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[7989]5頭・中 浅草 EARTH BEAT 2019 RISING
=八卦(関東)
=19/05/14(Tue)19:54

敬称略です。



1景 岩の洞窟より 橋下まこ

ほの暗いステージから闇が溶け出すように明るくなり、舞台中央にメインが現れます。
ステージ四隅に和太鼓を据え、導入部の曲に合わせて渾身の限り、バチで叩きます。
奏者4人とは別に、狭い間を縫うようにして踊子4人が舞い踊ります。

『岩の洞窟』の主を動かすくらい熱く激しく、憑かれたように狂おしく。
重い扉が開くのに、ものの2分もかかりません。

照明が創り上げた荘重なシーン。
古代鏡にLEDが何度もよぎって、薄紫や萌黄の光の矢を反射させます。
メインの見つめる瞳が鏡に映り、その鏡像を私の眼が追い、遠ざかる姿を私が見つめます。

いっときの眼福にあずかります。



2景 道化師 武藤つぐみ

幕間を沸かせるいぶし銀の芸、道化師。
まだら模様のタイツに、角をはやしたかぶりもの、肩から腰にかけて薄布がふわふわと覆うコスチューム。

『どうもぉ〜』と幕開けで登場して、出トチって、はい、出直して。
愛想振りまき気を引いたところで、絶妙なタイミングでくすぐってきます。

景気よい曲が、感傷的な曲に変わりました。
タイツもかぶりものも脱ぎ去って、唐突にバレリーナの真似事を始めます。
腕を浮かせて掌をひらひら振って、白鳥の湖のパロディでしょうか。
技巧的なテクの合間にも、あらマァ照れ笑い。
真剣モードにぴしり、亀裂が入ります。

ベッドは自由奔放に。曲は刻々と変わります。
シャンソン風から、キャバレー風に、はたまたバレエ風に。
ポーズを連ねて、片足上げのブリッジは柔軟な体で反り返った背のラインが美しく。
立ち上がりで一例。目の下にストーンで描いた、ティアドロップがきらり、光ります。



3景 ベトナムのランタン祭 雪芽さゆり

ステージ奥に紗を吊るしてスクリーン代わりにし、裏側から静止したミラーボールで散らした光の粒が、繭玉のよう。
宵に浮かび上がるランタン(提灯)の灯に包まれて、異国情緒に浸ります。

竹編みの笠を手に3人はアオザイで、メインは淡い桜色をまといます。
一歩踏み出しては戻し、大事そうに両手で持った笠を胸の前に差し出したり、頭上を大回りしてまた胸の前に収めたり。
ゆったりと流れるような民族舞踊です。

じきにふたりはランタンで足元を照らしながら、メインを花道へと導きます。
音楽も相まって幻想的な情景の中で、恥らうようにはらりと脱いでみせました。
口元に柔らかな笑み、涼しげな目元でちょいと見回します。

澄んだ女声ボーカルがさえずります。
スワンで差し上げた手の先は伸びやかに。
V字は背筋をピンと伸ばして静止します。



4景 フラメンコ 清本玲奈

ブレリア、ブレリアッ!
ジプシーに由来するアンダルシア地方のフラメンコ。
切れ味鋭いメインを華に、バックダンサー4人がジプシーのように寄り添って盛り立てます。

真紅のフラメンンコ衣装は、袖とスカートをフリルでボリュームを持たせます。
フリルの縁には黒い縁取りで、コントラストを与えて、可憐。
軽快なリズムにのって、しなやかに、しかもシャープに動きます。
5人が密集したり、散開して豪放に舞ったり、メインを4人から引き離して目立たせたり。
ステージを広く使ってエネルギッシュに踊りながらも、4人がぴったり振りを揃えることで、統一感を感じます。

花道のぼりをボサノバで、蛇行しながら駆け上がります。
サンバに似た3曲目で落ち着いた動きのなかにポーズをちりばめると、終曲は男女デュオのスペイン歌謡でロマンチックに。
力強くのびやかな歌声、熱唱のピークで立ち上がりへ。
腰を引いて立ち、上体を泳がせながらゆったりと動かし、一礼を。
満面の笑みもいとおしく。



5景 顔見世 君島みお

背もたれが大きく広がる籐椅子に、8景に先駆けてトリが姿を現します。
ゆったりと腰掛け、脚を組みかえる、体を右によせる、今度は左に体を深く折る。
スリットから覗くおみあしはすらり、黒い網タイツ越しに目を奪われます。



6景 カリンカ 海空花

踊子5人景、赤、青、黄、緑、紫と戦隊ものよろしくカラフルな民族衣装をひらめかせ、楽しげに民族舞踊。
頭の飾りはお花畑、そこから垂らしたリボンが揺れています。
聞きなれた歌詞に合わせて1、2、3、4・・・8拍でひと区切りかな?
アップテンポで喜悦に満ちて、娘さん方は高く跳ねてトゥで宙を蹴り、踵を打ち合わせます。

遊び疲れたかのように4人は座り、メインをあたたかく花道へと送り出します。
人なつっこい笑顔をロシア語の3曲目で見せた後、英語の4曲目では烈しく活気溢れて動き回ります。
オーバージェスチャーで手振り、表情づけ。
花道から本舞台まで駆け巡り、側転を3度、着地なだらかにハンドスプリング。
場内を沸かせます。
得意げに微笑み、明るく客席に手を振って去りました。



7景 ジャングル 倖田李梨

虎柄、豹柄の腰巻でジャングルを闊歩。
大地の鼓動を伝えるビートにのせて、シンプルな振りはエクソサイズにも似ています。
密林に下がるツルに、手を添えたり引っ張ったり。
2人景でシンメも、掛け合いも。
アイコンタクトで気を合わせます。

トップレスになって虎の化身に。
花道を這うように四足歩行、転がりながら盆に体をすり付けます。
野獣のようにしなやかに体を捌き、浮遊感を感じさせるベッド。

立ち上がりからはフリースタイル、本能を覚醒させてダンスベッドの極みへ。
しっかりした足元の動きに、上体、肩、腕の動きが引きずられないで、自由自在。
アップテンポの曲に、動きを加速させて客席を興奮の渦に引き込みます。
客席で仕草手振りを真似る方も。
祭りの余韻を残して、いよいよトリ景へとなだれ込みます。



8景 ヴェネチア・カーニバル 君島みお

広場は野外劇場に様変わり。
身分を隠し、グロテスクな仮面をかぶりで、いっときハレの場を味わいます。

王侯貴族に扮した仮面の6人は、交錯しながら包み込むようにして、踊りの輪の中に、後から登場するメインを呼び入れます。
豪華絢爛、光沢をたたえた派手な生地を軽々と翻し、メインを囲んで渦まくように急旋回。緊迫感に満ちたシーンが続きます。

早着替えで黒い御腰の上から、光沢ある銀色の襦袢を羽織ります。
花道を上り終えると、ベッド1曲目は教会オルガンの響きに包まれて、のびやかな女声ボーカルが流れます。
動きを抑え、客席を一瞥し、その目力にものを言わせます。

続いて2曲目でシンセサイザーが華やかな音の世界を紡ぎ、襦袢に袖を通したまま、浮き上がるようなポーズを2度、3度。
裸身を乗せたまま盆までせりあがり、目の前にそびえます。

そのまま花道を戻ります。
せり上がった盆から移動台に移って佇みます。
壮麗な音楽が鳴り、劫火のような照明が逆光でカッと照らすなか、立姿のまま移動台ごと花道をゆっくりと引いていきます。

腰の高さで軽く腕を広げ、目線は遠くまで届けます。
メインがふと振り返れば、本舞台に踊り子6人が、既にフィナーレの衣装をまとい、メインを恭しく待ち構えるのが見えてきます。

まばゆい光の洪水のなか、踊り子群像が作る安定した構図は来迎図にも似ています。
はらりベッド着を落とすまで、満場の視線を一身に引き寄せます。



フィナーレ

8景終わりになだれ込むよう、息をつかせずソレ、ソレ、ソレッと。
半被姿もイキなこと、若い衆が総出で踊りまくります。
大漁旗振って、手ぬぐい振り回して。
ステージの余韻を客席までなだれ込ませて、あいやァ、これで仕舞いとなりました。




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