンパネルラの、金色と銀色が交錯するデュエット。
 終えた後に、車窓(舞台側からみて客席側の窓を想定)をぼんやり眺めるカンパネルラ。

 己の行く先をカンパネラは悟り、
 ジョバンニは気がつかず…、ここで別れます。

 舞台は闇、コバルトブルーに淡いイエローの照明が、星空から降り注ぎます。
 サファイヤブルーに光るラインが花道のエッジを彩り、道しるべに。
 ひとりジョバンニは、星明りを頼りに盆にたどり着きます。
 闇を彩る色彩は澄みきって、はかなげで……
 新世界交響曲の聴き覚えのある旋律が、オルガンに支えられてオーボエで朗々と…

 ベッドでジェスチャーに託す心の声は、遠く天国まで届きます。



7.灘ジュン

 神秘的なシンセサイザーの和音が導入部。
 続いてギターの弦をカッティングするようにつま弾いて、
 やけにかっこいいフレーズが流れます。
 薄明から夜明けへ…… 
 白一色で埋め尽くされたフィールドは綿畑とも、天国のお花畑とも見えて幻想的です。
 編み上げのコルセット、白いタイツとバレエ風の衣装の7人が、
 三々五々に散って蹲っています。

おもむろに顔をもたげました、アイコンタクトを交わします……
 そうかと思うと、持ち場を離れず思い思いにベッドのような動きを見せます。
 アンサンブルを敢えて崩して混沌と見せておいて、
 すーっと舞台中央に7人を寄せると、振りを揃えて求心力を発揮します。

 ノリのいいアップテンポのアレンジにしたことで、
 原曲のサッチモの、スロウでおおらかなテイストが消えて、明晰に。
 つぶやくようなナレーションが自然讃歌を口にします。
 ♪アース、グリーン、フラワー、シャインニグ・スター……
 愛らしい身振りで神を讃えます。

 ベッドでは、純白の天使のようなベッド着で、瞑想的なバラードに沈潜します。
慈愛に満ちた視線を送り、目を伏せて翳りを感じさせます。
 癒しのベッドから、釣鐘をゆっくりと引き上げるようにポーズを収め、立ち上がりへ。

 白銀に輝くミラーボールを背にして花道を戻り、
 背景の光の世界に渾然一体となりながら、幕間に消えていきました。



8.フィナーレ

 10人のメーテルは真っ白なコスチューム。車掌はひとり、紺の制服。
 フォーメーションをめまぐるしく変えるマスゲーム風の振付です。
 縦にも、左右にも廻るミラーボールの光に抱かれて、
 白銀の世界では紺の車掌が いいアクセントを作ります。
 スリリングで息の抜けないフィナーレですが、笑顔で癒しを与えます。

 白銀の世界がいよいよ天に近づくと、花道までせり出していた11人が、
 後ずさり2、3歩、
 1歩戻りかけて、
 後退4、5歩。
 高揚を鎮め、名残惜しいですが、この1年を締めくくりました。

                          以上




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